27.古風なお茶会
 2人に案内されたのは看板に"歌舞練場"と書かれた建物だった。

「えっと、ここは…。」

どういう場所か聞こうとしたら中から綺麗な着物を着た女性が出てきた。

「あら、マツバはんにハヤトはんやないの。それに可愛らしい子連れてどないするんどす?」

「今から皆でお茶を飲みに行くんだ。それでこの子はジルチちゃん。初めてエンジュに来たから着付けを体験して楽しんでもらおうと思ってね。」

「そういう事どすかー。うちらに任せてくださいな。ささ、中へどうぞ。」

「僕らはここで待ってるから。あと荷物は舞妓さん達に預けていいからね。」

「わ、わかりました!」

話の流れがいまいち掴めないまま私は中へ招かれ、マサキさんが言ってた舞妓さんはこの女性の事だったんだと思った。

「空のような綺麗な青色の髪どすなぁ。さぁて、どの色がえぇやろかー。」

「綺麗な髪飾りやね。髪型も少し変えてみましょ。」

「さぁさぁ、荷物はここに置いてはよブラウスを脱いでくださいな。」

「え、ちょ、待っ……。」

気づいたら舞妓さん達に囲まれて、あれやこれやと言われながら髪は下ろされ、身ぐるみを剥がされていった。

「長襦袢を持って…って、あんさんえらい細いどすなー!ちゃんと食べてはるん?女の子はちょっと肉がついてる方がええんよ?その方が魅力的どす!」

「…結構食べてますよ?」

「もっと食べ!」

「うぐっ」

長襦袢を着せられて紐を縛った後、背中を叩かれた。

「あんさんはこの色がえぇなぁ。」

「いやー綺麗どすなぁ!」

舞妓さんが持ってきた着物は肩辺りの紺色がだんだん青色になって袖辺りは紫色で綺麗だった。

「帯は山吹色どすな。」

「髪型はどないしましょ。盛って派手にしたらあかんなぁ。」

「髪色に合わせて流れる感じにしましょ。」

私は舞妓さん達にされるがままにしていた。


 ―歌舞練場・外

「ジルチちゃんの着物姿楽しみだね。」

「そうだな。」

「僕は修行に行くと言って明後日までジム閉めるけどハヤトは明日、明後日のジムはどうするの?」

「あ、忘れてた。ジムトレーナーの子達にエンジュにいる事を伝えておこう。」

「……。(ハヤトが堂々とサボった…)」

ハヤトはポケギアでジムトレーナー達に明後日まで休みだと連絡をいれた。

 ー歌舞練場・内
着付けが終わり、舞妓さん達にお礼を言って外へ出た。下駄は初めて履いたので1歩進むのに苦労した。

「お、お待たせしました!」

「「おぉ…。」」

「実は着物着るの初めてなんですが…どうですか?」

外で待ってくれた2人に声をかけたら意外そうな顔をしてたけど、とりあえずその場でクルッと回って見せてみた。

「ジルチちゃん似合ってるね。ハヤトが見惚れているよ。」

「ありがとうございます。…え?」

ハヤトさんが?と思って彼を見ると頬を少し赤くなっていた。

「ジルチ、凄く綺麗だ…!!」

「ハヤトさん、ありがとうございます!」

「…あぁ。」

まじまじと見るとハヤトさんにそっぽ向かれてしまった。

「じゃあ行こうか。あそこなら歌舞練場から遠くないし、いつものお茶缶あるからハヤトもそこでいいだろ?」

「もちろん。」

「もしかして、あの時のお茶と羊羮はそこのお店のですか?」

「そうだ。前の日にエンジュへ遊びに行った帰りに買った物だ。」

またあの美味しいお茶と羊羮が食べれるのかと思うと嬉しくなった。マツバさんの案内でお店に着いて、当店オススメお茶セットを注文した。

「お茶セットでございます。」

「おぉ…!」

羊羮と抹茶あんみつがセットになっていてとても美味しそう。

「いただきます!!」

あんみつの白玉がもっちりしててほんのり苦味のある抹茶の風味が口の中に広がった。

「んーっ美味しい!」

「それはよかった。」

「あの時と同じで美味しそうに食べているな。見ているこっちも嬉しくなる。」

私達は楽しくて美味しいお茶会をして1日を過ごした。
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