ロケット団襲撃から月日が流れ、ジムの修理はようやく終わって左腕の怪我もすっかり治った。私は旅の続きをしようと思い、その事をハヤトさんに伝えた。
「ジムの修理を手伝ってくれて助かったよ。」
「いえいえ!元はと言えば私が厄介事に巻き込んでしまったせいですし手伝うのは当然ですよ。こちらこそ長い間お世話になりました!」
「あの時にも言ったが、君を狙うロケット団が悪いのだから気にしないでくれ。2度も俺を助けてくれた命の恩人なのだから君は君らしく胸を張るんだ。」
「…!」
そう言うとハヤトさんは私の頭を撫でて微笑んだ。久しぶりに誰かに頭を撫でられたから驚きつつも少し嬉しかった。
「それと奴らはキキョウシティ周辺にいないのがわかったから安心してくれ。」
「ありがとうございます!」
「また家に来てくれても構わない。君なら歓迎しよう!それと…これはお礼だ。」
「えっ!?」
「遠慮せずに受け取ってほしい。」
ハヤトさんはちゃぶ台の横に置いてたコガネ百貨店と書かれた紙袋を私に渡した。中を見ると修行後によく食べてたお菓子と小さな箱があった。
「これ、開けても…?」
私は小さな箱の中身が気になってハヤトさんに聞くと静かに頷いた。紙袋から取り出して箱を開けると翼の形をした綺麗な髪飾りがあった。
「わぁ…!ウイングバッチに似て綺麗な翼の髪飾りですね!ありがとうございます!!」
私は早速、翼の髪飾りをつけてると首回りがスッキリした。ハヤトさんはその様子を満足げに見ていた。
「よく似合ってる。さて、玄関まで見送るよ。」
玄関を出るといつも通り晴天でいい旅日和になりそうだと思った。
「すぐにヒワダタウンへ向かうのか?」
「いえ、ヒワダタウンに向かう前にアルフの遺跡へ寄り道します。アンノーンと遺跡にある石版が気になるので!」
「そうか。君の旅の健闘を祈るよ。」
「ありがとうございます。それではいってきます!」
私はハヤトさんと別れ、キキョウシティから32番道路のゲートを通ってアルフの遺跡へ向かおうとしたらポケットに入れてるポケギアが鳴った。
「誰からだろ…?」
ポケギアを見るとウツギ博士からだった。何かあったのかと思い、電話に出るとウツギ博士が慌ただしい声が聞こえた。
[ジルチちゃんかい!?た、大変なんだ!!えー、えーと何がなんだか……。どうしよう……。]
「ちょ、ウツギ博士っ落ち着いてください!」
[とにかく大変なんだよ!すぐ戻ってきてよ!!]
「すぐにワカバタウンに帰らなきゃ!!」
ガチャッと派手な音がして電話が切れたから研究所で何かがあったんだと思い、私は急いでワカバタウンへ向かった。
32番道路から走ってやっとヨシノシティに着いた。息切れしながら29番道路へ行こうとしたら赤髪の少年が道の真ん中で立っていたけど無視して通りすぎようとした時、少年が喋りだした。
「お前…昔、ワカバタウンの研究所に住んでいた奴だな?それに研究所のポケモン貰っているだろ?」
「…だから、何?急いでるから用があるなら後にしてくれる?」
私はこの少年が何が言いたいか興味がなかったので再び歩き始めた。
「お前みたいな弱い奴には勿体ないポケモンだぜ。」
「何…?」
バトルをしてもいないのに弱いと決めつけられて私はカチンときた。
「…何だよ。何言われてるのかわからないのか?……だったら仕方ない。オレもいいポケモン持ってるんだ。どういう事か教えてやるよ。」
生意気な少年はボールを取り出して私にバトルをしかけてきた。初対面だというのにいきなり喧嘩を売られた事に腹が立った。
「……。」
私がライボルトを出したにも関わらず、彼が出したのは水タイプのワニノコだった。トレーナーがあんな態度なら手持ちのポケモンも変な自信を持って生意気だろうと思っていたけど、そのワニノコはそうじゃなかった。妙に主人である少年に怯えている様子だった。
「何だ。研究所でもらったポケモンを出さないのかよ。」
「やたらと煽るね…。売られた喧嘩は10倍返しにするのが私!ワニノコには悪いけど恨まないでね。恨むのは相手の実力がわからないそこの少年だから。…ライボルト、かみなり。」
私はそんなワニノコに気にしつつもライボルトにかみなりを命じた。かみなりは容赦なくワニノコに襲い、1撃で戦闘不能にしたら少年は無言でワニノコを戻して舌打ちをした。
「……フン!勝てて嬉しいか?」
「全く。こんな不愉快なバトル久しぶりだよ…。初対面の私に喧嘩を売る君は何者?まさかロケット団の仲間?」
「誰があんな弱い連中の仲間だ…。オレが誰だか知りたいか?」
「半分興味はない。」
ロケット団の事を弱い連中と言った事が気になったから半分興味があった。
「それは…世界で1番強いポケモントレーナーになる男さ!」
結局名前を名乗らず目標だけ堂々と言って、私の横を通りすぎる時にポケットからトレーナーカードが落ちた。
「落し物をするなんて世界一はほど遠いよ。…え?」
拾ったトレーナーカードに書かれた情報を見て私は顔をしかめてるとさっきの少年が走って戻ってきた。
「返せ!それはオレが落としたトレーナーカード!ふん……。オレの名前を見たのか…。」
「あ、落としたのを認めるんだ。一応"半分"興味ないから見たよ。」
彼は舌打ちをして私からトレーナーカードを奪ってその場を立ち去った。
「カントー地方出身のソウル、ね。世界で1番強いトレーナーになるなら、わざわざジョウトへ来なくてもカントーでなろうと思えばなれるのに。っていけない!早く研究所へ行かなきゃ!」
私はソウルのワニノコの事でもやもやしながらワカバタウンへ再び走り始めた。
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