13.鳥使いの観察
 救急箱を取りに行って自室にある俺のポケモン達のボールを懐に入れた。
あの時、ジルチを周辺が安全の確認取れるまでの間、出来る限りキキョウシティに留まらせて彼女を守ってほしいと言われた。ワタルさんの口ぶりからしてジルチの事を少なからず何かを知っているようだった。リーグまで彼女の事を知っているとなれば相当重要人物なのかもしれないと俺は考えて3日後の会議で何か聞き出そうと思った。

「晩御飯前だが茶菓子でも用意しておこう。」

救急箱を片手に台所で茶菓子の用意をした。丁度昨日エンジュへ遊びに行った時に買った羊羮があってよかった。
ジルチがいる部屋へ向かうと中から誰かと会話をしている声が聞こえた。

「そうですね!やっぱり2人は強いから私も負けてられないです。キキョウジムの修理が終わったらヒワダタウンで2つ目のバッチ目指します。」

通話中に入るのは気まずいと思い、扉の近くの壁にもたれて待つ事にした。会話の内容といい口調からして身内か誰かだと思った。

「はい、頑張ります。それでは…。」

会話が終わったらしく、少し間を開けてから部屋の襖を開けた。

「待たせたな。茶菓子を持ってきたから治療が終わったら食べてくれ。」

「ありがとうございます!」

茶菓子と聞いてジルチは目を輝かせていた。甘い物が好きなのかと思い、お盆をちゃぶ台の上に置いて救急箱を開けた。

「左腕を出して。」

ジルチは素直に袖口のボタンを外して腕を捲った。ブラウスに血が滲むくらい出血していたから重傷だろうと思っていたが案の定、白くて細い腕をかなりずり剥いてて痛そうだった。

「うわ、これは痛い…。」

自分の傷口を見てそんな事を言うから見てる俺も痛くなってきた。

「消毒液をかけるけど…かなり滲みると思うよ。」

消毒液をかけると傷口が滲みた痛みに堪えてジルチは悶えていた。手早く傷薬を塗ったガーゼをつけて包帯を巻いてあげた。

「これでしばらく大丈夫だろう。あとは定期的にガーゼを変えないとな。」

「ありがとうございます。今になって傷の痛みを感じましたよ…。怪我はあまりしないでおこう。」

ジルチは渋い顔をしながら袖を直すのを道具を救急箱にしまいながら見ていた。
彼女をよく見ると表情が豊かで空に近い青色の長い髪を1つに束ねている事に気づいた。帽子を深く被っていてバトルの時やロケット団奇襲時は真剣な表情と無表情だったからこれが素の彼女なんだとわかった。
そういえば爆発のせいでジルチに聞き逃した質問を思い出した。

「爆発があって聞けなかったが君のバトルはどこで学んだんだ?」

「ほとんど独学です。昔、住んでた町で友達とバトルをしてて、その子達に勝つ為の戦術をずっと考えていました。…いただきます!」

ジルチは笑顔で言うと羊羮を一口サイズに切って食べた。頬を緩ませて美味しそうに食べているから気に入ってもらえたようだ。

「独学であの戦術を…なかなか見事だったよ。」

「ジムリーダーに褒めていただけるとは…嬉しいです!でもピジョットの特性を見抜けなかったのは計算ミスでした。」

ピジョットの特性の鋭い目…確かに特性を活かしてえんまくを簡単に突破できた。えんまくからのコンボを考えていた彼女からしたら計算違いな結果だっただろう。逆に鋭い目がなかったらえんまくの中で何されるかわかったもんじゃない。

「ピジョットの鋭い目がなかったらもっと早く決着をつけられていたな…。」

「私達が地上で戦う以上、空中戦が得意な鳥ポケモンをどうやったら地に降りるかを考えていましたが、はねやすめで降りてくれたので決めるのは今しかない!ってなりました。」

「それで周りの逃げ場をなくす為にひのこで囲ったわけか…。」

周りを囲まれたら逃げ場は真上しかなく、攻撃する場所を1ヵ所に絞れば狙いやすい。それが彼女の狙いだった。悔しい事に俺はまんまと彼女の策に嵌められたというわけだ。
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