11.ロケット団襲撃
 天井の爆発音で上を見上げると大きく穴が開いていて天井の瓦礫や破片が落ちてきた。

「っ!?」

「ハヤトさんっ危ない!」

私は落ちてきた瓦礫からハヤトさんを助けるべく飛び込んだ。

「すまない、助かった。一体何が!?」

「天井が…破壊された?」

私達が天井を見上げると黒いヘリコプターが飛んでいて、2本のロープから黒服の男2人が降りてきた。男達が着ている服の胸元に赤いRの文字が書かれていた。

「ロケット団…!!」

私は険しい顔をしながらロケット団を睨んで、マグマラシとシャワーズもロケット団に威嚇していた。

「ロケット団だと!?リーグから最近ロケット団がジョウトで見かけるから要注意とは聞いていたが…まさかジムを襲ってくるだなんて!」

「おっと勘違いしないでくれよジムリーダーさん。俺達はジムを乗っ取ろうとか考えちゃいねぇよ。用があるのはそこにいる小娘だ。」

「この子だと?」

ハヤトさんは何故?という顔をして私を見たけど、私はロケット団を睨んだまま答えなかった。すると1人の団員がゴルバットを出した。

「とりあえずジムリーダーに邪魔されたら困るので退場してもらう。ゴルバット、ジムリーダーをここから吹き飛ばしてしまえ!」

「きゃ…!」「うわっ!」

ゴルバットは翼を大きく羽ばたかせ、ハヤトさんをジムの外へ吹き飛ばした。

「しまった…!」

「ハヤトさんっ!!」

外へ飛ばされたハヤトさんを助ける為に私は走って大きな窓から飛び出した。この高さから落ちたらひとたまりもないと思い、必死に手を伸ばした。

「ハヤトさん!!私の手に、掴まってくださいっ!」

「っ!!」

空気抵抗に遭いながら必死に掴んだ手を離さないよう両手で持ち、力を解放させれば翼が生えて落下が止まった。

「え…っ!?」

「ジム内に戻るのでジッとしてくださいね。」

ハヤトさんが突然の出来事で驚いているうちにジムの中へ運んでフィールドに降り立った。

「ふぅ…。大丈夫ですか?」

目を閉じて金色から緑色の瞳に戻して背中の翼を消した。飛び出した際に取れた帽子を拾い上げて深く被り直した。

「あぁ、大丈夫だ…ありがとう。2度も助けられたな。」

「気にしないでください。で、ロケット団…私に何の用?」

マグマラシ達は私達が無事に戻ってきたのを見て安心し、いつでも戦闘可能な状態で構えた。そんな私達を見てロケット団の2人は笑った。

「そんなの決まってるじゃねぇか!前回失敗した連中の代わりにリベンジしに来たんだよぉ。今度こそ連れていかせてもらうぜ!!」

そのロケット団員はベトベトンを出した。

「そんなのお断るに決まってる!!マグマラシ、シャワーズ!返り討ちにするよ!」

合図と共に2匹はゴルバットとベトベトンに攻撃をし始めたけど、ジム戦後もあってマグマラシがやや遅れを取っていた。

「マグマラシ、えんまくで距離を置いて戻ってきて!ライボルト、2匹まとめてかみなり!!」

マグマラシはえんまくを放った後、私の元に戻ってくる時にライボルトを出して、えんまくの中にいる2匹をまとめてかみなりを落として気絶させた。

「つ、強い!」「ひぃっ撤退だ!!」

2匹が戦闘不能になって打つ手がなくなったかヘリコプターと繋がっているロープに掴まり、ロケット団は早々に逃げ去っていった。

「今回はあっさりと逃げた…。」

ロケット団がヘリコプターで去っていったのを見て、どうして居場所がわかったのか疑問を抱いていた。

「君は一体、何者なんだ?空を飛べる人なんて聞いた事も見た事がないし、ロケット団に狙われているようだが…。」

ハヤトさんは私の正体が気になって聞いてきた。最近になって自分の素性がわかったからどう言っていいか悩んだ。

「私は…半端者、ですね。昨日からロケット団に狙われていて、今日住んでいた町から離れて旅に出たのですが…。どういう訳だかすぐに見つかってしまったようです。困りましたね…。」

私は苦笑いしながらマグマラシとライボルトをボールに戻して爆発で損傷した天井を見上げた。

「困ったと言えば…天井。私も含め、ロケット団のせいで穴空いちゃいましたね。」

「君のせいじゃないし、2度も助けてくれたから気にしなくていいよ。修理している間ジムを休業しないといけないからこの事リーグに報告しないとな。」

ハヤトさんは懐に入れていたポケギアを取り出した。

「もしもし?キキョウジムのハヤトです。実はー」

ハヤトさんがリーグに連絡を取っている間、フィールドから離れている場所にいたジムトレーナー2人と1階にいた案内人が心配して駆けつけた。

「爆発音が聞こえたけどチャレンジャーのお嬢ちゃん大丈夫かい?」

「ハヤトさんとチャレンジャーの子も無事でよかった!」

ジムトレーナー達と案内人にはハヤトさんが吹き飛ばされて助けに行った私が飛んだのを見てなかったから少し安心した。

「私は大丈夫です。でも、ジムの天井とフィールドが大丈夫じゃないですね…。」

天井は爆発によって空が充分見えるくらい大きく穴が開いて、その瓦礫や破片がバトルフィールドに散らばっていた。

「こりゃ掃除と修理が大変だな…。」

「あ、掃除と修理手伝いますよ?」

理由はどうであれジムに迷惑をかけた事に代わりないから掃除と修理を手伝うつもりだった。

「それは助かるよチャレンジャー!そう言えば名前、何て言うの?」

「ジルチです。今朝、ジム巡りとポケモンの事など研究をする旅に出ました。」

「ジルチちゃん今朝旅に出たばかりなのにもう1つ目のバッチ手に入れるなんてすげぇな!それに研究もしてるなんてほんとすげぇな!!」

ジムトレーナーの人と話している間にリーグとのやり取りが終わったハヤトさんがこっちにやって来た。その表情は少し険しかったから罪悪感が募った。

「…リーグから修理が終わるまで休業で3日後、各地のジムリーダーを招集してロケット団に関する会議をするそうだ。今日はジムを閉めて解散だ。明日から修理と掃除をしよう。」

「了解、お疲れ様でした!!」「お疲れ様です!!」

ジムトレーナー達は挨拶をしてその場で解散した。私もポケセンでしばらく部屋を借りて明日またジムを訪れて手伝おうと思い、下へ降りる足場へ戻ろうとした。

「ジルチ…だっけ?君は俺の家に来てもらう。」

「へ?」

そのままポケセンへ帰るつもりが、ハヤトさんの家に来るよう言われるとは思いもしなかったから変な返事をしてしまった。どういう意味かわからず焦っているとハヤトさんに左手首を掴まれた。

「左腕怪我をしている。ジムの休憩室にはポケモン用の傷薬しかないから俺の家で治療するよ。」

「ん?あれ、いつの間に…。」

私の左腕は何かで擦ってブラウスが血で滲んでいた。ずっとバトルやロケット団の事に集中していて全く気づかなかった。

「電話している時に、シャワーズが君の左腕をずっと見ていたから気になったんだ。俺も後ろから見て怪我している事に気づいた。」

後ろにいるシャワーズに目を向けると心配そうな表情をしていた。

「そうでしたか…ありがとうございます。シャワーズ、心配してくれてありがとう。このくらい平気だよ?」

右手でシャワーズの頭を撫でてあげたら少し安心したようで喉を鳴らした。

「さてと、日が暮れてきたから帰ろう。俺の自慢の鳥ポケモンを見せてやるよ。」

「それは楽しみです。」

私達はキキョウジムを出てハヤトさんの家へ向かった。
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