08.家族の真相
 すぐ警察が来て男達は連れていかれた。あの2人はロケット団というカントー地方拠点に置いていた悪党集団の団員だった。3年前に解散したロケット団がジョウトで密かに活動しているかもしれないと警察に言われて近所の人達は不安そうな雰囲気を出した。
それからお母さんの葬儀をして、研究所の横にお墓を作ってもらっているうちに夜になっていた。

「……。」

私はお母さんを助けれなかった事が悔しくてどんだけ後悔してもお母さんは帰ってこない。

”前を向いてどんなことがあっても立ち向かって”

お母さんが最期に言った言葉ですぐ立ち直れるわけじゃないけど、前を向いて立ち上がらなきゃ。ここで立ち止まっても何も始まらない…。

「お母さん、助けてくれてありがとう。お母さんの事、助けれなくてごめん、なさい…。私は前、向くよ。ジム巡りしながらポケモンやいろんな研究をする旅に出るよ。」

お墓の前でこれからの事を話してたら後ろからウツギ博士に声をかけられた。

「ジルチちゃん…家の中へ戻ろう。夜風は身体に障るよ。部屋に軽く食べれるもの置いてあるから食べてね。それから…話は落ち着いてからで大丈夫だから…。」

「ありがとうございます…ウツギ博士。私は大丈夫と言い切れませんが大丈夫です。」

「それ大丈夫と言わないよね?」

「ふふ、そうですね。明日、お話しします。」

「…わかった。さ、戻ろう?」

「はい。」

私とウツギ博士は研究所へ入って2階の部屋へ戻ると、机の上にパンとジャムがあった。

「あとでホットミルク届けるね。」

「ありがとうございます。部屋で待ってます。」

ウツギ博士が下の階に行ったのを見届けてそのままベッドに倒れ込んだ。

「はぁ…人前で久しぶりに能力を使っちゃったなぁ……。」

近所の人が来る前に解除したから能力を見たのはウツギ博士とヒビキ君、コトネちゃんだけだと思う。どう事情を話そうかなと思った時、お父さんからの手紙の事を思い出した。

「そういえばお父さんの手紙を読んでって言ってたっけ…。」

ちょうど起き上がろうとしたらノックの音が聞こえて、ウツギ博士がホットミルクを届けに来た。

「電気、つけるよ?」

「あ、すみません…。」

部屋に入ってから電気をつけずにベッドへ倒れ込んでしまったから部屋が薄暗かった。ウツギ博士はドアの近くにあるスイッチを押して机へ向かった。

「机に置いておくね。…じゃあおやすみ。」

「ありがとうございます。おやすみなさい。」

控えめにドアを閉めてウツギ博士は再び下へ降りていった。ウツギ博士も相当落ち込んでいるのがわかるくらい足取りが重たそうだった。
私はホットミルクを一口飲んで部屋のドアを見つめた。

「…お母さんの部屋に入ってお父さんの手紙読んでみよう。」

私はパンとジャムがのったおぼんにマグカップものせて隣のお母さんの部屋へ向かった。
いつもなら居るはずのお母さんがいないからドアを開けると薄暗くて寂しさが増した。部屋に入ると中は紙と本で散らかっていて、壁に大きな紙を貼って付箋やメモ書きがたくさんあった。

「お母さん…また片づけないで散らかしっぱなしじゃん。」

マサラタウンに住んでいた時は足の踏み場がないくらい散らかっていたからこの状態はまだマシかもしれない。山積みの本を崩さないように机の下の引き出しを開けると中に長方形や正方形の箱が何個か入っていた。

「ん?私宛の手紙…?」

1番上にあった箱を取り出すとその下に私宛の手紙が出てきた。

[ジルチへ
この手紙を読む頃は私はジルチの側にいないでしょう。
なので、ここにある手紙で私達家族の真相を知る事になります。ジルチが大人になった頃に話すつもりでしたが叶わなくなった今、文章で伝える事しか出来ません。
箱に入ってる技マシンや道具はお父さんからの餞別です。いつか旅に出るジルチの為に用意した物だそうです。 お母さんより]

「お母さん…まさかこうなる事が…?この箱2つは技マシンと道具が入ってる…。うわ、お父さんが好きそうな技ばっか。」

技マシンは…はかいこうせん、かみなり、だいもんじ、かえんほうしゃ等々と大技が多かった。私自身、大技嫌いじゃないけどもうちょっと違う物があってもよかったんじゃないかと思った。
道具は磁石、奇跡のタネ、木炭、あとはプレートが何枚か入ってた。こっちは攻撃力を上げる効果のある物ばかりだった。
ジャムパンを食べてホットミルクを飲みながら手持ちに持たせようと思った物を分けて残りは箱に直した。
別の長方形の箱を開けると中には日付だけ書かれた送り主の名前がない封筒が数通と、送り主にワタルと書かれた渋い封筒と私宛の水色の封筒があった。

「これがお父さんの手紙…?そういえば家族の真相ってなんだろう?」

先に私宛の手紙を開けた。

[ジルチへ
小さい頃にホウエンで別れたままで顔を忘れてるじゃないかと思っているお父さんです。
最初のお母さんの手紙の通り、家族について知ってほしい事がいくつかある。覚悟して読んでほしい。

お父さんとお母さんはホウエンの遥か南の方にある水の都に住んでいた。
都の20年に1度の儀式の最中にお父さんとお母さんは悪い組織の実験の為に誘拐された。
僕らは決死の覚悟でそこから逃げ出して無事に故郷には帰ってきた。そのあとにジルチが産まれたけど組織はジルチを含め、僕らをずっと探し続けているからお母さんとジルチをホウエンから遠いカントー地方へ逃げてもらった。
その際、カントー・ジョウトのチャンピオンであるワタル君に2人に何かあったら助けてほしい。オーキド博士に研究の手伝いをするからしばらく匿ってくれ。と頼んだ。
僕は密かに組織の正体、出回ってる僕らの研究資料を消す為に各地を飛び回っては研究所の破壊、情報の抹消をしている。あとは封印した故郷、水の都を守っている。

ちなみに、僕は水の都の護神として水の民に崇められたポケモン"ラティオス"だ。
ポケモンと人間の間に子供が出来るわけが、と思うだろうけど水の都を代表とする一族は水を自在に操る事が出来る能力を持っていた。
その一族の中で能力が高い女性が都の護神の花嫁として迎え、水の都の巫女として都の平和を祈るという掟のようなものがあった。
僕らはたまに人の姿になって都の民に混ざって生活をし、水と人、そこに住むポケモン達とそれぞれ争いもせず共に生きてきた。
つまり、ジルチ。君はポケモンと特殊な人間の間に産まれた子だ。その能力は僕らの血を受け継いだから成せる事。
この先、大変かもしれないけど僕はジルチが平和に過ごせたらそれでいいと思っている。 サフィラスより]

確かに普通の人と違って私はポケモンの技が使えるけど、それがポケモンと特殊な人の間に産まれたからと思いもしなかった。だからロケット団はポケモンの技が使える私にポケモン用の拘束道具を使った。

「これが、私達家族の真相…。」

私は手紙の内容があまりにも衝撃的で信じられなくて震えている手で手紙の2枚目をめくると、写真が2枚挟まっていた。白い山に囲まれた白くて綺麗な街並みで、大きな木の下でお父さんと産まれて少し経った私を抱えてるお母さんの家族写真と幼い頃にミナモシティの船場でラクライと一緒に撮った家族写真だった。

「お父さん…お母さん……。」

家族写真を見てまた家族全員揃って欲しかったと思うと涙が溢れ出した。
2枚目の手紙には
[家族写真はこれしかないけど大切な思い出だ。僕はいつも持ち歩いてる。ジルチも部屋に飾ってくれると嬉しい。 お父さんより]
と書かれていた。
他の手紙は私の知らないお母さんとの連絡内容で、恐ろしい事にポケモンの捕獲を強化した道具や薬品の開発があったと書かれていた。あとは私の成長やラクライの事が書いてあって最後のやり取りは2ヶ月前だった。

「私が知らないところでお父さん達はずっと戦って守ってたんだ…。私も戦う…!旅をしながら組織について情報を集める。まずは私の素性を知ってたロケット団について調べなきゃ。」

私は旅をしながらまだ知らない悪の組織とロケット団について調べると決めた。もちろん、バッチを集めてチャンピオンリーグに行く。再会を約束した2人に会う為に、大好きなレッドに会う為に私は戦う。
3年近く遅れて旅に出るから2人はもうすでにリーグを制覇してそうと思った。

「オーキド博士に最近連絡してなかったからこの事を話すついでに2人の事を聞こう。」

やる事や目標が一気にできたと考えながら手紙を箱に入れて引き出しにしまった。お母さんの散らかった机の上に2つの写真立てがあって、私が手に持ってる写真と同じものだった。

「お母さん、お父さん…。教えてくれてありがとう。お母さんの研究の続きやるから…おやすみ。」

私はこれからの事について決意を抱きながらお母さんの部屋を静かに出ていった。
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