旅立つ準備をする為にレッドとグリーンは親と博士と共にタマムシデパートに来ていた。モンスターボールやきずぐすりを買ってもらった2人は2階のフロアで話していた。
「レッド、お前はジルチに何か渡すんかよ?」
「うん。考えてはいるけど何がいいのかなって。」
「オレはもう決まってるからなっこれからハナダシティの近くにいるじいさんの知り合いに会いに行くぜ。バイビー!!」
グリーンはどこか自信ありげにレッドの前から立ち去っていった。
「…グリーンのあの自信。ジルチが喜ぶって確信してるな……。」
「レッドも負けてられないわね!お母さんも手伝うけど?」
「いや、ぼくが決める。」
自分が決めなきゃ意味がないと思っていたレッドは、2階のトレーナーズ・マーケットから4階にあるワイズマン・ギフトに向かった。
「……。」
「あら、このピッピ人形可愛いわね!」
ピッピ人形を見て喜ぶ母親の隣でレッドはショーケースの中をずっと見ていた。
「…あった。」
「え?ピッピ人形探してたの?」
「違うよ。ぼくが探してたのはこっち。」
レッドが指をさした先には澄んだ水色の石ー水の石があった。
「水の石?」
「うん。グリーンはイーブイをジルチに渡すと思う。それにジルチはイーブイをシャワーズに進化させたいって言ってたからぼくは水の石を渡すんだ。」
レッドはあの日にジルチがイーブイを仲間にした後、進化先をどうするか聞いてきたのを覚えていた。
「いいプレゼントね。でも2,100円もするけどお金は足りるの?」
「もしもの時に貯めてた貯金箱を持ってきてるから大丈夫だと思う。」
リュックからニャースの貯金箱を取り出してカウンターに置いた。
「いらっしゃいませ。水の石を買うのかな?」
「うん。好きな子が引越しちゃうから喜ぶものを渡したくて…水の石、1こください。」
「プレゼント用にラッピングする?」
「お願いします。」
店員が水の石をラッピングしてる間に貯金箱からお金を出して1枚1枚数えながら受け皿に置いた。
「リボンは何色にする?水の石だから青色がいいかな?」
「…ううん。赤がいいです。」
「かしこまりました。」
「…21、と…。」
全てのお金を数え終えると2,100円ちょうどあって、レッドはホッとしていた。それと同時に貯金してて本当によかったと思っていた。
「2,100円丁度だね!はい、お待たせ。」
店員の手には赤いリボンで結ばれた長方形の箱があった。
「ありがとうございます。」
レッドはジルチへプレゼントをリュックにしまって微笑んだ。
グリーン達はハナダシティの先にある24番道路に来ていた。草むらから飛び出すポケモン達をグリーン自慢のゼニガメが次々と倒していった。
「この先にじいさんの知り合いがいるんかよ?」
「もちろんとも。この先に岬の小屋があって、パソコン通信のポケモン預かりシステムを作ったのはそこに住む彼でな。…後は行けばわかるはずじゃ。」
「ちぇっそこまで言ったなら最後まで教えてくれたっていいじゃねえか。」
グリーンは文句を言いながら小石を蹴って歩いた。
2人は奥に行くと小さな一軒家が見えて、オーキド博士がドアをノックをすると中からカントーではない方言が返ってきた。
「マサキ。邪魔するぞ。」
「邪魔するんやったら帰ってなー。ってこっちじゃ通じへんネタやったな。いらっしゃい、オーキド博士とお孫さん。」
「やぁ。孫のグリーンが旅に出る歳になって、ポケモン預かりシステムを利用するから挨拶しに来たのじゃ。」
オーキド博士はグリーンの背中を押して1歩前に出した。
「オレはグリーン!強いポケモントレーナーになる男だぜ!」
「よろしくやで、グリーン。わいはマサキ。この辺りじゃポケモンマニアで有名やわ。遠い所から挨拶しに来たんや。旅立ちの記念にこの子を連れて行ったり!」
マサキは近くにあったパソコンを操作すると機械からボールが出てきた。
「すっげぇ…!」
「わいの1番お気に入りポケモンやで!大切にしたってな?」
マサキからボールを受け取ったグリーンは早速投げると中からイーブイが現れた。
「イーブイだ!!」
イーブイはグリーンを見上げると彼の肩に飛び乗って頬ずりをした。少しくすぐったそうにする彼はイーブイを見たあとマサキを見た。
「あのさ、イーブイをもう1匹譲ってほしいんだ。」
「もう1匹?」
「うん。一緒に旅立つ子がジョウトに引越しちまうんだ。その子がイーブイ欲しがっていたから…オレと一緒でイーブイを旅に連れて行ってほしいんだっ」
グリーンは無理かもしれないと思いつつマサキに頼み込んでみた。以前からイーブイを持ってる人がいないかと博士に聞いてた際に、知り合いにイーブイ好きでたくさん飼育していると言っていた。旅立ちの記念に譲ってもらったイーブイを見た瞬間、グリーンはマサキがイーブイ好きの人だと確信していた。
「……。」
マサキが黙ってグリーンをジッと見続けていたからグリーンは対抗してマサキを睨みつけた。もし無理だったら自分のイーブイをジルチに渡そうと思っているとマサキはぷっと笑いだした。
「ぷ…っ!あははははっ!そんな怖い顔せんでええやん!」
「え。」
「最初生意気なガキやと思っとったけど、あははっ何や素直なとこあるやん。」
マサキは笑いながら引き出しを開けるともう1つボールを取り出してグリーンに渡した。
「オーキド博士からお前さんがイーブイ2匹欲しがるかもせえへんって聞いてな。ちゃんと理由言ったら渡そうと思っとってん。せやからそのイーブイはその引越しする子に渡したってな?」
「あ…ありがとう!」
「あと旅に出てまたこっちに来る時に珍しいポケモン捕まえてたら見せてやー?待ってるで!」
「任せろ!」
グリーンはマサキから受け取ったジルチに渡すボールをリュックに入れて、心の中でレッドに勝ったと確信した。
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