15.再会のバトルの約束
 それから3人でチャンピオンになる目標の他にいろんな事を話していた。

「ジルチはジョウトに着いたらすぐ旅立つの?」

「んーお母さん次第かなー。研究のお手伝いもしたいし落ち着いたら出発すると思う!」

「ジョウト地方ってカントーと違うポケモンがいるんだよなー?また会ったらジルチのポケモン見せてくれよ?」

「もちろん!」

離ればなれになる事に抵抗があったのに、今じゃ再会できる日を楽しみになっているのは2人がこれからの先を楽しそうに話すからだとジルチは思った。

「再会したらまずバトルしたいね。」

「向こうで鍛えて絶対レッドくんに勝つからね。」

「成長したオレにこてんぱんにされるなよ?」

「逆にこてんぱんにしてあげる!」

「負けねぇからな!」

再会したらまず、バトルをする約束をした。その約束ができてジルチは本当にいいライバルになれたと実感した。それはレッド達も同じで2人の目は再会した時のバトルが楽しみだと思っていた。
ジルチは心が暖かくなるのを感じながら次に伝える相手の場所へ向かおうと思って立ち上がった。

「それじゃ、そろそろオーキド博士のところへ行ってくるね。」

「ん、じいさんに言いに行くのか?」

「それもあるけどお庭にいたピカチュウたちに挨拶しにいこうと思って。準備をしてたらいつ会いに行けるかわからないから…。」

「そっか…玄関まで見送るぜ。」

「ぼくも見送る。」

2人も立ち上がってジルチを玄関まで見送ってくれた。

「2人とも、今日はありがとう。」

「いいぜ、時間があったらまた家に来いよ?」

「うん、そうする。」

「ジルチ。またね。」

「バイバイ、レッドくん。それじゃ行ってくる!」

ジルチはオーキド研究所に向かって走っていった。今日はいろんな場所へ走らないと間に合わないと思いつつオーキド博士に会いに行った。

「やぁ、ジルチちゃん。そういえば君が昔見たポケモンの正体がわかったんじゃ!」

「本当ですか!?」

「ジョウトのウツギ博士に聞いたらどうやらジョウトの森で見かけた幻のポケモンのようじゃ。名前はセレビィ。時渡りポケモン。」

ジルチは研究所の庭で会ったのがジョウト地方の幻のポケモンだとは思わなかった。

「ジョウトへ行けばセレビィに会えますか?」

「んー…セレビィは時渡りという力で過去へ行ったり、未来へ行ったりで会うのは難しいかもしれんなぁ。」

「そうですか…。教えてくださってありがとうございます。お庭へ行っても大丈夫ですか?」

「もちろんじゃ!」

「ありがとうございます!」

ジルチはオーキド博士にお礼を言って庭へ向かった。

「幻のポケモンだからやっぱ会うのは難しいよねー…。」

できる事ならもう1度会いたかったと思いながらピカチュウ達を探し始めた。ジルチは背中に翼を生やして、ふわっと空を飛ぶとピカチュウ達がジルチの存在に気づいて手を振って飛び跳ねていた。

「ピカチュウ見っけ!こんにちは。あなたたちに伝えなきゃいけない事があって、実は私…しばらく会えなくなっちゃうの。」

『ピカァ……』『チュウ……』

ピカチュウ達の元に降りて近いうちにカントーからジョウトへ引越しする事を伝えると2匹の耳が垂れてすごく落ち込んだ。

「ごめんね…。でも旅の途中でまたカントーに戻ってくると思うから、その時また会おうね?」

『ピッカ!』『ピカピーカ!!』

永遠の別れじゃなく、また会える事がわかってピカチュウ達は万歳をした。

「そのとき楽しみしてるから!バイバイ!ピカチュウ!!」

『ピカピー!』

ジルチとピカチュウ達は大きく手を振ってお別れをした。研究所へ戻る途中、庭にいるポケモン達が騒がしくしているのに気づいた。

「どうしたんだろう…?」

騒ぎのする方角へ行くとオニスズメの集団がコラッタやナゾノクサ達を突いていた。

「ちょっと!!何してるの!!」

オニスズメの集団に怒っても聞く耳を持たない彼らに腹が立ったジルチは、右手に電撃を込めて威嚇攻撃を仕掛けたものの効果はいまひとつだった。

「もーっ!いい加減にしてっ!!ラクライ、手伝って!」

ジルチは鞄に入れてたボールを思いっきり投げた。ボールから飛び出て状況を理解したラクライは、オニスズメの集団にでんきショックを浴びさせた。

『ギァアギャア!!』

ジルチより強い威力で放ったお陰か、オニスズメの集団は一目散に逃げていった。

「もう庭のポケモンをいじめないで!ありがと、ラクライ」

『ワゥ』

ラクライをボールに戻して研究所に帰ってくるとオーキド博士が奥の方で手招きをしていた。

「…?(わたしは何の用かな?)」

「ジルチちゃん。お母さんとジョウトへ行くというのは知っておるのじゃが1つ頼みたい事があってな。」

「…何でしょうか?」

「君にはこのポケモン図鑑でジョウトのポケモンについて調べてもらいたいんじゃ。わしやウツギ博士も色々調べてても各地に生息するポケモンについてもっと知りたいんじゃ。」

オーキド博士は白衣のポケットから赤色で長方形の機械を取り出してジルチに渡した。

「ジョウトのポケモンを?」

「そう。わしは歳だから現地に行ったりする好奇心はあっても身体が追いつかなくての…グリーン達にはカントーのポケモンを調べてもらうつもりじゃ。図鑑のデータはカントーのも対応させておるからいつカントーに帰ってきても大丈夫じゃぞ?」

「ありがとうございますっ」

「いいんじゃよ。ジョウトにはウツギ博士がいるからいろいろ聞いてみるといい!」

「はい!!お邪魔しましたー!」

ジルチはポケモン図鑑を大事に持って家に帰ると、母親が段ボールに研究資料を入れていた。

「……(わたしも荷物まとめなきゃいけないね…)」

「おかえり、ジルチ。」

「ただいま、お母さん。あのねっオーキド博士からポケモン図鑑もらったの!」

母親にもらったばかりのポケモン図鑑を見せた。

「オーキド博士が頑張って作ってた図鑑が出来たのね。よかったわね、ジルチ!」

「うん!オーキド博士が私にジョウトのポケモンを調べてほしいんだって。あと引っ越すの来週まで待ってほしいの。レッドくんたちの旅立つのを見送りたい!」

「わかったわ。それまでには荷物をまとめておくのよ?」

「うん、ありがとう!今からまとめるよ!」

ジルチは組み立ててない段ボールを1枚抱えて部屋へ向かった。絵本やポケモンの本を段ボールへ詰めて机の上に置いてた写真立てを見た。

「初バトル終わって研究所に戻ったときに撮ってもらったんだっけ…。」

写真にはそれぞれのポケモンを抱えて満面の笑みなのを見てると、視界がぼやけて頬に涙が伝った。

「ダメ…まだ泣くのは早い……。泣くのは再会したとき!だから、泣かないようにしなきゃ。」

服の袖で涙を拭いて荷造りを再開し、ポケモン図鑑ときずくすりを3つほど鞄の中に入れて他は段ボールに入れた。
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