翌朝、ジルチは2人に会う為に走った。レッドの家が見えた時、ちょうどレッドが外に出てきたところだった。
「レッド、くんっ!はぁっはぁ…今、大、丈夫!?」
「大丈夫だけどジルチこそ大丈夫?急いでるようだけど何かあったの?」
息を切らせながらレッドの元に来たジルチを心配して背中をさすってあげた。
「あのねっ…2人に、言わなきゃいけない、ことがあるの…!」
「ぼくとグリーンに?」
「うん。詳しいことは、3人そろったときに言うから、グリーンくんの家に行くよ!」
「わかった。」
2人は隣のグリーンの家へ向かうとグリーンのお姉さんが家の前にある花壇に水やりをしていた。
「グリーンくんのお姉さん!おはようございます!」
「おはようジルチちゃん、レッドくん。グリーンに用があるの?」
「そうなんです。」
「あの子まだ寝てるから起こしにいっていいから。」
「わかりました!」
「グリーンを叩き起こそう。」
2人はグリーンを叩き起こすべく、2階へ上がるとグリーンは身体の半分がベッドに落ちかけていた。
「グリーンくん!起きて!起きてー!!」
ジルチが大声でグリーンに呼びかけても起きそうになかった。
「ぼくに任せて。」
そう言うとレッドはグリーンをベッドから引きずり落とすと、ガツンと床に頭をぶつけて痛そうな音がした。
「いってぇ〜!何しやがるんだ!」
「せっかくジルチが起こしに来たのに起きないからベッドから落とした。」
「ジルチが…!?はっ!」
最悪な目覚めてグリーンは機嫌が悪かったが、レッドの隣にいるジルチを見て驚いた。
「おはよう。グリーンくん?」
「お、おはよう…。」
「グリーンくんにも言わなきゃいけないことがあって家まで来たけど…今大丈夫?」
「言わなきゃいけないこと…?大丈夫だぜ?」
グリーンは床にぶつけた頭をさすりながら言った。
「ありがとう。」
ジルチは一息ついてから2人を見て言った。
「実は、ジョウト地方へ引越すことになったの。」
2人はジルチが言った事があまりにも衝撃的で黙ってしまった。
「いつ、引越す…んだよ…?」
最初に口が開いたのはグリーンであまりのショックのせいか言葉が詰まり気味だった。
「まだわからない…お母さんに頼んで2人が旅立つ日まで待ってもらおうと思ってる。」
「……。」
レッドは脱いだ帽子を握りしめて静かに聞いていた。
「引越す話が出たのが昨日で…理由はお母さんの研究でジョウトへ行くことになったの。」
「そうか…ジルチと離ればなれになっちまうのか。」
「ごめんね…。」
「ジルチが謝る必要ないよ。一緒に旅に出れないのは残念だけど…。」
少しの間3人の沈黙が続き、ジルチが俯きそうになった時グリーンが立ち上がった。
「だけどよ!離ればなれになっても旅の目標が一緒ならいつか会えるだろ?そうだろ!?」
「うん。ジョウト地方もカントーと同じチャンピオンリーグだからそこで会えると思う。」
レッドも立ち上がってジルチに手を差し伸ばした。
「目的地は一緒。近くにいなくても、寂しくても心は同じ。」
「だからジルチ。一旦のお別れだと思えばいいんだぜ?そりゃオレだってジルチがいなくなるのは寂しいけどよ…前を向こうぜ?」
グリーンもレッドと同じように手を差し伸ばしたのを見てジルチは泣きそうになった。
「そう、だよね…離ればなれなっても、わたしたちはっまた会えるよね…!!」
ジルチは2人の手を掴んでゆっくりと立ち上がった。
「お、おいぉぃ…泣くなよ。」
「ジルチ。泣くのはまだ早いよ?」
グリーンはおどおどしながら空いた手の方でジルチの頭を撫で、レッドは空いてる手をジルチの手の上に重ねた。
「な、泣いて…ないよ!悲しくて泣いてるわけじゃないから!」
「ほら泣いてんじゃん。」
「違うってばっ。」
元気づけようとからかうのはわかっていたとしても、何度も言われてジルチはイラっとしていた。
「グリーンそこまでにした方が…。」
「グリーンくんのばかぁ!!」
「ふごっ!」
ジルチは両手が塞がってるのでグリーンに頭突きをした。
「あ、ごめん。」
「いや、オレこそ…ごめん。でも元気でただろ?」
にししっとグリーンが笑ったのを見たジルチもつられて笑った。
「ジルチは笑顔でいるのがいいよ。だから元気だして?」
「レッドくんありがとう、グリーンくんも。」
2人は黙って頷いた。
「そういえば2人ともいつ旅立つの?」
「明後日、母さんと旅の準備のためにタマムキシティのデパートに行くから…来週に旅立つつもり。」
「オレもそうだぜ!じいさんもついてくるって言ってた。」
「うん、わかった。お母さんに来週って伝えるね!」
こうして、ジルチ達の旅立ちは来週に決まった。
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