レッドがジルチを家まで送った後の帰り道。左を曲がれば家はもうすぐという時に前方から人影が見えた。
「よぉーレッド〜?随分ゴキゲンさんじゃねぇか…?」
レッドからして今一番会いたくない厄介な奴に出くわしてしまった。
「…グリーン何の用?遅くまで遊んでたらお姉さん心配するよ。」
「オレは姉ちゃんにお使いを頼まれて今その帰りだ!」
グリーンは少し大きな声で言いながらずかずかと歩いてきた。
「それよりレッド、抜け駆けはよくねぇぞ。」
「抜け駆けって…何のこと?」
レッドはわざととぼけた。
「オレは知ってるぜ。今日ジルチと"2人"で遊んだだろ!ピカチュウと一緒に!」
グリーンは2人の部分を強調して言って、レッドは多分オーキド博士から聞いたのだろうと思った。
「オレだって、ジルチと2人で遊んでみてぇよ!」
「……(肩、痛いんだけど)」
グリーンにガッと両肩を掴まれて揺さぶられた。
「…じゃあ誘えばいいじゃん。」
「そう簡単に誘えたら苦労しねぇよ!?」
バッと離したと思えば今度はグリーンの頭を抱えただしたのを見て、レッドは今のグリーンはいつもよりおかしいと思った。
「レッドに先越された……オレに勇気があれば……!」
「グリーン…ぼく、帰るよ。」
レッドは今は下手に関わるよりそっとしておいた方がいいと思い、グリーンの横を通りすぎて家へ向かって歩き出した途端、次は右腕を掴まれた。
「レッド!どうやってジルチを誘ったんだっ!!」
ライバルの意地なのか必死な顔して聞いてきた。
「普通に遊ぼうって誘った。」
レッドは間違ってはいない、細かく言ってないだけと思った。
「うそ…だろ?」
グリーンが「マジかよ」という顔してレッドを見てくる。
「いや本当だし。」
「っつか、オレ誘う流れはなかったのかよ!?」
「なかった。」
「ぐ…っ!!」
グリーンが少し涙目になりながら固まった。
「絶対ジルチを誘ってやるっ!レッドに負けるもんかぁぁぁあっ!!!」
大声で叫んでグリーンは自分の家へ向かって全力疾走した。レッドはやっと静かになった帰り道を再び歩き出した。
グリーンの襲撃に遭ったけどジルチが心配するような出来事もなく無事に帰宅した。
「ただいま、母さん。」
リビングにいた母親は遊びに行く前と変わらずニコニコと笑顔でいた。
「おかえり、レッド。ジルチちゃんとどうだった?」
「…いつも通りだよ。弁当ごちそうさま。中にジルチが作ってくれたクッキー入ってる。」
「あら、ありがとう!」
レッドは弁当箱を母親に渡した。
「ジルチがおにぎりと玉子焼き美味しいって言ってた。」
早速、弁当箱からクッキーを取り出して食べてる母親は嬉しそうに頷いた。弁当の話でおにぎりに梅干しが入ってた事をレッドは思い出した。
「何でおにぎりに梅干しが入ってたの?」
「ジルチちゃんが普段何食べてるか知らないからいろんなもの入れてみたってのはあるけど、一番はジルチちゃんが食べてどんな表情するかレッドに見せたかったの。どんな表情してくれた?」
レッドは「そういうことか。」と思って昼ご飯の光景を思い出した。
「美味しくて笑顔になったり、梅干しの酸っぱさですごく酸っぱそうな顔してた。」
「あら、少し酸っぱすぎたかしら?でもいろんな表情見れて可愛かったでしょ?」
「!」
「あらあら、そんな顔真っ赤にしちゃって〜。」
レッドは恥ずかしくなって帽子を深く被り、これ以上ジルチの話題で母親にからかわれるのを避けるべく2階へ向かった。
「ちゃんと手を洗ったらご飯食べに降りてきなさいよー?」
「あ…!!」
晩御飯という現実がレッドを母親から逃がしてくれなさそうだ。
「晩ご飯の最中でもからかわれるのか…。でも、今日はいい日だった。」
また、2人で遊べたらいいなと思っていたレッドは知らず知らず笑顔になっていた。
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