マサラタウンは今日も変わりなくいい天気でレッドからしたら今日は特別な日だった。
「レッドくーん!迎えに来たよー!」
レッドの家の前にジルチがやって来た。この間、グリーンの家から帰る途中にオーキド博士の庭へ一緒に遊びに行く約束をして今日がその日になった。
「おはよう、ジルチ。すぐ出るから待ってて!」
レッドは窓から顔を出してジルチに返事をして、机に置いてた帽子を取って1階に降りた。
今日のジルチはいつもの白いワンピースで手にバスケットを持っていた。
「はい、これお昼ご飯。ジルチちゃんと一緒に食べてね。」
リビングに来たレッドに母親はニコニコしながら弁当箱を渡した。
「うん、ありがとう。(…いや、なぜ母さんがそんな嬉しそうなんだ)」
そんな事を考えてるとレッドの母親は心を見透かしたかのように話し出した。
「レッドが随分嬉しそうな顔して遊びに行くからジルチちゃんの事が好きなのかなって思うと母さん嬉しくって。」
「!?」
「うふふっ図星かしら?ジルチちゃんが引っ越してからレッドが遊びに行って帰ってきた時の表情が違うもの。」
「……(そんな顔してただろうか…)」
レッドとグリーンは昔から遊んだり競い合う仲でその中にジルチが仲間に入ったからもっと楽しくなった。そんな日々が続いていくうちにレッドはジルチの事が好きになっていた。グリーンもジルチの事が気になっているのを知っていて、彼には負けたくないと思っている。
「ほーら、何ぼぉーっとしてるの?男の子が女の子を待たせちゃダメ!絶対!」
ほらほら!と母親がレッドの背中を押して玄関へ放り出した。
「いってらっしゃい!レッド!」
「い、いってきます。」
満面の笑みで見送る母親を見たあとに玄関の扉を開けた。
「ごめん、お待たせ。」
「ううん!気にしないで!」
ジルチは微笑んでバスケットを持っていない方の手でレッドの手を掴んだ。
「!」
ジルチに掴まれた時レッドは少しドキッとした。
「さぁ!オーキド博士のお庭に、行こ!!」
「うん…!」
ジルチと繋いでいる手を見て、本当は自分から手を繋ぎたかった。帰りは自分から手を繋ごうとレッドは思った。
こうして2人は手を繋ぎながらオーキド博士の庭がある研究所へ向かった。
オーキド博士の研究所へ着いて、博士や研究員の人達に挨拶を済ませてから庭へ向かった。心地いい風が吹いてジルチの髪とワンピースを揺らした。
「んーっ!今日もいい天気で気持ちいい!レッドもそう思わない?」
ジルチは背伸びしながらレッドに聞いてきた。
「うん、そうだね。晴れててよかった。」
空を見上げればポッポの群れが飛んでいてとても澄んだ世界が広がっていた。
レッドは近くの切り株に弁当箱を置くとジルチも持ってきたバスケットを弁当箱の隣に置いた。
「ジルチ、そのバスケット何入ってるの?」
「朝、お母さんと一緒に作ったクッキーだよ。レッドくんのは?」
「母さんが作ってくれたから多分おにぎりじゃないかな?ジルチと一緒に食べてってさ。」
「ありがとうっレッドくんのお母さんにもクッキー分けなきゃね。」
「どういたしまして。ジルチもありがとう。」
「お互い様だね。お昼になったら食べよう!さてと、あの時のピカチュウいるかなー?」
ジルチは切り株の隣にある大きな木に登っていったと言うより正確には一番近くの太い枝まで軽く飛んだ。
「見つかりそう?」
「んー……あ、いた。おーい!ピカチュウー!遊びに来たよー!!」
ジルチが少し離れた草むらに向かって大きな声で呼んだ。その声に反応して草むらが大きく揺れた。
『ピカピッ!』『ピカァ!』
草むらからピカチュウの2匹出てきて、ジルチは木の上から飛び降りるとピカチュウ達に近づいた。
「今日はピカチュウのお友達を連れてきたの?」
『ピッカ!』
ピカチュウはそうだ!と手を振った。
「わたしも今日友達連れてきたんだ。紹介するね、この子はレッドくん。」
「よろしく、ピカチュウ。ぼくもよく遊びに来るから見覚えあるかもしれないね。」
レッドはピカチュウに手を差し出すとピカチュウは手に触れてくれた。もう1匹のピカチュウはほっぺをむにむにと触っていた。
「…あ、もしかして君はこの間のピカチュウ?」
『ピカ!』
「レッドくんこっちのピカチュウと前に会ったことあるの?」
「うん、この間ほっぺを触らせてくれたピカチュウだよ。」
「この子だったんだねー。」
レッドはピカチュウの前に座って以前のようにほっぺをむにむにと触り始めた。
『ピィ〜カァ〜…』
ピカチュウはレッドにされるがままじっとしていた。その様子を隣で見ていたジルチが「わたしも触らせてもらおう。」と言ってピカチュウの前に座った。
「ピカチュウ?ほっぺ触っていい?」
『ピカ!』
ピカチュウは喜んでジルチの膝の上へ座った 。
「では、さっそく…。」
ピカチュウの頬へそ…っと両手を近づけて、もにゅっと包み込んだ。
「…!!や、やわら…かい!」
ジルチは優しくつまんだりむにむにと触ったりとその柔らかさを堪能していた。レッドはジルチの緩みきった顔を見て少し笑った。
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