しかし、そのまま落下していく感覚がなく、目を固く瞑っていた2人の手を誰かが掴んでいた。2人は恐る恐る目を開けると、手を掴んでいたのは白いワンピースを着た空色に近い青髪の少女だった。
「大丈夫っ!?」
「あ、あぁ…!助かったっ!!」
「なんとか。って、浮いてる…?」
崖から手を伸ばして掴んでくれてるかと思いきや、その子は崖から少し落ちた所で浮いていた。そして背中には平たく先が尖った翼のようなものが生えていた。
「叫び声が聞こえたから何事かと思ったら、君達が崖から落ちそうになってたから飛んできちゃった!崖の上まで戻るからじっとしてて?」
女の子が笑顔でそう言って2人を崖の上まで運んでくれた。2人はラッタの集団がいるんじゃないかと思っていたが…そんな事はなかった。
「あーっ死ぬかと思った!!」
グリーンがは安堵して大の字で倒れ、その拍子に草が舞った。
「グリーン…これから周りを確認とポケモン持ってない時は草むらに近寄らないようにしよう。本当に助けてくれてありがとう。えっと…君、名前は?」
レッドはグリーンの大の字を横目に見ながら向かいに座っている女の子を見た。見た感じ自分達と同い年の子だと思った。
「わたしはジルチ!君達は?」
女の子はジルチと笑顔で名乗った。ジルチが金色の瞳を閉じると背中の翼は消え、再び瞳を開けるとエメラルドグリーンの瞳になっていた。
「オレはグリーン!マサラタウンに住んでる!」
グリーンはバッと起き上がって自己紹介をした。寝転がった時に付いた草が髪の毛に絡まっていた。
「ぼくはレッド。同じくマサラタウンでグリーンの隣の家に住んでる」
「グリーンくんとレッドくんね!わたしはお母さんと一緒にマサラタウンに引っ越してきたの!」
「マジかよ!」
「母さんが朝、今日オーキド博士の研究所の隣の家に引っ越しに来る家族がいるって聞いたけどジルチの事だったんだ?」
ジルチは今朝、遠い地方からマサラタウンに引っ越してきた。母親が荷物を整頓している間に近くを探検していたところ彼らの騒ぎに気づいて駆けつけたのだ。
「お母さんが研究内容をオーキド博士に見せにきたのとこっちの地方に住んでみたかったって言ってたの」
「ジルチの母さん研究員なんだ?」
「うん、難しい事はわからないけど昔のポケモンやその地方での出来事について調べてるんだって!」
「へぇ〜」
「それよりジルチは何で空を飛べるんだよ?遠い地方って飛べるヤツがいんかよ?」
「……(そんなバカな…)」
と思いつつレッドも確かに気になっていた。普通なら空を飛んだり、子供2人を持ち上げるくらいの力があるとは思えない。
「あー……お母さんに人前では内緒にしなさいって言われてるけど実はわたし、ポケモンの技が少し使えるの」
「「!?」」
「電気も出せたり…物を浮かせたり」
ジルチが人差し指を立てて瞳が金色になると…指先に電撃が走り、風が吹いてないにも関わらず花弁が彼らの周りに漂った。
「すげぇなっ!ジルチ!!」
「えへへ、お母さんは神様からの授かり物だからいざって時にしか使っちゃダメ、人前に見せちゃダメって言われてるの。…2人には見せちゃったけどね」
ジルチはいたずらっ子のように舌を出した。
「だ、だから3人だけの内緒にしてね?バレたらお母さんに怒られちゃうからっ」
「いいぜ!」
「グリーンがまた野生ポケモンにイタズラした事も一緒にね」
「あ!レッドてめぇ!」
「あはは!じゃあお母さん達に内緒、私達3人だけの秘密、だね」
3人は互いに小指を出して指切りをした。
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