水の都の巫女 | ナノ


10

 スズの塔の出来事を終えて私はその日のうちにアサギシティへ向かうことにした。

「ジルチちゃんお元気で」

「はい、マツバさんにいろんな事教えてもらったので楽しかったです」

「海を渡るときは気をつけるようにな。…ジルチ、手を見せてみろ」

「ん?」

ハヤトさんに両手首掴まれたので手のひらを見せた。

「火傷が…治ってる?」

「あの時火傷をしてたの気づいてましたか…」

ライコウの雷を受け止めた時の火傷はホウオウの聖なる炎の加護を授かった時に治った。治療効果があるだなんて不思議な炎だ。

「俺が聞いたときにとっさに隠したからな。…いいか?無茶はするな」

「は、はい…」

ハヤトさんの声色がやや低かったのが怖かったので"ハヤトさんの前では"本当に無茶はしないでおこうと思った。

「そうだよジルチちゃん。無茶して怪我をしたらハヤト兄ちゃんが心配しちゃうからね」

「誰が兄ちゃんだ!!」

「あれ、ハヤトはジルチちゃんのことをいもう…」

「それ以上言うな!!」

ハヤトさんはマツバさんに掴みかかって口を塞いだ。

「くくくっ!」

2人のやり取りが面白くてつい笑ってしまった。

「…それじゃあジルチ。またいつか会おう」

「ジルチひゃん。ルギアにょいる島は41番水道りゃから」

ハヤトさんはマツバさんのほっぺをつまみながら見送ってくれた。

「はい!ハヤトさんもそれくらいにしてあげてくださいねっマツバさんのほっぺが伸びちゃいますよー!」

私はイーブイを出して帽子を深くかぶり直してから38番道路へ向かって走った。

「アサギシティへひとっ走りするよ!イーブイ!」

『ブイ!』

38番道路の林道を抜け、39番道路の牧場のある高原を全力疾走した。
そよ風が吹いて走っていて爽快だった。

「イーブイ!アサギシティがっ見えてきた!!」

潮風が香る港町、アサギシティに着いた。

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