06
今日は焼けた塔、明日はスズの塔へ行くのでそれまでマツバさんの屋敷に泊めさせてもらう事になった。焼けた塔の中は昔のままで天井は焼け落ちて床は所々焼け焦げて穴が開いていた。
「足場には気をつけてね」
「はい」
穴を避けながら下に降りる梯子へ向かうと白いマントに紫の服を着た男の人がいて、明らかに挙動不審な動きをしていた。
「む?マツバではないか!」
「ミナキ君、今日もスイクン探しかい?」
「その通り!今日は焼けた塔周辺を調べているのだが美しいスイクンの姿を見ないのだ!」
「スイクンはアサギの方角に行ったんじゃないかな」
「そうなのか!?ならば急いでアサギに向かわねばな!またなマツバ!!」
その人は空いた穴を上手く避けながら走って焼けた塔を出ていった。
「…知り合いですか?」
「うん。ミナキ君と言ってスイクンに憧れてる友人だ。今からスイクンと思われる者に会いに行くなんて言ったらミナキ君が暴走しそうだから嘘をついた」
「いいんですか?」
「今はジルチちゃんの用が優先だからね。ミナキ君には悪い事をしたとは思っているよ」
梯子へ着くと先にハヤトさんが前に出た。
「俺が先に降りる。そのあとジルチ達も降りてくれ」
「わかりました」
しばらくすると下から「大丈夫だ」と聞こえたので私も下に降りた。
雷で上の階の床が所々抜けてるので暗くはなかったけど足場が悪かった。
奥に行くと何かがいる気配がした。
「何か…いる?」
『…以前お会いした時より強くなられたみたいですね。巫女』
「!?」
アルフの遺跡で聞いた声がして奥から現れたのはスイクンだった。
「本当にスイクンだとは…それに人の言葉を話せるのは驚いた」
ハヤトさんとマツバさんは私の隣に来てスイクンを見た。
『その気になれば、ですよ。では、巫女』
スイクンは私の前に来て目を細めた。
『約束通り、お話ししましょう。貴女の一族、あの時起こった都の事を』
スイクンは昔話を語るかのように話し始めた。
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