03
目が覚めると見慣れない部屋で身体が少し重かった。
「ジルチ、目が覚めたか!」
「大丈夫かい?僕のゲンガーが…すまない」
マツバさんは申し訳なさそうな顔をしている。
「……(そういえばゲンガーにさいみんじゅつかけられて…)」
「ジルチ?」
マツバさんの隣にハヤトさんがいることに気づいた。
「ハヤト、さん…?はっ!」
私は布団から飛び起きて周りを見渡した。
ハヤトさんの家と同じで和風な造りになっていて廊下の向こうに大きな庭があった。
「ここは…!」
「僕の屋敷」
「マツバさんの?どうしてですか?」
「少し長くなるけど、いいかな?」
私は黙って頷くとマツバさんは事の発端を話し始めた。
千里眼で見たスズの塔で会うホウオウ・三聖獣の話、マツバさんはホウオウに憧れている事、チョウジタウンの事を丁寧に話してくれた。
「―……と言うわけだ。ゲンガーの件は本当にすまなかった」
「わかりました。ゲンガーに悪気はなかったのですね」
ゲンガーは私に謝ってきたから許してあげた。…シャワーズは許してくれるかわからないけど。
「でもスズの塔って関係者以外、中へ入れないのでは…?」
「うん。でも僕がいるから入れるよ」
「なるほど。…マツバさん、アルフの遺跡で誰かに焼けた塔に来なさいと言われたので明日行きたいのですがいいですか?」
「いいけどその誰かって?」
「それが…わからないのです。ただ両親の事を詳しく知ってそうだったので会って話を聞こうと思います」
「そんな得体の知れない人に会いに行くなんて危ないじゃないか!行くなら俺も一緒に行くよ」
ハヤトさんはチョウジタウンの件で私のことを心配しているようだ。
「ありがとうございます。でも…その人は人じゃなくてポケモンかもしれないです。水に深い関わりがあるポケモン」
「スイクン、だね」
「三聖獣のスイクンですか?」
「そう、穢れた水を浄化する力を持つ北風の化身。スイクンは水の巫女の後継者であるジルチちゃんに会おうとしてるのだと思う」
「…私、その話しましたか?」
「……」
マツバさんはおっと口が滑ったよと口元に手を添える動作をして黙った。
「そういえばジムの案内人にトレーナーカードを見せてないのにどうして私の名前を知ってたのですか?」
「ジルチ、マツバの千里眼だ」
「うん、そういうこと」
「そういうことですか…」
ポケセンですれ違ったときにはすでに私の名前を知っていたわけだ。
それなら微笑んだことに納得いく。
「さて、ジルチちゃんに話をしたしハヤトの目的のお茶を飲みに行こうか。美味しいところを案内するよ」
「ありがとう。ジルチも一緒に行こう!エンジュのお茶は美味しいよ!」
「ありがとうございます!知り合いが和菓子が美味しいと言ってたので気になっていました!」
マサキさんのオススメは羊羮ときんつばって言ってたかなと思い出しつつこれからのお茶会が楽しみになってきた。
「そうだ、ジルチちゃんにあれを着てもらおう」
「あれ?」
「せっかくエンジュにいるんだ。楽しんでもらいたいからね。ハヤトと同じ青か紺、藍色が似合いそうだ」
ハヤトさんは何かわかっているみたいで笑顔で頷いていた。
「あえて紅色系の桃色か紫も悪くないかもしれない」
「え?」
「僕たちじゃ決まらないしあの子達に任せるか」
「そうだな」
2人の会話であれが何なのかわからず、外へ連れ出されて行った。
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