01
―同日、キキョウシティ・ハヤトの家―
今日のキキョウシティはいい天気でジムは定休日だ。
居間でお茶を飲もうと思い、台所でお茶缶を開けると茶葉がなくなりかけていた。
「そういえばジルチがもうじき茶葉がなくなるって言ってたな…今日は休みだしエンジュに行ってお茶缶と和菓子を買おう。マツバも今日はジムの定休日のはずだし、修行をしてなければ一緒にお茶を飲みに誘おう」
俺は上着を羽織り、ピジョットに乗ってエンジュへ向かった。
あれからジルチはどうしてるだろうか。あの子の実力なら今頃エンジュジムを越えてアサギに向かってそうだ。でも、研究熱心なところもあるから焼けた塔に行ってホウオウ伝説について調べてるかもしれない。もし、エンジュで会えたらジルチも一緒に誘おうと思った。
エンジュシティに着いて先にマツバの屋敷へ向かった。門を叩こうとしたらゲンガーがニヤニヤしながらにゅっと出てきた。
「…昔みたいにもう驚かないしゲンガーの頭をうっかり叩かないぞ。マツバはいるか?」
『ゲッゲン!』
ゲンガーは笑顔で頷いてくぐり戸を開けて俺を招いた。
マツバとは古い付き合いで屋敷にはよく遊びに来ていた。そして毎回いたずら好きのゲンガーに絡まれるのだ。初めて来た時は…そりゃ驚いたさ。
飛びはねながら移動するゲンガーについていくと、マツバの自室に案内されてゲンガーは部屋をすり抜けていった。
「…やけにゲンガーの機嫌がいいな。すでに誰かを驚かせて満足しているみたいだ。マツバ!俺だ、ハヤトだ」
いきなり襖を開けるのは悪いと思い、声をかけた。
「ゲンガーが誰かを招き入れたと思ったらハヤトか。客人が寝てるけど入っても構わないよ」
「客人?一体誰が…」
俺は襖を開けて部屋を見ると驚いた。いると思っていなかったジルチがいたからだ。
「…ジルチがどうしてここに?」
「あぁ、さっきジムに挑んできてジルチちゃんが勝ったんだ。千里眼で見た光景が本当なら彼女は明日スイクンに、明後日スズの塔でホウオウと三聖獣に会う…それでしばらくここに居てもらおうと思ってね」
「定休日なのにわざわざ開けたのか?それでどうして彼女は眠ってるんだ?」
「君は質問ばかりだね。今日来るのを知ったのは千里眼で見たから、眠っているのはゲンガーがさいみんじゅつで眠らせたからだ」
なるほど、ことの発端はホウオウかと納得した。
「いや、待て、眠らせる必要あったか?ジルチなら話せばわかるはずなんだが」
「うん、僕もそうだと思って話そうとしたらゲンガーが先に動いちゃってさ。僕が彼女をエンジュに居てほしいという気持ちを読み取ってしまったんだ」
「そういうことか…」
いたずら好きのゲンガーがマツバの為にジルチをエンジュから逃がすまいと思っての行動だった。
「…ハヤト、ジルチちゃんが目が覚めたらまず何すると思う?」
「ん?そりゃジルチなら状況確認を素早くしてから怒るんじゃないか?」
すやすやと眠っているジルチを見て、怒るジルチをあまり想像をしたくないな、かみなりが落ちてきそうだと思った。
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