水の都の巫女 | ナノ


40

 翌日、エンジュジムに挑みに来た。
中に入ると入口周辺とジムトレーナーがいる場所以外は暗くて足元が全く見えなかった。

「え、うわ、暗っ!」

どのジムにもいた案内人がいなく、ジムトレーナーがいるところに蝋燭が1本あってそこだけ足場がわかった。
イーブイは自分で歩きたくないのか私の肩に避難してきた。
真ん中辺りで見えない足場に恐る恐る踏み入れると床があって安心した。

「何だ、ちゃんと床があるじゃ……」

数歩まっすぐ歩くと床がなく、暗闇の中を落ちていった。

「うわぁぁあっ!?」

突然浮遊感がなくなって目を開けると暗闇の中ではなく、ジムの入口周辺だった。

「え、え?」

足場がなくて暗闇の中を落ちたはずじゃ…と思いつつもう1度歩いてみた。
さっき落ちた場所を避けて踏み込む前に左右の足場確認をした。

「よし、歩ける…!」

慎重になって歩いてたつもりだけど油断したら落ちた。

「……落ちるの怖すぎるっ!!」

ジム内の入口で独り言をぼやいたらジムトレーナー達に笑われた。
肩にいるイーブイは半泣きになって腰にあったボールの中へ入ってしまった。
何度も落ちては歩いてを繰り返してやっとジムトレーナーのイタコとバトルをした時には精神的に疲れきっていた。

「ジムリーダーと戦う前には切り替えなきゃこの子たちの全力は出せないね…。頑張ろ」

私は頬を軽く叩いて気持ちを切り替えた。
それからは落ちる事もなくジムトレーナーを順調に倒していってジムリーダーの所まで無事にたどり着いた。
そこには先日ポケセンですれ違った男の人が立っていた。

「…よく来たね。ここまで来るのに苦労してたね」

「そうですね…。お陰様で精神面が鍛えられた気がします」

「それはよかった。ジルチちゃん、ここエンジュでは昔からポケモンを神様として祀っているの知ってるかな?真の実力を備えたトレーナーの前に伝説のポケモンは舞い降りる、そう伝えられている……」

「ホウオウ伝説…」

「そう、僕はその言い伝えを信じ、産まれた時からここで秘密の修行をしてきた。そのおかげで他の人には見えないものも見えるようになった……」

「………(千里眼、か)」

私はマツバさんの話を黙って聞いていた。

「僕に見えるのはこの地に伝説のポケモンを呼び寄せる人物の影…。僕はそれが僕自身だと信じているよ!そしてその為の修行、君にも協力してもらおう!」

「私の目標達成の為にマツバさんに協力してもらいますよ!」

2人同時にボールを投げてバトルを開始した。
イーブイはやっとバトルだ!とやる気を出していて、さっきまで半泣きから立ち直ったみたいでよかった。


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