水の都の巫女 | ナノ


38

 コガネジムはかなり苦戦をしてしまったので次のエンジュジムも厳しい戦いになるかもしれない。

「…ジム挑む前に少し修行しよっかな」

私はエンジュシティのポケセンで休憩をしていた。
賑やかなコガネシティと違い、静かで古風な印象が強かった。看板に書いてあった通り、昔と今が同時に流れる歴史の街。
ジム戦のあとに焼けた塔とか行ってみようと思う。ホウオウ伝説、ジョウトの三聖獣はここの焼けた塔が舞台なので興味があった。

「んー…っ、行くかぁ」

身体を伸ばしてそろそろエンジュシティ周辺のトレーナーたちにバトルをしかけようと考えていた。

「あれ?コガネにおったシャワーズの子やん!エンジュに来てたんやなー!」

「あ、イーブイ好きのお兄さん。こんにちは」

話しかけてきたのはコガネシティで会ったイーブイ好きのお兄さんだった。
また会うだろうと思ったら隣の町で会うとは…。

「こんにちは!ワイはイーブイ好きのお兄さんのマサキや。キミは?」

「ジルチです。シャワーズは元気にしてますよ」

ほら、とボールからシャワーズを出した。

『キュルル!』

「いつ見てもべっぴんさんやぁ!舞妓さんのシャワーズもなかなかべっぴんさんやけどワイはジルチのシャワーズが好みやな」

マサキさんはシャワーズを撫でながら褒めてくれた。

「ありがとうございます。まいこさんって…?」

「なんや、舞妓さん知らへんの?エンジュと言えば舞妓さんやのにー!」

「す、すみません…。エンジュジムとホウオウ伝説の焼けた塔ぐらいしか知らなくて…」

マサキさん曰く、エンジュシティはホウオウ伝説以外に舞妓や紅葉が綺麗、和菓子やお茶が一番美味しい、他の街にはない美しさがあるといろいろ教えてくれた。

「エンジュの紅葉はほんま綺麗やし凄いからちゃんと見るんやで!せや、あとジルチに頼もうと思った事あるねん」

「何でしょうか?」

「この子やけどジルチに任せよう思てな」

マサキさんはボールからイーブイを出した。

「このイーブイをですか?」

「せやねん。この子はどうもこだわり深いんかしてどの進化の石を渡してもそっぽ向きよるんよ」

「石で進化したくなかった…とか?」

「ワイもそう思って朝か夜に進化したいんやろかーって様子見てても進化する気ないみたいやし、ずっと外を見てるからこうして一緒に連れて歩いてたんやけどどーもピンときいひんみたいやねん」

マサキさんの話を聞いていると膝をとんとんと叩かれて下を見るとイーブイが私を見上げていた。
キリッとした顔つきで毛並みが綺麗だった。

「見た感じジム巡りしながら旅しとるんやろ?」

「まぁそうですね」

「やったらこの子をもっと広い世界見せてやってくれへん?一緒に旅してたら進化したくなる場所があるかもせえへんしな。そうゆう場所あるならワイも知りたい」

「私で良ければ喜んでこの子と旅をします。イーブイが進化したくなる場所で進化したら大発見ですからね」

イーブイを膝の上に乗せて頭を撫でた。

「おおきに!これ、ワイの番号とイーブイのボールな」

「こちらこそありがとうございます。これ、私の番号です」

お互いに番号を登録してマサキさんはまたコガネに戻っていった。
そして新しい仲間が増えた。

「よろしく。イーブイ!」

『ブイ!!』

「ぐふっ」

イーブイは私のお腹にめがけて強烈なタックルをしてきて将来有望だな、と体感した。


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