水の都の巫女 | ナノ


大空を舞う(ハヤト)

 ジルチが家に泊まって1ヶ月は経った。
彼女の助けもあってジムの修理は順調に進んでいた。
ジルチは炊事や修行の手伝いをしてくれるし褒めれば嬉しそうに笑う。共に過ごしているうちに妹のような感じがしてきた。
両親が亡くなって1人で暮らしていた生活が賑やかになったからかもしれない。

俺は早朝から少し身体を動かしてからポケモンと空を飛ぶのは気分がよく、キキョウシティの上空から見る日の出はとても美しい。
その体験をしてから早朝の日課にしている。
友人のマツバは「エンジュも悪くないから早朝にこっちまで飛んできたらどうだ?」と言われたがさすがに遠いので遠慮をした。

数日後、朝御飯を食べてるときにジルチが質問をしてきた。

「そう言えばハヤトさん、早朝にピジョットと空を飛んでますね。見回りか何かですか?」

「それも含めだがキキョウシティの上空から見る景色がいいんだ。空を飛びながら見る日の出は最高だよ」

「ほぉ…」

ジルチが早起きして軽く走ったり庭にある木々に飛び移ったりとアクティブなことをしているのを知っていた。
ジルチは木に登っているときに俺がピジョットと飛んでるのを見たのだろう。

「ジルチも来るか?」

「はい!」

「じゃあ翌日、キキョウシティの上空を飛ぼうか」

「楽しみにしてますね!」

翌日の早朝の日課にジルチが参加することになった。
ジルチは鳥ポケモンを持っていないから俺の手持ち…そうだな、ヨルノズクを貸そうと思った。


そして約束をした翌日の早朝になった。
自室で身体を伸ばしてからやや薄暗い庭に出るとジルチは準備運動をしていた。

「おはよう、ジルチ」

「おはようございます、ハヤトさん。今日はいい風が吹いてますね」

ジルチの言う通りで心地いい風が吹いていた。
上空だともう少し強くなりそうだが飛ぶには問題ないだろう。

「そうだな、じゃあ行こうか。ピジョット、ヨルノズク!」

ボールから2匹を出して俺はピジョットに、ジルチはヨルノズクに乗った。

「おぉ…!ふかふか…!ヨルノズク、よろしく」

ジルチはヨルノズクの首元を撫でた。
その様子を見てて気づいたことがもう1つあった。彼女はポケモンと打ち解けるのが早いことだ。
初めて俺の手持ちを見せた時、ジルチはドンカラスを撫でていた。ドンカラスは少々おっかないところがあるが初対面のジルチに自慢の胸毛を触ることを許したのは驚いた。

「飛べ!」

俺の合図で一斉に飛んだ。

「おぉ!いい眺めですね!!」

「感動するのはまだ早いよ。これからさ」

そう言った途端、太陽が出てきてやや薄暗いキキョウシティを明るくしていった。今日も綺麗な日の出だ。

「………!!」

後ろにいるジルチを見ると目を見開いて感動をしていた。

「わぁ…凄い……!綺麗!」

「凄いだろ?友人はエンジュも悪くないって言ってるけど俺はキキョウシティの日の出が好きだな」

「エンジュに行ったら1度見てみますね」

「あぁ、その時の感想をまた教えてくれ」

「もちろんです!」

俺たちはしばらく上空から見る景色を堪能してから地上に降りた。

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