水の都の巫女 | ナノ


32

 ヒワダジムの中は虫をイメージしたギミックだった。
さすが歩く虫ポケ大百科と言われるだけある…
それにジムトレーナーの双子ちゃんには恐れ入った。正式なダブルバトルをしたのは初めてで中々面白かった。
そして…ジムリーダーの元にたどり着いた。

「ぼくツクシ!虫ポケモンのことなら誰にも負けないよ!なんたって将来は虫ポケモン研究で偉い博士になるんだから!…というわけでぼくの研究成果見せてあげるよ」

「バトル!!いくよっマグマラシ!」

私は前夜に決めた通りマグマラシで攻めることにした。
そしてツクシが出したポケモンのストライクを見た瞬間、私は過去の記憶がフラッシュバックした。

「……ストライク……ロケット団、お母さん…!!」

私はあの時の光景を思い出し、冷や汗をかいて動けなくなってしまった。
マグマラシは私の様子がおかしいことに気づいて近づいてきた。

『クルルル!』

マグマラシはしっかりしろ!と言わんばかりに私に頭突きをしてきた。

「………っ!!マグマラシ、ごめんね…前向いて進むと決めたのに、ね……」

冷や汗を服の袖で拭いてもう一度ストライクを見た。
大丈夫、あのストライクとこのストライクは違う、と無理矢理思い込んで前を向いた。

「マグマラシ…勝つよ!!かえんぐるま!」

「とんぼがえり!」

ストライクのとんぼがえりとマグマラシのかえんぐるまがぶつかりあった。
お互いキツイ一撃を与えてフラついたものの、ストライクはとんぼがえりの効果で別のポケモンに入れ代わった。

「ダメージを与えれたのはいいけど無傷のポケモンと入れ代わられると辛いな…。大丈夫、マグマラシ?」

『クルル!!』

「うん、無理はしないでね。相手がトランセルとはいえ…手強いと思う。一気に決めよう」

「よーし!トランセル、いとをはく!」

「何としても素早さは下げさせない!かえんぐるまで焼き払って!」

マグマラシのかえんぐるまで糸を焼いて素早さを下げられずに済んだ。
そのあとはえんまく、スピードスターのコンボで攻めてトランセルに続きコクーンを倒した。

「マグマラシ、ありがとう。ストライクはライボルトに任せて」

マグマラシをボールに戻してライボルトを出した。

「あのストライクの物理攻撃が強いし速さはライボルトと五分五分かもしれない。短期決戦でいこう!」

「最後の1匹になっても虫ポケモンはしぶといよ!」

ジムトレーナー相手にライボルトのかえんほうしゃはちゃんと効いたけど覚えたばかりで精度が微妙だった。
ジムリーダーに通用するかどうかで勝負が決まる。

「ライボルト、10万ボルト!」

「ストライク、きあいだめだ!」

10万ボルトが当たってもストライクはびくともしなかった。

「ストライク!でんこうせっか!!」

ストライクのでんこうせっかは急所に当たり、ライボルトは突き飛ばされた。
ライボルトも同じように過去の出来事を思い出していた。
あの時、自分が立ち向かえる力があればジルチとジルチの母さんを守れたはず、力不足の自分に後悔をしていた。
だけど、今は違う!と踏み込んだ。

「ライボルト!!」

ライボルトはジルチの方に振り向いて頷いた。

「大丈夫!ライボルトは強いから自信を持って!!かえんほうしゃ!!」

ライボルトから放たれたかえんほうしゃがストライクを飲み込んだ。

(これで決まってくれたらいいんだけど……)

かえんほうしゃの中からきのみをくわえたストライクが出てきた。

「あれはオボンの実…!!」

「よく耐えたストライク!いいきずぐすりを使わせてもらうよ!」

ツクシはいいきずぐすりを使ってストライクの体力を回復させた。
ほぼ振り出しに戻って長期戦になるのを覚悟した。
さすがにこっちもきずぐすりを使わないと不利になると思い、鞄を漁るとライボルトに吠えられた。

「ライボルト、回復しなくていいの…?」

『ワウ!』

ライボルトの瞳は自信に満ちていた。

「そうか、私の言葉を信じているんだ…!ライボルト、かみなり!」

「でんこうせっかでかわすんだ!」

次々と襲いかかるかみなりをストライクはでんこうせっかで避けていってライボルトに詰め寄った。

「よし!ほうでん!!」

ライボルトから体毛に貯めていた電気をフィールド全体に解き放った。
ストライクはほうでんが当たり、動きが鈍くなった。

「今だ!かえんほうしゃ!!」

再びかえんほうしゃがストライクを飲み込んだ。
少し焼けたフィールドにはストライクがかえんほうしゃに耐えきれず倒れていた。

「うーん、ここまでか……」

「…勝った!」

結構ごり押しをしてしまい、2匹にはかなり無茶をさせてしまった。
そして私の中のストライクに対するトラウマは相当なものだったとわかった。

「2匹ともお疲れ様」

「あーあ…僕の研究もまだまだだ!うん!わかったよ。このバッジを持っていってよ!」

ジルチはツクシからインセクトバッジをもらった。

「ありがとうございます」

「それとこれを持っていって!わざマシン89の中身はとんぼがえりだよ!この技を使ったポケモンは攻撃したあと手持ちのポケモンと入れ代わる!どう?すごいでしょ!?」

「この技で苦戦しましたよ…」

「だね!そう言えばストライクを見たときの君は顔を青ざめてたけどどうしたの?」

ツクシはストライクを見たときの私が顔を青ざめてたのを気にしたようだ。

「いえ…ちょっと昔の事思い出しただけです」

「そうなんだ。それじゃ、お疲れ様!」

「はい、お疲れ様です」

私はヒワダジムを後にして今日中にコガネシティを目指したいけど一先ず回復するためポケセンへ立ち寄った。

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