アルフの遺跡調査(27話後)3
あなぬけのひもを柱に縛ったのを聞いて腰に巻いたひもをほどいた。
そのあとランプを持った2人が降りてきた。
石版があった部屋より妙な気配が多くなった気がするしどこからか視線を感じる。
「石版の間の下も他のと一緒のようね…。ここにも同じように床に文字が刻まれているわ」
クリスさんに言われて足元を見ると少し大きめにアンノーン文字が刻まれていた。
「……わたしたち…そとの ぽけもん ぞう つくるって書いてますね。像って石版があった部屋にもありましたよね?」
「さらっと読めるのね…。えぇ、あったわ。昔に生きていたポケモンに似せて作られていたわ」
「一体何のために作ったんでしょうね……」
「1500年前の歴史だから何か意味があると思うけどまだわからないわ。ただアンノーンが関わってるかも知れないわ」
辺りを見渡していると何か近づいてくる気配がした。
「何か…来る!」
「来るって何が……。あの黒いのは…あれはアンノーンか!?」
「ちょっ…数多すぎない!?」
奥から黒い塊が近づいてくると思えばアンノーンの集団だった。
アンノーン達から敵意を感じなくてもあんな大量にいると気味が悪かった。
そしてアンノーンの塊に私たちは飲み込まれてしまった。
「うわっ!!」
妙なノイズが聞こえ、意識が遠のいていった。
目を開けると見たことがない景色が広がっていた。
「クリスさん?シルバーさん?」
周りをいると思っていた2人がいなかった。それに鞄もなく、手持ちが装着されたベルトもなかった。
つまり手ぶらの状態だった。
「困った…ここはどこだろう?」
音もなくやや薄暗い街中で、人の気配もなく辺りを見渡しながら歩いていくと広場らしき場所に出た。
噴水の近くまで行くと変な感じがした。
「…噴水の水が……止まってる?いや、ここ全体が時が止まってるような感じがする!!」
走っても走っても風はなく、足音と息づかいだけが響いた。
広場から少し離れた場所に人らしきものが見えて近づいてみた。
本当に時が止まってるかのようにその人は動かなかった。そして表情が何かを見て驚いている様子だった。
「一体何を見て驚いて…」
その人の目線の方角を見ると階段の上で人とポケモンがいた。
気になって階段を上がるとそこには1匹のポケモンと私と歳が変わらなさそうな子が拘束されてフードを被った連中に拐われている光景だった。
「これは…何か起こった時の状況…?」
祭壇らしき場所に近づいた途端、音声だけが頭の中で流れた。
『シズク!ラティオス!!』『お母様ぁあっ!!』
『巫女様!!危険です!!』『シズク御嬢様とラティオスが何者かに誘拐された!』『儀式の最中だというのに!』
『こころのしずくがなければこの都は…!!』『もうおしまいだ!!』
「っ!!頭が…!」
悲鳴が絶えず聞こえ、頭が痛くなった。そして頭痛に耐えきれずその場に倒れた。
意識が途切れそうになったとき凛とした声が響いた。
『今の貴女には情報量が多すぎて頭が混乱をして仕方ありません。これは過去の場面を写し出したもの。水の都の悲劇、ですね』
「どういう、こと…」
『過去には知るべきことと知らぬべきことがあります。貴女の場合はのちの水の都の巫女として知っておくべき過去だったかもしれませんね』
「知るべき…過去。水の…巫女、もしかしてこの場面は両親の、こと…?」
『如何にも。あの都は私にも縁がある地…聞きたいことがあるならエンジュへ来なさい』
「いったい、何を…」
『―焼けた塔で待っています』
声が聞こえなくなったと同時に意識を手放した。
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