水の都の巫女 | ナノ


26

 32番道路から走ってようやくヨシノシティに着いた。息切れしながら29番道路へ行こうとしたら赤髪の少年が道の真ん中で立っていた。
無視して通りすぎようとした時、少年が喋りだした。

「お前…昔ワカバタウンの研究所に住んでいた奴だな?それに研究所のポケモン貰っているだろ?」

「…だから、何?急いでるから用があるなら後にしてくれる?」

私はこの少年が何が言いたいか興味がなかったので再び歩き始めた。

「お前みたいな弱い奴には勿体ないポケモンだぜ」

「なに…?」

バトルをしてもいないのに弱いと決めつけられて私はカチンときた。

「……何だよ。何言われてるのかわからないのか?……だったら仕方ない。オレもいいポケモン持ってるんだ。どういう事か教えてやるよ」

少年はボールを投げた。初対面だろうと関係ない、とりあえず喧嘩を売られた事に腹が立った。
私は白いボールを投げてライボルトを出して、相手が出したのはワニノコだった。
トレーナーがああいう態度なら手持ちのポケモンも変な自信を持って生意気だろうと思っていたけど、そのワニノコはそうじゃなかった。
妙に主人である少年に怯えている様子だった。

「何だ、研究所でもらったポケモンを出さないのかよ」

「やたらと煽るのね…売られた喧嘩は10倍返しで売り返すのが私。ワニノコには悪いけど恨まないでね、恨むのは相手の実力を見極めない主人よ。…ライボルト、かみなり」

私はそんなワニノコに気にしつつもライボルトにかみなりを命じた。かみなりは容赦なくワニノコに襲い、1発で気絶させた。
少年は無言でワニノコを戻して舌打ちをした。

「……フン!勝てて嬉しいか?」

「全く。こんな不愉快なバトル久しぶりだわ…。初対面の私に喧嘩を売るお前は何者?まさかロケット団の仲間?」

「誰があんな弱い連中の仲間だ…。オレが誰だか知りたいか?」

「(ロケット団のことを弱い連中と言った…?)半分興味はない」

「それは…世界で1番強いポケモントレーナーになる男さ!」

半分興味ないと言ったのに名前を名乗らず目標だけ堂々と言って私の横を通りすぎた。
その時、少年のポケットからトレーナーカードが落ちた。私は拾ったトレーナーカードに書かれた情報を見て顔をしかめた。
すると少年が戻ってきた。

「返せ!それはオレが落としたトレーナーカード!ふん……オレの名前を見たのか……」

「あ、認めるんだ。そりゃ見るでしょ。"半分"興味ないのだから」

少年は舌打ちをしてその場を立ち去った。

「カントー地方出身のソウル…ね。世界で1番強いトレーナーになるならわざわざジョウトへ来なくてもカントーでなろうと思えばなれるのに。…早く研究所へ行かなきゃ!」

私はもやもやしながらワカバタウンへ再び走り始めた。


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