水の都の巫女 | ナノ


20

 救急箱を取りに行って自室にある俺のポケモンたちを懐に入れた。
リーグからジルチを周辺が安全と確認取れるまでの間、出来る限りキキョウシティに留まらせて守ってほしいと言われた。
ワタルさんの口ぶりからして彼女のことを少なからず何かを知っているようだった。
リーグまで彼女のことを知っているとなると相当重要人物なのかもしれないと考えていた。
3日後の会議で何か聞き出そうと思う。

「晩御飯前だが茶菓子でも用意しておこう」

救急箱を片手に台所で茶菓子の用意をした。丁度昨日エンジュへ遊びに行ったときに買った羊羮があってよかった。
ジルチがいる部屋へ向かうと中から誰かと会話をしている声が聞こえた。

「…やっぱり2人は凄いですね。私も負けてられないです。キキョウジムの修理が終わったらヒワダタウンで2つ目のバッチ目指します」

「はい、頑張ります。それでは…」

会話が終わったらしく、少し間を開けてから部屋の襖を開けた。

「待たせたな。茶菓子を持ってきたから治療が終わったら食べてくれ」

「ありがとうございます!」

茶菓子と聞いてジルチは目を輝かせていた。甘いものが好きなのだろうか?
お盆をちゃぶ台の上に置いて救急箱を開けた。

「左腕を出して」

ジルチは袖口のボタンを外して腕を捲った。
ブラウスに血が滲むくらい出血していたから重傷だろうと思っていたが案の定、白くて細い腕をかなりずり剥いてて痛そうだった。
自分の傷口を見て「うわ、これは痛い」とぼやいていた。見てる俺も痛いよ…。

「消毒液をかけるけど…かなり滲みると思うよ」

消毒液をかけると傷口が滲みた痛みに堪えてジルチは悶えていた。
手早く傷薬を塗ったガーゼを付けて包帯を巻いてあげた。

「しばらく大丈夫だろう。あとは定期的にガーゼを変えないとな」

「ありがとうございます。今になって傷の痛みを感じはじめましたよ…」

ジルチは渋い顔をしながら「怪我はあまりしないでおこう」と言いながら袖を直した。
その様子を道具を救急箱に直しながら見ていた。
彼女をよく見ると表情が豊かで青色の長い髪を1つに束ねていることに気づいた。
帽子を深く被っていてバトルの時やロケット団奇襲時は真剣な表情と無表情だった。
そう言えば爆発のせいで聞き逃した質問を思い出した。

「爆発があって聞けなかったが君のバトルはどこで学んだんだ?」

「ほとんど独学です。昔住んでた町で友達とバトルをずっとしていて勝つための戦術をずっと考えていました」

ジルチは「いただきます!」と言って羊羮を一口サイズに切って食べた。
頬を緩ませて笑顔になったので気に入ってもらえたようだ。

「独学であの戦術を…なかなか見事だったよ」

「ジムリーダーに褒めていただけるとは…嬉しいです。でもピジョットの特性を見抜けなかったのは計算ミスでした」

ピジョットの特性…するどいめ。確かにえんまくを簡単に突破した。
えんまくからのコンボを考えていた彼女からしたら計算違いな結果だっただろう。
逆にするどいめがなかったらえんまくの中で何されるかわかったもんじゃない。

「ピジョットのするどいめがなかったらもっと早く決着をつけられていたな…」

「地上で戦う以上、空中戦が得意な鳥ポケモンをどうやったら地に降りるかを考えていましたがはねやすめで降りてくれたので決めるのは今しかない!ってなりました」

「それで周りの逃げ場をなくすためにひのこで囲ったわけか…」

周りを囲まれたら逃げ場は上しかない、攻撃する場所を1ヵ所に絞れば狙いやすい。それが彼女の狙いだった。
悔しいことに俺はまんまと彼女の策にはめられたわけだ。

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