水の都の巫女 | ナノ


11

 お母さんの部屋に入ると中は紙と本で散らかっていて、壁に大きな紙を貼って付箋やメモ書きがたくさんあった。

「お母さん…また片づけないで散らかしっぱなしじゃない」

マサラタウンに住んでいた時は足の踏み場がないくらい散らかっていたからこの状態はまだマシかもしれない。山積みの本を崩さないように机の下の引き出しを開けた。
中に長方形や正方形の箱が何個か入っていた。

「ん?私宛の手紙…?」

一番上にあった箱を取り出すとその下に私宛の手紙が出てきた。

[ジルチへ
この手紙を読む頃は私はジルチの側にいないでしょう。
なので、ここにある手紙で私たち家族の真相を知る事になります。ジルチが大人になった頃に話すつもりでしたが叶わなくなった今、文章で伝える事しか出来ません。
箱に入ってる技マシンや道具はお父さんからの餞別です。いつか旅に出るジルチの為に用意した物だそうです。 お母さんより]

「お母さん…まさかこうなる事が…?この箱2つは技マシンと道具が入ってる…うわ、お父さんが好きそうな技ばっかだ」

技マシンは…はかいこうせん、かみなり、だいもんじ、かえんほうしゃ等々と大技が多かった。いや、大技嫌いじゃないけどね。
道具は磁石、奇跡のタネ、木炭、あとはプレートが何枚か入ってた。
パンを食べてホットミルクを飲みながら手持ちに持たせようと思った物を分けて、あとは箱に直して長方形の箱を開けた。
中には日付だけ書かれた宛名がない封筒が数通と宛名にワタルと書かれた手紙があって、水色の封筒に私宛の手紙があった。

「これがお父さんの手紙…?そういえば家族の真相ってなんだろう?」

先に私宛の手紙を開けた。

[ジルチへ
小さい頃にホウエンで別れたままで顔を忘れてるじゃないかと思っている、お父さんです。
最初の母さんの手紙の通り僕ら家族についてジルチに知ってほしい事がある。
僕らはホウエンの遥か南の方にある水の都に住んでいた。
都の20年に1度の儀式の最中に正体がわからない悪い組織によって僕と母さんは捕まった。僕らは組織の研究の為に拐われてそこから逃げてきた。
そのあとにジルチが産まれたけど組織はジルチを含め、僕らを探し続けているから母さんとジルチをホウエンから遠いカントー地方へ逃げてもらった。
その際、カントー・ジョウトのチャンピオン、ワタル君に2人に何かあったら助けてほしい、オーキド博士に研究の手伝いをするからしばらく匿ってくれと頼んだ。
僕は組織の正体、出回ってる僕らの研究資料を消す為に各地を飛び回っては研究所の破壊、情報の抹消をしている。
あとは封印した水の都を守っている。

ちなみに…僕は水の都の護神として水の民に崇められたポケモン"ラティオス"だ。
ポケモンと人間の間に子供が出来るわけが、と思うだろうけど水の都を代表とする一族は水を自在に操る事が出来る能力を持っていた。
その一族の中で能力が高い女性が都の護神の花嫁として迎え、水の都の巫女として都の平和を祈るという掟のようなものがあった。
僕らはたまに人の姿になって都の民に混ざって生活をし、水と人、そこに住むポケモン達とそれぞれ争いもせず共に生きてきた。
つまりジルチ、君はポケモンと特殊な人間の間に産まれた子だ。]

私は手紙の内容があまりにも衝撃的で信じられなかった。
確かに普通の人と違って私はポケモンの技が使える。まさかポケモンと人間の間に産まれたからだと思いもしなかった。
だからロケット団は私にポケモン用の拘束道具を使ったんだ…ポケモンの技が使えるから。

「これが、私たち家族の真相…」

手紙の2枚目をめくると写真が2枚挟まっていた。
白い山に囲まれた白くて綺麗な街並みで、大きな木の下でお父さんと産まれて少し経った私を抱えたお母さんの写真と船場で撮ったラクライと小さい頃の私、お父さん、お母さんの写真だった。

「お父さん…お母さん……」

写真を見て涙が出た。また家族全員揃って欲しかったからだ。
2枚目の手紙には[家族写真はこれしかないけど大切な思い出だ。僕はいつも持ち歩いてる。ジルチも部屋に飾ってくれると嬉しい。 父さんより]と書かれていた。
他の手紙はお母さんとのやり取りの内容だった。恐ろしい事にポケモンの捕獲を強化した道具や薬品の開発があったとゆう内容が書かれていた。
あとは私の成長やラクライの事が書いてあって最後のやり取りは2ヶ月前だった。

「私が知らないところでお父さん達はずっと戦って守ってたんだ…。私も戦う…!旅をしながら組織について情報を集める。まずは私の素性を知ってたロケット団について調べなきゃ」

私は旅をしながらまだ知らない組織とロケット団について調べると決めた。もちろん、バッチを集めてチャンピオンリーグに行く。再会を約束した2人に会う為に、大好きなレッドに会う為に私は戦う。
1年近く遅れて旅に出るから2人はもうすでにリーグを制覇してそうだ。
オーキド博士に最近連絡してなかったからこの事を話すついでに2人の事を聞こう。
手紙を箱に直して引き出しにしまった。
お母さんの散らかった机の上に2つの写真立てがあって、私が手に持ってる写真と同じものだった。

「お母さん、お父さん…教えてくれてありがとう。お母さんの研究、続きやるから…おやすみ」

私はお母さんの部屋をあとにした。


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