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わたしたちは研究所を出て1番道路の前に来た。
この1歩で旅立ちと別れを告げる。そう思うと泣きそうになったけどなんとか堪えた。
「それじゃあジルチ。いってくる」
「いってくるぜ!」
「いってらっしゃい、レッドくん、グリーンくん」
2人が前へ進みだそうとしたとき、同時に手を引っ張られて3人一緒に1番道路へ踏み出した。
「っ!?」
当然、わたしは何が起きたかわからなくて驚いた。
「やっぱ3人一緒に1番道路へ入らないとなぁ、レッド!」
「もちろん。上手く一緒に踏み出せたね、グリーン」
どうやら2人が前から決めていたみたい。
「それにジルチ。オレたちのこと呼び捨てでいいんだぜ?」
「え、でも」
「いいから呼び捨て」
「…レッド!グリーン!冒険の第一歩、一緒だね……!!ありがとう!」
わたしは一緒に踏み出せた事が嬉しかった。呼び捨てで2人の事を呼んで少し照れくさかった。
「うん、ここで一旦お別れだけど元気でね、ジルチ」
「レッドも元気で」
「まだ泣くんじゃねーぞ?泣くのは再会のバトルでオレに負けたときだ!」
「えっそれはやだなんだけど!!」
「何でだよ!?」
こうしてわたしたちは笑い合って別れを告げた。
レッドは別れ際に「チャンピオンリーグで待ってる」と言って去っていった。
わたしたちの冒険は始まったばかり、辿り着く先でどんな風になっているか楽しみになってきた。
家に戻ると引っ越しの準備が完了していた。
「ジルチ。レッドくんたちともう大丈夫なの?」
「うん!一緒に踏み出したから大丈夫!わたし、引っ越したあと落ち着いたらジム戦に挑むの!あ、ちゃんと研究の手伝いするよ?」
お母さんと合流してこれからの事を話した。
「手伝いはたまにでいいわよ?その闘志が満ちた目を見ればわかるわ。バトルがしたくて仕方ないんでしょ?さ、トラックに乗ってジョウトのワカバタウンへ行きましょ!」
「船に乗ってジョウトへ行くんだっけ?」
「そうよ。着くのは明日の昼ぐらいと思うわ」
お母さんはポケットに入れていた紙を見て言った。
「研究所の2階にある部屋2つ貸してくれるそうだからウツギ博士に感謝しなきゃね。部屋にある本を自由に読んでいいんだって!」
「本当!?ウツギ博士にお礼言わなきゃ!」
引っ越しの旅路もジョウトの話題で退屈はしなかった。その途中でグリーンからイーブイもらって、レッドからは水の石をもらった事を話した。
ふと、お母さんはわたしの手首へ目線がいった。
「ジルチ。手首に巻いてあるリボンどうしたの?」
「ん?これはレッドからもらった箱に結んでたリボンを手首に巻いたの」
赤色のリボンが気に入って、これを付けてたらレッドが近くにいる感じがしたから手首に巻いていた。
「なら、髪に結んだら?ジルチの髪は母さんと一緒で青色だから赤のリボン似合うと思うわ」
「そうする!」
わたしは髪を1つにまとめてリボンで結んだ。
「どうかな?」
「うん、似合ってる」
満足げに頷いてこのリボンを大切に身に付けておこうと決めた。
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