27
オーキド博士の庭に着いた頃には空は茜色に染まろうとしていた。
庭で一番大きい木の近くまで行くとレッドくんは木にもたれて待っていた。
「ごめん、待たせた?」
「そんなことないよ」
レッドは深く被った帽子を被り直してもたれていた木から離れた。
「それで…話したい事って何?」
わたしは早速本題に入った。するとレッドくんは近づいてわたしの手を握った。
どうしたんだろと思って手元からレッドくんへと視線を戻すと今まで見た事がないくらい真剣な顔をしていて目が離せなくなった。
「ジルチ。ぼくがジムのバッチ8こ集めてリーグに挑戦して、チャンピオンになったら…」
「ぼくと付き合って」
そよ風が吹いて草木の揺れる音がいつもより大きく聞こえた。
わたしはびっくりしてしばらく反応出来なかった。まさか告白されるだなんて思いもしなかったからだ。
「ジルチ?」
「レレ、レ、レッドくんっその言葉、本当…?」
わたしは動揺してつい聞き返してしまった。
「本当。ジルチのこと好きだから」
"好き"と言われて顔がボッと熱を帯びていくのを感じた。今絶対顔が真っ赤になってる!ピカチュウのほっぺより赤くなってる!!と思っている。
顔を隠したいけど手はレッドくんに握られている上、視線をそらす事ぐらいしかできなかった。
そして告白の答えを返そうとした。
「レッドくん、あの、実は……わたしもレッドくんの事が、好き。大好きだから、その…」
「ジルチ、ありがとう」
レッドの感謝の言葉を聞いた途端、ぎゅっと抱きしめられた。
レッドくんの温もりが身体中に伝わってきて鼓動が早くなるのを感じた。お互い同じくらいの身長だと思っていたけど、いつの間にかレッドくんの方が高くなっていた。
恥ずかしさで思ってた通りに言葉が出なかったけどレッドくんはわかってくれた。
しばらく抱きしめられていて野原に2つ重なった影が夕陽で伸びていた。
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