水の都の巫女 | ナノ


11

 冷凍コンテナを出て暖かい空気を吸うと冷えた身体が少し暖まった。団員からアジトの場所を聞き出せなかったけど、トウコさん達の助けになれたからよかった。

「そうだ!北側を探してるトウコさんにジム戦に挑めるようになった事を伝えなきゃ」

「そうだね」

金網の前に停めた自転車に乗って北側へ向かうと、ジムの方にプラズマ団の集団が集まっていた。

「え…!?何でっ!?」

「ジルチ。トウコが走っていくのが見えたから僕らは少し離れた場所から様子を見よう!」

「う、うん!」

慎重に動こうと思い、ジムの隣にある高台へ行って木の影から様子を見るとゲーチスの姿が見えた。

「ヤーコンさん。初めまして。私、プラズマ団のゲーチスと申します。お世話になった同士を引き取りに来ました」

「いやいや、礼はいらんよ。あんたのお仲間がポケモンを奪おうとしていたんでね」

「おや、誤解があるようで。私共はポケモンを悪い人から逃がしているだけですよ」

「…嘘ばっかり」

「そうだといいがね。ワシは正直者故、言葉遣いが悪い。それに反してあんたは言葉は綺麗だが、どうも嘘臭くてな」

『おじさんの言う通りだね』

「だからってプラズマ団を見つけるまでジムに挑めないのはちょっとね」

ヤーコンさんは最初強引な印象だったけど、こうして見ると本当に正直者だとわかる。

「で、何だと言うんだ?」

「プラズマ団としてもホドモエシティに興味がありまして、ここにいる以外にもたくさんの部下がいるのですよ……」

「「脅しだ」」

こんなわかりやすい脅迫にヤーコンさんは顔をしかめて地面を踏んだ。

「……その言葉、嘘か本当かわからんが、戦わずして勝つとはね。大したもんだよ」

「えぇ!?」

チェレン君の隣にいたトウコさんがヤーコンさんの言葉に驚いた。

「フン!わかった。こいつらを連れて帰りな!」

「流石、鉱山王と呼ばれる商売人……素晴らしい判断力の持ち主であられる」

「……」

「では……そちらの七賢人を引き取らせていただきます……」

「ゲーチス様……。ありがとうございます……」

「良いのです。共に王の為、働く仲間……同じ七賢人ではないですか。それでは皆さん。またいつの日かお会いする事もあるでしょう」

こうして、捕らえた七賢人とプラズマ団員を引き取ったゲーチス達はホドモエを去っていった…。ヤーコンさん達が気になって私達はすぐにプラズマ団を追いかけなかった。

「お前ら悪いな。せっかくプラズマ団を見つけたのに」

「チェレンが見つけたのよね?何か言ってやりなさいよ!」

「まぁ、気を取り直してポケモン勝負といくか!あんまりワシを待たせるなよ」

「ちょっとー!!!」

ジムへ戻っていったヤーコンさんに叫ぶトウコさんの声はこっちまで響いた。

「お互いに町中での争いを避けたか」

「だからって、こっちの努力をムダにしていいの!?」

「仕方ないよ。それにしてもあのゲーチス。ただ者じゃないって感じだ」

「うん、そうね…」

「……さてと、僕はポケモンを鍛えてくる。あのヤーコンって人には絶対負けたくないからね。というか、完全勝利でジムバッジを貰うよ」

「アタシも!」

2人はジムから離れて5番道路の方角へ歩いていった。何だか腑に落ちない結果が悔しくて帽子を深く被った。

「次の町へ行こう」

「うん……次はフキヨセシティだね。ここから行くには電気石の洞穴を抜けなきゃ行けないし、その次のセッカシティはネジ山があるからどうする?」

タウンマップを見たレッドは私が被っていた帽子を取って指でくるくると回した。

「よし!モヤモヤとした気分を空を飛んでふっ飛ばそう!自転車はリザードンに持ちながら飛んでもらうから大丈夫だ」

そうと決まれば行動しようとなり、レッドは帽子を被ってリザードンを出した。

「リザードン。自転車で持ちながらで悪いけど、いつもより高めに飛んでほしいんだ」

「イッシュにいる間、自転車持ちながら飛ぶ機会がまたあると思うからよろしくね」

リザードンは任せろと言わんばかりに右手で胸元を叩いて、私達は彼の背中に乗って大空へと飛び立った。

『わぁ…!雲が近いよっ』

「結構高く飛んだね」

翼を大きく羽ばたかせて、あっという間に雲の近くまで飛ぶとレッドが後ろに振り返った。

「ここなら誰にも見えないからジルチが思いっきり空を飛んでも大丈夫だ」

「えっ」

「だってモヤモヤしてたら大爆発しそうだし、こういう時は発散しよ?別にバトルでもよかったけど僕らがやったら目立ちそうだし……」

「……」

『ジルチ!レッドの言う通りだよっ波導がモヤモヤ〜ってしてるからマルマインみたいになるよ?』

「マルマインみたいに大爆発しないから大丈夫!!……って言いたいけど、せっかくだから久しぶりに飛ぼうかなっ」

「うん!その方がいい」

レッドの背中から離れて私はリザードンから飛び降りた。

「リオル!しっかり服に掴まっててっ」

『うん!』

私は息を大きく吸ってから体内にある力を放出して翼を広げると急降下が止まって滞空した。

「よしっ!このまま行こうっ」

「町が近づいたらリザードンに乗ってきて」

「わかった!」

『ジルチのつばさってキレイだよね!お日さまの光を受けたらキラキラーってしてる!』

「ありがと!」

お父さんと同じ形をした翼は半透明だけど、光を反射すると透明に見える。
大空の風を受け、腕を飛行機のように伸ばして次の目的地フキヨセシティへと向かった。


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