水の都の巫女 | ナノ


20

 晩御飯食べ終わったあと、わたしは部屋のベッドの上で座りこんでいた。
ジョウトへ引っ越す話…お母さんの為だから強がってみたものの、本当は辛くて泣き叫びたかった。
それにこの事をレッドくんたちに言わなきゃいけない。
いつジョウトに引っ越すのかは知らないけどせめて2人が旅立つのを見届けたい。

「はぁ……カントー制覇してチャンピオンリーグ挑みたかったなぁ」

ため息と共に出た独り言が薄暗い部屋の中に消えた。

「あれからあの子に会えてないしこの事を伝えたかったなぁ」

あの時もらったお花の冠はドライフラワーにしてドアに飾っている。

「ピカチュウたちにも伝えなきゃ…」

今思えばこの数年マサラタウンに住んでていろんな事あった。
それはかけがいのない思い出…その場所を離れるのは心苦しかった。

「明日、2人に会えたらこの事を言おう。上手く言えるかわからないけど」

窓から見える満月を見てふとレッドくんの事を思い浮かんだ。

「レッドくんに…会いたいな」

どうして?と聞かれると答えに困るけど、わたしはレッドくんの事が好き。グリーンくんも好きだけどレッドくんとは違う好きだと思う。
レッドくんと2人で遊んだ時、少しドキドキしたけどわたしから手を繋いでみた。
しっかり握ってくれて安心したし、帰りは家まで送ってくれた上、レッドくんから手を繋いでくれて嬉しさと恥ずかしさで顔が真っ赤になりそうだった。

「引っ越す前に想いを伝えようかな…でもフラれたらどーしよぉっ!」

横にあった枕を抱き抱えて悶々とした。

「〜っ!とりあえず、寝よう!」

バッと枕を横に投げて枕の近くに置いてたピカチュウのぬいぐるみを抱きしめながら布団に潜った。


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