04
彼はもう1度お礼を言うと傷薬を買い忘れたと言ってそのまま階段を下りていった。
「ジムに挑む前はしっかり準備しとかなきゃ」
「気づいたら傷薬切らしてたりするからね」
「あるある!ね、1階の展示をもうちょっと見ていい?」
「いいよ」
アーマルドの全身が綺麗に残った化石や他の展示品を見ていると入口周辺が騒がしくなってきた。
「ちょっとアンタ達!おふざけはよしとくれ!!」
「何かあったみたいだ!」
「行こう!」
女性の大声が聞こえてきたから入口の方へ駆けつけるとプラズマ団が何人かいた。
「プラズマ団…!」
「ジルチに僕の後ろに隠れて」
「…うん!」
レッドの後ろに身を隠してプラズマ団と女性の様子を窺った。
「来たか、ジムリーダー。我々プラズマ団はポケモンを自由にする為、博物館にあるドラゴンの骨をいただく」
「我々が本気である事を教える為、あえてお前の前で奪おう」
「では、煙幕!」
「「!!」」
1階が煙幕で視界が悪くなって周りが更に騒がしくなった。
「プラーズマー」「プラーズマー」
煙幕が辺りに立ち込め、変なセリフを言い残していったプラズマ団は姿を消し、ドラゴンの頭部がなくなっていた。
「!」
「ドラゴンの骨が!」
「なんてこったい……」
「あっあっ!?追いかけないといけないですよね」
ジムリーダーのアロエさんは血相を変えて外へ出ていった。
「ジルチ!奴らを追いかけよう!」
「うん!奴らは……」
波導でシッポウシティ周囲を感じているとヤグルマの森の方面に走り去る連中を見つけた。
「ヤグルマの森へ行った!」
「行こう!」
騒ぎで入口が混雑していたけど人混みを掻き分けて博物館を出た。
外へ出ると後から副館長が慌ただしく駆けつけてきた。
「あの骨はアロエが大好きなもの……。あの泥棒……プラズマ団って一体何者ですか?ドラゴンの骨を奪ってどうするつもりでしょう?」
「自分達の行動が本気なのを証明するだけで盗んだとは思えない…」
何か、別の目的があると思った。
「泥棒達のあの大胆な行動……まるで自分達のしている事が正しいと信じているみたい」
「馬鹿馬鹿しい…!アロエさん、私達はヤグルマの森へ逃げたプラズマ団を追いかけます!!」
「え、アンタ達は……?」
「通りすがりの観光客!」
レッドと一緒にヤグルマの森へ行こうとしたら鼻歌が聞こえてきて、その方角へ向くとその人はアロエさんに話しかけてきた。
「やあ、アロエねえさん。何かいい化石は見つかったかい?」
「アンタ、また行き詰まったのかい?」
「知り合いですか?」
「こいつはこう見えてもヒウンジムのジムリーダーでアーティっていうんだよ!」
「……んうん?何となく気分転換かな?でさ、何となく大変そうだけどひょっとして何かありまして?」
「そうなんだよ!!展示品を持っていかれてさ!」
アロエさんがアーティさんに事情を話してるとジム戦に挑戦しにいった女の子やその友人達が駆けつけた。
「ねえねえトウコ。みんな集まってどうしたの?」
「……トウコ、何か問題でも?」
「ちょっと!アタシが何かやらかしたと思ってる?!」
「トウコまた暴れたの?」
「トウヤまでそんな事言う?!」
収集つかなくなりそうだから先に向かおうとしたらアロエさんに止められた。
「何だい何だい?この子達は……?アンタの友達かい?」
「いえ、その子達とは全く関係ないです…」
「アタシの友達よ!ベルにチェレン!こっちはトウヤ!」
「で、アンタ達は?」」
「私はジルチ。ホウエン地方から観光しに来たトレーナーです」
「僕はレッド。ジルチと一緒に観光しに来ました」
「ベルにチェレン……ジルチにレッド……。なるほどトレーナーなんだね!それなら手分けするよ。あたしゃこっちね。そしてアンタ達!」
アロエさんはレッドと他の3人を指差した。
「レッド、チェレンとベルにトウヤは博物館に残ってちょうだい!で、アーティとジルチ、トウコはヤグルマの森を探しておくれよ!」
「えぇ!?」「!?」
ここでレッドと分けられるとは思わなかったから声をあげた。
「いい?アーティ。アンタが案内してやんな。じゃ頼んだよ!」
アロエさんはヤグルマの森と反対側のゲートの近くへ向かっていったからここは大人しく指示に従う事にした。
「さてさて……。君……ジルチさんとトウコさんだっけ?」
「はい」「そうよ!」
「じゃあ行こうか。泥棒退治とやらにさ」
アーティさんは先にヤグルマの森の方角へ行ったから私もすぐに向かおうとした。
「ジルチ」
「うん、わかってるよ。勝手な事はしないから」
「じゃあ後で!」
レッドとハイタッチをして私はトウコさんと一緒にアーティさんの後を追いかけた。
森と聞いてたからウバメの森やトキワの森のイメージを浮かべていたけど意外と整備されていた。
「この先がヤグルマの森だよ」
「アーティさん。この先にプラズマ団が逃げていきました」
「確かにここに逃げられると厄介かもね」
「えー!」
一緒にヤグルマの森を歩いてるとアーティさんは立ち止まった。
「あのね。ヤグルマの森を抜けるには二通りあるんだ。真っ直ぐ行く道と森の中を抜ける道。ボクはこのまま真っ直ぐ進んであいつらを追いかけるよ」
「いなかったらどうするのよ?」
「いなかったとしても逃げられないよう出口を塞ぐつもりさ。君達はこっちにルートにプラズマ団が隠れていないか探してくれないかな」
「任せてください」
『森の中で隠れ鬼ごとかオレらの得意分野やな!』
そんな事を得意分野にした記憶にないけど私は波導が使えるし、森の雰囲気はリーフィアに任せておけば大丈夫なのは確か。
「トレーナーも多いけれど基本一本道だから迷う事はないよ。きっと」
「きっと……?」
最後の一言が気になってしまった。
「それじゃあアロエ姉さんの為にやりますか!」
「はーい!」
トウコさんの元気な返事を聞いたアーティさんは真っ直ぐの道へ走っていった。
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