03
シッポウシティに着き、ポケセンで休憩してからポケモン博物館へ行く事にした。ポケナビの情報で博物館の展示内容が少し紹介されているからレッドと一緒に見ていた。
「入口に入った所にドラゴンの骨が展示されてるんだって」
「へえ…化石も展示されてるって」
「化石かぁ…。イッシュでしか見かけない化石ポケモンがいるかもね」
「そうだね。そろそろ博物館行く?」
「うん!気になるものがあるなら直接見に行かなきゃ気が済まないよっ」
『なぁジルチ。そこの森まだ行かへんの?』
「博物館の後でね?」
『森…』
リーフィアが呟いてるのを聞きながらポケナビをポケットに入れて立ち上がった。ここに訪れているトレーナー達のポケモンを見て新鮮な感じがした。
「イッシュのポケモンを初めて見たけど性別以外で似た特徴の子もいるんだね」
「サンヨウシティで見たあの3匹がそうだった」
「そうそう!」
サンヨウシティでレストランだと思って入ったらまさかのジムでいきなりジムリーダーに勝負をしかけられた。事情を話すと食事の前の勝負という事でジムリーダーの3人とバトルをしてから美味しい料理を食べていった。
「それぞれのタイプで役割分担してたよね。それに料理が得意そうな―」
レッドとイッシュ地方のポケモンについて話しながらポケモン博物館に入ろうとしたら中からNが出てきた。
『ジルチ!またあの坊主やで!』「!」
「…!」
彼も私達に気づいたのかはや歩きで歩み寄ったのに対して、私は反射で後ずさってしまった。
「ボクは……誰にも見えないものが見たいんだ。ボールの中のポケモン達の理想。トレーナーという在り方の真実。そしてポケモンが完全となった未来……。キミも見たいだろう?」
「うーん…ポケモンとトレーナーの絆があって、野生ポケモンとも和解して手と手を取り合う未来なら見たいけど…」
エンテイとライコウのような人との関係が改善されたり、今後そんな事がなかったらいいのにと思った。
「そうかい。では、ボクとボクのトモダチで未来を見る事ができるかキミで確かめさせてもらうよ」
「バトルって事かな!」
『ジルチ!ぼくがいく!』
「わかった!」
リオルは私の肩から降りると、Nがボールから出したのはマメパトというポッポ達に近いポケモンだった。
「でんこうせっか」
「かわしてブレイズキック!」
素早く近づいたマメパトをかわして後ろからブレイズキックをするとマメパトは1発で気絶した。
「ん…?」
次に出てきたポケモンも、その次に出てきたポケモンも近くの道路で見かけたポケモン達だった。実力差があまりにもあったから、リオルは技を使わずに1発で気絶させるくらいの力で叩いてバトルを早々に終わらせた。
「まだ未来は見えない……。世界は決まっていない……」
「未来は見えない……?」
マツバさんの千里眼を持っているかのような口振りに私は警戒した。マツバさんの千里眼には助けられたけど今回はそうじゃないかもしれない。
「今のボクのトモダチとではポケモンを救いだせない……。世界を変える為の数式は解けないと……ボクには力が必要だ……。誰もが納得する力……」
「す、数式…?」
誰もが納得する力…つまりチャンピオンのような強いトレーナーになるという意味かと思っていたらNは私達の横を通りすぎた。博物館の前にある角を曲がる時に彼は呟くように言った。
「……必要な力はわかっている。……英雄と共にこのイッシュ地方を創った伝説のポケモン、レシラム!ボクは英雄になり、キミとトモダチになる!」
「……」「……」
早口で話して颯爽と去る彼に私達はまたもや呆然としてしまった。去り際に言った意味深な言葉に私は少し胸騒ぎがした。
「彼、伝説のポケモンと友達になるって言ってたけど大丈夫かな」
「うー…ん」
私は縁があって数々の伝説・幻のポケモンに会ったけど、普通は伝説のポケモンに会うなんて難しい。仮に会えたとしても圧倒的な力の前に成す術がないと思った。
「とりあえず中に入ろっか?」
「そうだね」
目的のポケモン博物館に入って、紹介ページに載ってたドラゴンの骨の展示を見てたら男性が独り言を言い始めた。
「うーむ!この骨格はいつ見ても……ホレボレしますな。……!]
「!」
ふと、骨と骨の間でその男性と目が合ってしまい、彼は目を細めて微笑むと私達に近づいた。
「どうも。私、副館長のキダチです」
「こんにちは。私はジルチです。彼はレッド」
「こんにちは」
石マニアならぬ骨マニアかと思ったら副会長だった。
「折角いらしたのです。館内を案内しましょう!」
「ありがとうございます」
キダチさんは再び大きな骨格の前に行った。
「こちらの骨格……ドラゴンタイプのポケモンですね。恐らく世界各地を飛び回っているうちに何らかの事故に遭って、そのまま化石になったようです」
「……見た感じカイリューの化石っぽい。ほら、カイリューの額にある角が綺麗に残ってるよ」
「ほんとだ」
今でも生息するポケモンの化石を見て次は隕石の前へ案内された。
「この石はすごいですよ。隕石なんですよ!何かしらの宇宙エネルギーを秘めています」
「……」
その宇宙エネルギーはホウエンを襲った巨大隕石と似ている。あまり凝視してたら触角が出てきて変な動きをする何かが出てくるんじゃないかと思った。
次は古い石の前へ案内すると思ったら通りすぎようとしていた。
「…副会長、この石は?」
「ああ、こちらはただの古い石です。砂漠辺りで見つかったのですが、古い事意外には全く価値がなさそうな物でして……」
「……」
「ただ、とてもキレイですので展示しております」
「そうなんですね…」
確かに綺麗な石だとは思う。古さだけじゃない雰囲気、何か秘めたものを感じ取った。次は何を案内してくれるのかと楽しみにしていると副会長は階段を上がって立ち止まった。
「この先がポケモンジムとなっております。1番奥で強くて優しいジムリーダーが待ってます。ちなみに、ジムリーダーのアロエは私の奥さんなのです」
「へえー!」
ポケモン博物館とジムが一緒の施設なのは知ってたけど、その副会長とジムリーダーが夫婦とは知らなかった。
「挑まれてはいかが?」
「んー今はジムバッチを集める予定はないのでまた今度にします」
「左様でございますか。機会がありましたら是非」
「ありがとうございます」
確かシッポウジムはノーマルタイプのジム。ノーマルタイプと言えばコガネジムのアカネさんのミルタンクを思い出して鳥肌が立った。
「…ジルチ大丈夫?寒いの?」
「ううん。大丈夫」
『中が寒いんやったら外に出たらええんちゃう?』
「……さりげなく外に出るように誘導してるでしょ」
『んな事あらへんで?』
リーフィアは誤魔化す為に草笛を吹いていると階段を駆け上がる音がした。
「いっち、番っ乗りーっ!」
「トウコ、足早いよ…!!」
「あんたに負けるわけにはいかないからねー!じゃ、お先にジム戦してくるわね!」
階段を駆け上がっても息を切らさず元気のいい女の子はそのままジムの中へ入っていった。
「はぁ、はぁ…っ運動になるとトウコに敵わないなぁ…」
『自分めっちゃバテてるやん』
「そうだね…。君、大丈夫?」
「おいしい水、いる?」
肩で息をする彼を見てて心配になったからレッドはリュックからおいしい水を取り出した。
「あ…ありがとう、ございます…!」
受け取ったおいしい水を勢いよく飲んで彼は息を大きく吐いた。
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