02
私達の元に駆けてきたのは黄緑色の長髪に黒い帽子を被った青年だった。私とリーフィアを交互に見て、何か信じられないものを見たような表情をしていた。
「キミのポケモン、今話していたよね……」
「!!」
「最初は勘違いだと思っていたけどその反応はボクの勘違いじゃなかった」
『な、なんや坊主!コガネ人並みの早口で喋っとるけどジルチにそれ以上近寄らんとって!めっちゃビックリしてるやん!』
「彼女の名前ジルチなのか。ボクの名前はN」
「エヌ…?」
妙な名前…というよりどっかで見た事のある名前のはずなのに思い出せなかった。
「僕はレッド。僕らに何か用?」
リーフィアと同じようにレッドも私の前に出た。いきなりポケモンと話していたと言ってきて、リーフィアの声を聞いた彼は私の名前を知った…警戒をするのは当然。
「随分と楽しそうに話していたから気になったんだ。キミ達、彼女達と居て幸せかい?」
『当たり前やん!何言ってんの?』
『ぼくも幸せだよ!それに大好き!』
『2人と一緒だといろんな場所に行けて楽しい!』
「そんな事を言うポケモンがいるのか……!?」
「普通に、いるけど…?」
3匹の言葉に彼は驚いていた。彼の周りにはそう言ってくれるポケモン達がいなかったのだろうか…。
「モンスターボールに閉じ込められている限り……ポケモンは完全な存在になれない。ボクはポケモンというトモダチの為、世界を変えねばならない」
Nは早口で言ってどこかへ立ち去っていった。あまりの突然の出来事だったから私達は呆然と立ち尽くしてしまった。
「彼は一体…?」
「ジルチと同じようにポケモンの言葉がわかるみたいだけど」
「そうだね。それに…凄い使命感を背負ってる感じがした」
ポケモンの事を友達と言っていたのとその言葉に何か使命感を感じた。さっきのプラズマ団の演説に強く共感したのか、それともポケモンの為に世界を変える気なのか。
「……とりあえずシッポウ行こっか?」
「だね。ポケナビのニュースで最近古代の何か発掘したみたいだよ」
何だか彼とはまた会いそうな気がすると思いながら、私達はシッポウシティへ向かった。
ジルチ達の前から去った彼はゲーチスの元へ帰ってきた。
「私の演説はいかかでしたか?」
「人々はポケモンの解放という考えをするようになったと思う」
「それはそれは我々の夢へ1歩近づきますでしょう。……それとは別に何かいい事がありましたか?」
ゲーチスはNがいつもと違う様子を見せたのに気づいた。
「あぁ。街で不思議な子とポケモンに会ったんだ。ボクと同じようにトモダチの声が聞こえてそのポケモン達と凄く仲がよかった。名前はジルチ」
「!!」
「知ってる?」
「いえ、存じませんよ」
「じゃあボクはトモダチを探しに行くから」
「はい、お気をつけて」
Nがいなくなったのを確認したゲーチスは1人微笑んだ。
「わざわざ彼女から来るなんて好都合です。我々も野望の為に動くとしましょう…」
ゲーチスが椅子から立ち上がると、何処からともなく白髪の3人組が現れた。
「ダークトリニティ。逃げた鳥の小鳥が帰ってきました。娘の監視をしなさい。先日の失敗を繰り返さないように」
「御意」
ダークトリニティは返事をしてその場から消え去った。
「彼女にはイッシュ地方征服の為に働いてもらいますよ。それまでに準備をしなくてはいけません」
ゲーチスは不敵な笑みを浮かべて部屋を出た。その会話を盗み聞く者がいると知らずに……。
prev / next