水の都の巫女 | ナノ


21

 リシアさん達は満足そうな顔をしてトクサネへ帰っていった。あのバトルの余韻に浸りながら家でお茶会をしてると、観戦していたグリーンが興奮気味で話しかけてきた。

「ジルチ、あのメガシンカってヤツすげぇな!?バトル中しか進化できねえのか!?」

「バトルがメインだけどラティアスが飛ぶ時でもメガシンカしてたからお互いの意思次第じゃないかな?」

「へぇ…!レッドのリザードンがメガシンカできるならカメックスもできるのよな?」

「どうだろ?私もまだ調べてる最中だからわからない事だらけだよ」

「気になるならオーキド博士に聞けば?」

「それだ!!!」

グリーンはポケギアを取り出して早速オーキド博士に連絡を取った。私達に聞くよりオーキド博士に聞いた方が早かったんじゃ…と心の中で思った。

「―え?コガネに?すぐ行くからその人に連絡しといてくれよ!じゃ!!」

「どうだった?」

「カロス地方にいるプラターヌ博士って人が研究中らしくって、カメックスもメガシンカするってよ!!」

「よかったね、グリーン!」

「あぁ!じーさんもメガシンカが気になってるからカロス地方へ勉強しに行けって言われたぜ」

「カロス地方…確か結構遠いよね?」

ポケナビで地図を見たら飛行機で何時間もかかる距離だった。

「その前に、メガシンカについて取り扱ってる店がコガネシティにあるらしいから今から行ってくる!」

「行ってらっしゃい!またバトルしようね」

「次はオレもメガシンカを使いこなしてジルチに勝つ!もちろんレッドにもだ!」

「勝てるといいね」

「絶対に勝つ!!そしてオレ以外に負けるなよ!」

「もちろん!!」

グリーンと拳と拳を当てて別れを告げた。久しぶりに合っていっぱい話をして、バトルもしたけど少し寂しさがある。

「また会える日を楽しみだね」

「そうだね。グリーンの事だからメガシンカをすぐ使いこなしそう」

"おい、ジルチ!レッド!オレもメガシンカ使えるようになったぜ!だからバトルしろ!!"

そんなセリフを言ってきそうと思ったらくすりと笑ってしまった。
グリーンも帰ったから賑やかだった室内はいつもの雰囲気に戻った。

「……何だか寂しくなったね」

「ここ数日お客さんが多かったからね。ジルチ、これからどうするんだい?」

「私は…私達はイッシュ地方へ行くよ」

「イッシュ地方……?」

お父さんが一体どの辺り?という顔をしたからポケナビで地図を見せて、カロス地方と同じくらいホウエンから遠い地方だと伝えた。

「何か探し物かい?それとも旅かい?」

「1つ目に近いかな。……奴らの組織を調べたら本拠地がイッシュ地方ってわかったの。だから、奴らが私達に関わらないよう組織を―」

壊滅させる、と言おうとしたらお父さんがテーブルを思いっきり叩いた。その震動でカップに入ってた紅茶が少し溢れてしまった。

「ダメだ…!危険すぎる!!ジルチ…いくらバトルが強いとはいえ、レッドが一緒とはいえ!奴らが、敵がいる地方へ乗り込むのかっ!!?」

「乗り込む!!お父さんと仲間達がホウエンで平穏な生活をする為に!今までお父さん1人で戦ってきた…ワカバタウンを旅立つ時に私も戦うって決めたからッ!」

私を守る為に亡くなったお母さん、困った時に助けてくれたハヤトさん、ワタルさん。水の巫女としてアドバイスや都の事を教えてくれたマツバさん、スイクン。加護を授けてくれたホウオウとルギア。ロケット団に拐われた時に助けてくれたレッド、グリーン、ヒビキ君。

「いろんな人達、ポケモン達に助けられて今の私がいる!奴らとの決着をつけなきゃ…せっかく復興した都がまた悲しみの色に染められてしまう!!だから私達は戦う!」

「…………」

「ジルチのお父さん。絶対に組織の手からジルチを守ります」

「…………」

『ぼくもいる!レッドの言ってること、ほんと!!』

リオルもお父さんを説得しようと必死になって訴えた。お父さんも奴らを野放しにしたまま現状維持するのを望んでいないはず。ただ、あまり都を離れる事ができないからこうして追い返すしかないのだ。

「全く、言ったら意地でも曲げないところ…誰に似たんだか」

「……?」

お父さんは窓を開けて外を見ると、キャモメの鳴き声や風が吹く音がリビングに入ってきた。

「そこまで言うなら止めないけど…危険だと思ったらすぐに帰ってきなさい。お父さんと約束」

「お父さん…!約束する!!」

「『(約束できてない気がする……)』」

少し渋々だけどイッシュ地方へ行くのを許してくれた。レッドと前からイッシュ地方へ行くのを決めていたからすぐに出発の準備をした。


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