水の都の巫女 | ナノ


19

 ラティオス達の激しい遊びで疲れきったワタルさんとカイリューは先にルネに戻っていった。流石のドラゴン使いでも彼らのペースに合わせるのは厳しかったみたい。

「体力に自信がありそうなワタルさんをあそこまでフラフラにさせるなんてあの子達はどんな遊び方したの…」

「窓から見たら常に空中に滞空してた気がするが…見なかった事にした」

「ハヤト羨ましかったんじゃないの?空飛べるよ?」

「あんな絶叫系な飛び方は理想じゃない」

「……もしかして、私基準にしてるのかな……」

私も飛べるからあの子達に合わせてたけど、それは間違ってたかもしれない。

「しっかし…しばらく会わないうちにジルチ変わったよな?」

「どこが?身長は少し伸びたと思うけど?」

「なんつーか遠くなったというか先を越されたというか」

バトルをしてないからだと思うけどグリーンに言われてあまりピンとこなかった。

「ま、それでもオレはジルチに負けねーけどなっ!」

「だったら明日バトルする?」

「いいじゃねえか!」

「久しぶりに3人でバトルする?」

「いいよ!リーフィアが身体動かしたくてよくリオルと戦ってるからリーフィアでいくよ」

「じゃあ僕はエーフィ」

「その流れならオレはサンダース!」

3人でバトルの話をしたり、他の人達はこれからどうするかを話しているとハヤトさん、マツバさんは一泊して帰ると言った。ミクリさんはいつも通りルネに戻るけどぼんやりと外の景色を見ているリシアさんのお父さんはどうするのか気になった。

「……(そういえばリシアさん、お父さん置いていったけどよかったのかな?)」

『ジルチ!外のニョロボと遊んでくる!』

「いってらっしゃい!日が暮れる前に帰ってきてね」

『うん!』

リオルが外に遊びに行ったのを全員が見届けた後、お菓子を食べていたリシアさんのお父さんがテーブルに肘を置いた。

「突然やけど、リシアがまた来るまでここおったらあかん?」

「構わないよ。向かいの家が空いてるから自由に使っていいし、ご飯はこっちで用意するから時間になったら呼びに行くよ」

「ホンマに!?食事付きとか最高やん!おおきにーっ今は茶菓子食べたいからここにおるわ!」

「ごゆっくりどうぞ。君は面白い人だから気に入ったよ。少し遠いけど君の部屋をここと繋いじゃおうか?」

「そう言われると嬉しいわ!せやけど俺の部屋は先約がおるからあかんねん…ごめんな?」

「それは残念だ。そうそう、もし僕ら以外の人を見かけたら知らせてね」

「何かあるのか?」

お父さんの言葉にハヤトさんは疑問に思ったのか質問をした。

「不定期にやって来るちょっと厄介な侵入者を迎撃しないといけないので…。あ、たまに難破船が流れ着く事もありますけどね」

「相変わらずジルチの所は複雑だな……」

ハヤトさんの言葉に私は苦笑いをするしかなかった。実際に騒動があった時も奴らはこの近くに来てたとポケモン達が教えてくれた。巨大隕石の騒動が落ち着いたからそろそろ私も動こうと思う。

「解決するまでは仕方ないですよ。それ以外は安全ですのでご安心を!」

「ドラゴン使いの彼を見る限りじゃあまり安全とは言えないと思うが?」

ミクリさんはくたくたになったワタルさんの事を思い出して、外で飛び回っているラティオス達を指さした。

「加減をするよう伝えておきます…」

「でも育ち盛りで力が溢れるから身体を動かさなきゃ気が済まないんだよ」

「あー、それわかるわ!子供って体力あり余ってたらむっちゃ動きよるから危なっかしいんよ。うちのリシアなんて路地裏を走り回ったり、壁を蹴って三角飛びとかしとったもん」

「ジルチもそうだったよ」

そうだったかな…と紅茶を飲みながら思ったけど、森の中をポケモン達と一緒に飛び回っていた事を思い出した。

「同じ娘を持つ父親やからサフィラスとええ話ができそうやわ。今夜、月見酒でもせえへん?」

「悪くないね。今日はシシコ座流星群が見れるから神殿の方で見ようか!」

「おっええやん!」

「巨大隕石や空の柱の事ですっかり忘れていたよ。…たまにはルネ以外の場所で見るのも悪くない、か」

「レッド、流星群だって!」

「初めて見るね」

「じいさんと姉ちゃんにお土産話ができるぜ!」

シシコ座流星群の話題でしばらく話しているうちに外が暗くなってきた。私達はシシコ座流星群を見る為に神殿の方へ向かうと湖の中央にスイクンが立っているのが見えた。

「スイクン!」

『巫女、お久しぶりですね』

「巨大隕石の件、ありがとう!またジョウトから来させちゃったね…」

『気にしなくてもよいのです。都の危機となればすぐに駆けつけると決めてますから』

「本当にありがと。そうだ、ライコウ達にもお礼を伝えてくれる?」

『―その必要はない』

「!!」

声がした方角を見るとライコウとエンテイがいた。

「2匹共、助けてくれてありがとう」

『フン』

『勘違いをするな。スイクンが血相を変えて走り出したからついて行っただけだ』

相変わらず素直じゃない返事をする2匹だけど私は嫌いじゃない。何故なら2匹から敵意を感じないからだ。

『我らは帰る。こんな妙な場所は好かん』

「おや、お気に召さないかい?」

『人とポケモンが共存する民…我らには理解できぬからな』

「君達もいずれ思い出す時が来るよ」

『…フン!』

お父さんが話しかけにいったけど2匹は早々に去っていってしまった。

「素直じゃないけど心のどこかで人に期待しているところがあるんじゃないかな」

「そうだね。……あ!」

湖に一筋の流れ星が流れていくのが映って夜空を見上げたらさっきの流れ星を追うようにいくつもの流れ星が現れた。

「……綺麗」

「湖の水が鏡のように夜空を映し、天と地に美しい光景が広がっている……とても幻想的だ」

「ジョウトじゃ見れない景色だな」

「そうだね」

マサラタウンとワカバタウンに住んでいた時はこんな綺麗な光景を見た事がなかったから、星が流れる度に感動の声を上げた。


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