水の都の巫女 | ナノ


18

 最近どうしてたかといろんな話を聞いてると隣の部屋の扉が開いて、全員がリシアさんを見た。

「目が覚めたんですね」

「おはようやでー。ジルチちゃんが運んでくれたん?」

「はい!ここは水の都、私の家です」

目覚めたリシアさん波導は落ち着いてて異常なしだったから安心した。

「へぇ…おおきに。ダイゴ、今更やけどトクサネに戻れんくてゴメンな?」

「リシア……!!君という子はっ!!」

「ッ!!」

ダイゴさんが勢いよく椅子から立ち上がってリシアの目の前まで詰め寄った。かなりご立腹の様子で私はレッドとグリーンの間に席を移動した。

「あれほど気をつけてと、勝手な行動はあまりしないでって言ったのにも関わらず無茶をして倒れた!!連絡も取れなくてどれだけ心配したか…!!!」

「……ホンマにゴメン」

「もし命に関わる事だったらどうしてたんだい!?」

「えー…っと、その時は……」

「その時は僕がリシアを引き取るから。亡骸もその魂もね」

マツバさんがさらっと恐ろしい事を言ってて顔がひきつった。心なしか部屋の温度が下がった気がする。

「冗談じゃない。君に手放す気はないと言ったはずだよ」

「あーちょっと待って、マツバ。まさかやとは思わんけど、うちの魂を何らかの形に移そうとか考えてへん?」

リシアさんも若干顔をひきつらせてたけど、マツバさんの表情を見た途端に目を見開いて大声を上げた。

「アホか!?死んだら死んだで安らかに眠らせてや!?」

「リシア!冗談でも死んだらの話をしちゃダメだ!!」

「おぉっと!!マツバ君!それは俺の許可を取るやんなぁ!?」

玄関の扉が勢いよく開いたと思ったらリシアさんの父さんも話に入って大波乱となった。気づけばハヤトさんとワタルさん、ミクリさんがこっち側に椅子をずらして、4人の様子を見ていた。

「……(何だか…修羅場に遭遇したかも)」

どうしようかなと思ってると、リオルが私の膝の上に座ってクッキーを食べ始めた。私もクッキー食べよと思ってテーブルに手を伸ばしたらリシアさんが物凄い顔をして助けを求めていた。

「……(さすがにこの2…3人の会話に口を挟めないですよ…)」

「ジルチ、助けようと思ったらダメだ。大人しく様子を見よう」

レッドの隣に座っているハヤトさんが小声で言って、その隣にいるワタルさんが肩を震わせて笑いを堪えていた。グリーンはどことなく楽しそうに見ながらクッキーを食べていた。
誰も助けてくれないと悟ったリシアさんは悔しそうな顔をしていると、また玄関の扉が開いた。

「わぁい!」「お姉さんだー!」

「へ?」

近所に住むラティアスとラティオスがパタパタと走ってきてリシアさんの手を握った。

「やっと!」「起きたんだね!」

「だ、誰や……?」

リシアさんは人の姿をしたラティアス達を見て困惑した。

「また遊ぶって言ったよー?」

「投げ飛ばした仲だよー?」

投げ飛ばした仲ってこの子達はまたそんな遊びをしたのかと思っていたらお父さんが反応した。

「投げ飛ばしたって君達、また人を捕まえて投げたのかい?前に注意したじゃないか。人間は脆いから投げ飛ばしたら危ないって」

「キャーッ!護神様に怒られたー!お姉さん助けてー!」

「おっととと…」

お父さんから見えないように、リシアさんの後ろに隠れた2人の無邪気さにその場の空気が和んだ。

「小さな子と戯れてるリシアって何だか面白いね。ポケモンと戯れてる所は何度か見た事あるけど」

「なんやそれ?いもけんぴをエンジュの子にあげたりして遊んだ事あるで?」

「そうなのか?リシアにちょっかいをかけたらアーケオスに頭を噛まれるって噂がコガネ周辺から広まってるんだが」

ハヤトさんの発言でグリーンが紅茶を噴き出しそうになった。いもけんぴを配った話の辺りからワタルさんは襟周りのマントで顔を隠してて不審者極まりない事をしてる。

「うちそんな事…………したわ」

「したのかい?!」

「ダイゴ君、ナイスツッコミ!」

リシアさんの父さんのセリフで私達はついに笑ってしまって、いつの間にか賑やかになっていった。
少し落ち着いたところでリシアさんは真面目な表情をした。

「まぁまだジョウトには戻らへんよ。ホウエンのチャンピオンらしく、今回の巨大隕石の事件について書類をまとめ……」

「リシア?」

リシアさんが話してる途中でやめたから全員気になってしまった。

「あーっ!キーストーン取り返したからハルカちゃんらに返さな!」

「リシアさんが持っていた袋はベッドの横にある机に置いてますよ」

「おおきに!ジルチちゃん!」

リシアさんは部屋に入ると袋を肩に担いで出てきた。

「さてと!はよ返したらなあかんからうちらは一先ず帰るわ!ジルチちゃん、落ち着いたらうちとバトルしてくれへん?」

「いいですよ!私達は都にいるのでいつでも来てください」

「了解って…どうやって来たらいいん?」

「普段はルネジムですが…今はミクリさんの家に繋がってるみたいなので、ここから帰る時はミクリさんの家を思いながら玄関の扉を開けてください。来る時は都を思いながらミクリさんの家の扉を開けてください」

「えらい複雑やな…?」

「これには複雑な事情があるので…もしわからなかったり、上手く行けなかったら連絡をください。迎えに行きます」

都に関しては多分ダイゴさんが説明してくれると思ってうやむやにしておいた。

「了解!ちゃちゃっとやる事を済ましてすぐに行くわ!ダイゴ、一旦トクサネに帰るで」

「全く、リシアったら…少しは休んだ方がいいと思うけど?」

「充分休んだと思うで?ほら、身体もう痛まんし顔色もよーなったやろ?」

「……身体が痛む話なんて聞いてないよ?」

「あー…ほら、足首の話な?とりあえずキーストーンの返却をせなあかんから行くで!んじゃ、先においとまするわ」

リシアさん達が玄関へ向かおうとしたらラティアス達がリシアさんの服を掴んだ。

「えー!お姉さん帰っちゃうのー!?」

「遊ぼうよー!」

「ごめんやで?うちはやる事があるから帰らなあかんねん。そこにおるドラゴン使いと鳥使いのお兄さん達が相手してくれるやろうから話しかけてみ?」

それってワタルさんとハヤトさんの事じゃ…と思ってたら元気な返事をした2匹がこっちに向かってきた。

「おい、リシア…」

「華麗なる鳥使い、頼むで?」

リシアさん達は家を出て、ハヤトさんとワタルさんは早速ラティアス達に絡まれていた。

「お兄さーん!遊ぼー!」

「ドラゴン使いって強いんでしょー?一緒に遊ぼー?」

ねー!ねー!とせがまれてどうするのかと2人を見ていたらワタルさんが立ち上がった。

「よーし!ドラゴン使いワタル、参る!!」

「「わーい!」」

ラティアス達を両脇に抱えてそのまま小走りで外に出ていった。

「あの子達、普通の遊びをしてくれたらいいけどね」

「………」

しばらくラティアス達とワタルさんの楽しい声が聞こえてたけど、途中からワタルさんの叫び声が聞こえてきた。


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