水の都の巫女 | ナノ


17

  リシアさんが寝ている部屋を出ると、お父さんが水を溜めた壺に手を入れて誰かと話していた。

「わかった。ミクリの家に勝手に繋げておくからそこから入って来て」

「どうしたの?」

「あぁ、ダイゴ達とレッド達が合流したみたいだけど…思ったより大人数で来るみたいだから向こうの道を変えようと思ってね」

「大人数?」

大人数と言ってもミクリさんとワタルさんを入れて5人しか来ないと思っていたから他に誰が来るのかわからなかった。
お父さんは前みたいに扉に触れて道を変えた後、席に戻ろうとした時に壺の水を見て首を傾げた。

「ジルチ」

「ん?」

「神殿側の湖へ行ってくれないか?2人と1匹がそっち経由で来てるみたいだ」

「2人と1匹…?」

ますます訳がわからなくなってきたけど、玄関から入って来ないなら迎えに行くしかない。水の都は思ったより広いから迷子になるかもしれない。

「じゃあ迎えに行ってくるね」

「あたしはよその子と遊んでくるー!」

「夕方までには戻ってね」

「はーぃ!」

私とラティアスは家を出て、それぞれの場所へ飛んでいった。巨大隕石の件が落ち着いて都にいるポケモン達もいつもの平穏を取り戻していた。
神殿側の湖へ着くと、そこにはレッドのカメックスに羽交い締めをされたワタルさんと凄く機嫌が悪そうなグリーンが見えた。

「グリーン!久しぶり!!」

「えっジルチ?ジルチだよな!?ははっ久しぶりじゃねえか!」

「確か就任祝いぶりだよね?」

「そうだな。って見ないうちに…変わったよな…?」

「ん?あぁ…この服は都の巫女が受け継いでる衣装だよ」

「へぇ…で、ここはどこだ?レッドのヤツに背負い投げで湖に投げ飛ばされた後、這い上がったらここに出てきたんだが…」

「俺は見ての通り、カメックスに羽交い締めをされて湖に飛び込まれた」

レッドの事だ。多分何か理由があって投げ飛ばしたに違いない…ワタルさんに関しては私的な理由だと思うけど。

「ここは私の故郷!水の都へようこそ!」

「ここがジルチの……」

「家に案内するよ。レッド達はもう家に着いてるから」

「アイツには1発殴らねえと気が済まねぇ……」

「ところで、俺はいつまで羽交い締めをされてるんだ?」

「カメックス…離してあげて?」

カメックスは仕方ないという顔をしてワタルさんを解放して、グリーンは邪悪な笑みを浮かべながら手を鳴らして殴る準備をした。
ホウエンに来てくれた事を2人に礼を言いながら歩いてるとあっという間に家に着いた。グリーンが扉を開けて早々に大声を上げた。

「レッド、てめぇ!!いきなり湖に投げ飛ばしやがってっ!!!」

「返事が返ってこないと決めつけたから」

グリーンが恨みを込めた拳をレッドに向けると、リオルがレッドの肩を乗り出してその拳を受け止めた。

「俺はカメックスに羽交い締めに遭ったが……」

「正規の行き方だよ」

「レッド、それはラティアス達の行き方だよ……」

レッドの発言で大方理由を察した。リビングに入ると本当に大人数で、ハヤトさんとマツバさんがいた事に驚いた。

「ハヤトさん、マツバさんお久しぶりですね」

「元気そうで何よりだ。その服は…?」

「これですか?水の巫女の正装です」

「巫女としての使命を行う為の…だね」

「はい。ワタルさんや四天王、ジムリーダーの皆さんありがとうございました」

「僕からも礼を。ホウエンの危機に駆けつけてくれて助かった。ありがとう。自己紹介が遅れたけど、僕はサフィラス。ジルチの父親だ」

私達は一礼をしてお父さんが自己紹介をすると、ミクリさんの近くに座っていた男性が勢いよく立ち上がった。

「えぇ!?20歳いくかいかへんくらいの娘おるのにごっつい若いけどいくつなん!?」

「もう何100年も生きてるから正確な年齢はわからないよ」

「えぇっ!!?」

その人リアクションが部屋中に響いて逆に私が驚きそうになった。話し方でコガネの人というのがわかったけど誰なのかが全くわからない。

「僕の話はこのくらいでいいかな?」

「お、おう…すまへんな……?ところで娘のリシアは?」

「向こうの部屋で寝てるよ。大分お疲れのようだったからね」

「おおきに。で、ここはどの辺りなん?」

「ルネより遥か南方、とでも言っておこう」

「……ちょっと外見ても?」

「どうぞ?何も考えずにその扉を開ければ普通に出れるから」

「ほな、リシアが起きるまでぷらぷらしてるわ」

「お気をつけて」

お父さんは微笑みながらその人を見送った。リシアさんの事を娘と言っていたからその人はリシアさんのお父さんだとわかった。
ワタルさんとグリーンも席に座ると3人分の紅茶の入ったマグカップを渡された。

「………」

「いい紅茶だな」

ワタルさんが一口飲んで呟いた。私もこのお父さんが淹れた紅茶が好きだから、いい紅茶と言ってもらえて嬉しかった。

「香りのいい茶葉に疲れに効く草を混ぜたものだ。悪くないだろ?」

「あぁ」

皆も静かに頷いて紅茶の香りを楽しみつつ、落ち着いた時間が流れた。


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