19
帰宅後、ジルチがお風呂に入ってる間にシズクは晩御飯の支度をしていた。
「今日は野菜たっぷりのポトフにしようかなー」
下の引き出しから鍋を出してコンロに置いたあと野菜と肉を切り出した。
「よし、あとは煮込むだけっと!」
リビングに戻るとジルチがお風呂から上がった後で、ソファーに座ってラクライをブラッシングしていた。
「ラクライ、今日もお疲れさま!」
『ワゥー』
ラクライは気持ち良さそうにくつろいでいた。
その様子を見ていたシズクはジルチの隣に座った。
「ジルチ。さっき言ってた大事な話の事だけど…」
「うん」
ジルチはブラッシングしていた手を止めてシズクの方を向いた。
「私が研究しているポケモンの卵の事でね。オーキド博士に相談したら、ジョウト地方のウツギ博士に会ってみるといいって言われたの」
「ジョウト地方ってシロガネ山を越えた先にある地方だよね?」
「よく知ってるわね?」
「うん、オーキド博士におっきな地図見せてもらったんだ!……お母さん、ジョウト地方へ行っちゃうの?」
少し不安げな顔をして聞いてきたジルチをなぐさめるようにシズクは頭を撫でた。
「お母さんだけじゃないわ。ジルチも一緒にジョウトへ行く…引っ越すつもりよ。でもレッド君達とお別れしなきゃいけないの…」
「レッドくん、グリーンくんと…」
ジルチは一緒にジョウトへ行くのがわかって少し安心した反面、レッドたちと離ればなれになってしまう事が引っかかった。
「……準備もあるし、すぐジョウトへ行くわけじゃないから…」
シズクは声を震わせながら言葉を選んでジルチに伝えようとした。
「うん、大丈夫だよ…お母さん」
「え…?」
「2人は私よりバトルも上手だし、いろんな事知ってるから…始まった場所が一緒でも競い合ってるうちに差が出来てバラバラになっちゃうと思う」
「……」
「寂しくないわけじゃないけどチャンピオンになる目標は同じだからまた会えるはずなの。一緒に旅に出たかったけど、ね…」
ジルチは少しぎこちない笑顔を作った。
「ジルチ…」
「それにジョウトへ行けば研究が進むのでしょ?それだったらわたし、手伝うし寂しくても我慢するよ!」
「…ジルチが手伝ってくれるの?」
「もちろん!その代わりポケモンのこともっと教えてね?レッドくんたちに負けないくらいにっ約束!」
ぎこちない笑顔から挑戦的な顔になったジルチは母に小指を出した。
「ありがとう、ジルチ。約束するわ!教える事が山のようにあるから頭パンクしないでよ?」
シズクも挑戦的な顔で自分の小指をジルチの小指とむすんだ。
「…さっお母さん!晩御飯がもうそろそろできるよねっ?お腹すいた!」
ジルチは膝の上で眠っていたラクライをボールに戻して、ソファーからおりてテーブルへ向かった
(オーキド博士が仰ってたとおりね……)
シズクはわかってくれた嬉しさと後ろめたい気持ちでいっぱいだった
「お母さーん!早く一緒に食べようよ!!晩御飯なぁにー!!」
ジルチは晩御飯が待ちきれず、テーブルを少し叩いた
「今日はポトフよ!用意するから焦らないで」
シズクは少し零れた涙を拭いてソファーから立ち上がった
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