16
都に着いてリシアさんを家に運んで様子を見ていると、お父さんが部屋に入ってきた。
「おかえりジルチ。こっちも大きな被害がなかったよ。まさかルギアやスイクン達がまたホウエンに来てるとは思わなかった」
「よかった。私もビックリしたよ。あとでスイクンにお礼を言わなきゃね」
「……彼女はどうしたの?」
「…………」
生態エネルギーを補給した時の影響で倒れたと説明しようか悩んでいると枕元で丸まっているブラッキーが口を開けた。
『親父さん。主は皆を守る為に無理をしたんや。少し落ち着いたらダイゴに連絡していいからちょっとの間邪魔するで』
「わかった」
お父さんの返事を聞いてブラッキーはそっと目を閉じた。
「少しずつ波導を送ってるから顔色はよくなってるよ」
「そうなのかい?でもジルチも疲れているから適度に休みなさい」
「うん…」
目の前に意識不明の重体になったリシアさんを見てると休むに休めない。私達の方法が確実なものだったら、リシアさんに無茶をせずに済んだかもしれないと思うと申し訳なく思う。
もうひと踏ん張りと両手に波導を込めているとポケットにあるポケナビが鳴った。
「……あ、レッドからだ。もしもし?」
[ジルチ、こっちはもう大丈夫だから都に戻るよ]
「ありがとう。私とリシアさんは今、都にいるよ」
[わかった。グリーンと一緒に戻るから]
「待ってるね」
[それじゃ]
レッド達も無事でホッとしていると、ブラッキーの赤い瞳が何か聞きたそうに光った。
「……?」
『レッドというのはあんたの彼氏なんか?』
「そうだよ?」
『……主みたいな事はしたらあかんで。うちらと同じような気持ちにさせたらお互い罪悪感しかないからな』
「…うん。と言っても私も昔にレッドとグリーン達に迷惑をかけちゃった事があるんだ」
『…?』
「私がロケット団に拐われて、能力を暴走させられた事があるの。その時、レッドとグリーン、ワタルさん達が止めに来た。だけど、私は自分の意思とは関係なしに彼らを攻撃して傷つけてしまった……」
『……』
「目が覚めたらポケセンのベッドの上だよ?もうビックリ!それに…その時にレッドと久しぶりに会ったから何が何だかわからなかったよ」
『そんな事があってんな……』
「レッドに状況を聞いたら罪悪感に襲われてね…俯いてたら気にしなくていいって言われたの。無事に目が覚めただけで充分ってね」
『優しいんやな』
「そうだね。だからダイゴさんも皆も同じじゃないかな?最初は罪悪感でいっぱいだけど、無事だとわかったらその罪悪感は消えるよ」
『……せやな。何か励まされたわ、おおきに』
ブラッキーが微笑んだから私も笑みを作った。ずっとリシアさんに無理をさせた事を気にしてたんだって思って、ソッとブラッキーの頭を撫でてたらボールからリーフィアが出てきた。
『オレも撫でてや!』
『ちょっと変わり者イーブイ、割り込まんとって』
『変わり者ってなんやねん!オレはもうイーブイやない!リーフィアや!!』
痴話喧嘩を始めそうな勢いで話す2匹を見ていると昔馴染みのような感じがした。
「あれ?2匹とも…知り合い?」
『マサキのとこにおった頃の知り合いやで』
『あたしは先に主のとこに行ったけどこいつは他のイーブイ達と違って変わってるんよ』
『オレは気に入った場所で理想な進化を求めてたんや!』
「あぁ…それで変わり者イーブイ……」
ブラッキーから当時の事を聞いてるとお互い笑い合ったりとだんだん落ち着いていった。
しばらく経った後、またポケナビが鳴って画面を見るとダイゴさんからだった。
「ダイゴさんからだけど…どうする?」
『あんたのおかげで主の顔色はだいぶようなったわ。直に起きるやろうからええよ』
「わかった。……もしもし?」
[もしもし、ジルチちゃん。リシアを知らないかい?空の柱へ向かったっきり帰ってこないんだ]
「リシアさんは……都にいます。いろいろあって、今は私の家で寝てます」
[わかった。ボクも都へ行こう]
「それではお待ちしてます。……ダイゴさんかなり心配してるね」
『主に対してかなりの心配性や。ま、わからんでもないけど』
ブラッキーはリシアさんの隣に丸って目をつぶった。
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