水の都の巫女 | ナノ


15

 しばらく空を徘徊していると小隕石の落下がなくなり、波導で地上を見渡せる範囲を見渡すと大きな被害は特になかったようだ。

「これで小隕石は大丈夫、かな?」

『そのようだな』

空の柱を目指して大空を飛んでいるとレックウザの姿が見えた。

「レックウザ!大丈夫?!」

『む、巫女と遠方の竜か。ヤツは追い払ったから問題ない』

「結局襲ってきた理由って何だったの?」

『隕石にくっついてたらロケットに爆撃され、次は我々が隕石を破壊したから怒ったらしい』

「あー…仕方ないけど…それは怒るね……」

『事情は説明したが通じたかどうかは知らぬ。空の柱へ戻るのか?』

「うん!小隕石の落下はもうないみたいだし、リシアさんが心配だから戻るよ。助けてくれてありがとう」

『うむ』

レックウザと共に空の柱へ戻るとリシアさんとそのポケモン達が空を見上げて手を振っていた。

「おかえり!」

「ただいまです。そっちは大丈夫でしたか?」

「大丈夫やで。あんま落ちてけえへんかったわ」

「それはよかったです。波導で見渡せそうな範囲で見たら大きな被害はなさそうでした。あとで皆と合流したら状況報告はしてくれると思います」

「りょーかい!ホウエンのチャンピオンらしくその辺りの処理をしとかなな」

リシアさん達の活躍でこの辺りも大きな被害はないみたいで安心した。

「レックウザ。水の巫女として、この世界をお守りした貴方様へ感謝の舞を捧げます」

『うむ』

剣を抜き、感謝の気持ちを込めて力強く舞った。一時はどうなるかと思っていたけど、皆の助けもあって無事に事件は解決した。
最後にありがとうと言いながら静かに剣を納めた。

「………」

『見事な舞だ。歴代より美しさは欠けているが、力がみなぎるような舞だった』

『ジルチらしくていいじゃないか』

「ありがと」

『では、さらばだ』

『都に寄り道をしていく』

レックウザは空へ、ルギアは海へ姿を消した。

「…まさかルギアと知り合い?」

「知り合いと言えば知り合いかもしれませんね」

「ジルチちゃんは人だけやなく、ポケモンにも顔が広そうやな。あとヒガナから手紙を預かってるで」

「ヒガナさんから…?」

リシアさんから四つ折りされたメモ用紙を手渡された。開けてみると少し走り書きされた文字が並んでいた。

[やっと全てを終わらせる事ができたよ。本当にありがとう。1度終わったお話をもう1度始められるのか、考えてみようと思ってます
それじゃね  ヒガナ]

「………」

「何て書いてあったん?」

「人生の再出発、かな?」

「ふぅん…。次は大丈夫やろうな」

「そうですね。……帰りましょうか」

「せやな!すぐトクサネ戻る言うたのに戻らんかったからダイゴが―」

「リシアさん?」

続きを話さなかったからどうしたのだろうと思ったら急にリシアさんの身体が傾いてそのまま地面に倒れた。

「リシアさんっ!?」

「…………」

「リシアさん!しっかりしてくださいっ!!」

『どないした!主!』

『おい、しっかりしろッ』

リシアさんのポケモン達もいきなり倒れて意識のないリシアさんに驚いていた。

『まさか…あの時の影響が……?』

「え…?あの時って?」

銀色のメタグロスがリシアさんのそばに来て、呟くように言った。

『わっお前メタグロスの言葉わかるんかよ!?』

「う、うん?それでメタグロス、あの時ってリシアさんは何をしたの?」

『………』

『……メタグロス、ダイゴの旦那の他に迷惑かけたくねぇのはわかるけどよ。このままじゃリシアが危ないじゃん?この姉ちゃんなら信用できそうだし事情を話そうぜ』

『うむ……』

「…?」

『我らは巨大隕石を破壊する為に生態エネルギーを補給した』

「!!」

『リシアが私とデンリュウを同時にメガシンカをさせる事によって通常より膨大なエネルギーを発生させた。結果は巨大隕石を破壊する事が可能なほどになったが、リシアの身体に異変が起きた』

『いきなり気を失うほどの激痛に襲われるようになったんだ。落ちたリシアを助けようとしたら自分より隕石を優先するし……』

アーケオスが落ち込んだ表情で話に入ってきた。弱気になっているのか身体が縮こまっている。

『オレ達には異変はないと診断されたけどリシアの診察がまだなんだ』

『結果はダイゴが聞いてると思うけどこっちには何の連絡がきてへんからなぁ』

リシアさんは自分達ができる方法で実行したけどあまりにもリスクが大きすぎた。波導が不自然に減っていた理由もわかったから早く安全な場所へ運ぼうと思った。

「理由が生態エネルギーを補給する為に無理なメガシンカをしましたなんて言えないし…一刻も早くダイゴさんに…」

『それはあかん』

「ブラッキー…?」

『主はダイゴに迷惑をかけたくないから無理な行動したんやで。本当は身体が限界なのに皆の為にと1人で無茶したんや。せやから…あんたに無理を言わすのもあれやけど、人目が少ない安全な場所へ連れてやってくれへん?ダイゴに連絡するのは少し落ち着いてからにしてほしいんや』

「……わかった。安全な場所なら任せて!ラティアス、リシアさんを抱えて都へ行こう!」

『了解!』

『じゃあ俺が代わりに姉ちゃんを乗せる』

『あたしはラティアスの背中に乗っていいやろか?主のそばにいたいんや』

『オッケー!』

「それじゃあ、あとはボールに戻ってくれる?」

デンリュウ達は頷いて自らボールへ戻っていった。私はアーケオスの背中に乗って、ラティアスと共に空に飛び立った。


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