水の都の巫女 | ナノ


13

 リシアさんはもう1つのボールも構えてレックウザに向かって叫んだ。

「2対1になるけど許してな!」

『よかろう!我の前で2匹を操れるなら操ってみるがいい!』

「うちが同時に2匹を操られへんとでも思ってるん?なら、このバトルで証明したる!いけ!ラプラス、アーケオス!!」

リシアさんが投げた2つのボールからラプラスとアーケオスが出て目の前にいるレックウザに威嚇をした。

「いくで…!ラプラス、れいとうビームでアーケオス、げんしのちから!」

リシアさんはレックウザ相手に笑みを浮かべながらどこか楽しそうに戦っているけど全力で攻めている。それに対してレックウザも全力で対抗していた。

『舐めるなぁあっ!!』

「あかんっ!ラプラス、まもる!アーケオスは背後に回ってゴッドバード!」

レックウザの動きでどんな攻撃をするのか予想をしたリシアさんは的確な指示を出して攻防がしっかりしていた。

「……(これがホウエンリーグチャンピオンの実力…)」

私と似てるようで違うその戦いっぷりに見惚れそうになった。

「よしっ!アーケオス、そのままストーンエッジで攻め続けや!ラプラス、ハイドロポンプ!」

ふと、空を見上げると攻撃を避けているレックウザと目が合った。

「……?」

どうしたんだろうと思いながら見ていたけど、レックウザは特に言わずにリシアさんとの戦いに集中していた。

「……っ!なんちゅう威力やっ」

ラプラスに放ったりゅうのはどうを耐えられて、反撃のれいとうビームを真正面から受けていた。凄く威力があるのに怯まずすぐに反撃をしたラプラスは激しい戦いに慣れている感じがあった。

「切り替えは、すぐせなな!……うっ」

得意気な顔をしたリシアさんは突如、呻き声を上げてその場に崩れ落ちた。

「リシアさん!?」

「…、大丈夫や!ちょっと古傷が痛んだだけや…っ」

とても古傷が痛んだような反応じゃなかったから気になっているとリシアさんのポケモン達も同じ反応をしていた。

『ジルチ。あの人の波導、おかしい』

「…え?」

リオルが小声で言ったから気になって波導を見ると確かにおかしかった。
異変に気づいたラプラスはリシアさんを守るように構え、リシアさんから遠い場所で戦っていたアーケオスがその様子を気にしているとレックウザの尻尾に払い飛ばされてしまった。

「……(容赦ない一撃…戦いに集中しろって事かな)」

状況が一変してリシアさんのアーケオスが倒れてしまった。リシアさんは自分に責任があると思って2匹に謝っていた。

「原因は…なんだろう……」

リシアさんの様子を見ているとどこか焦ってるような感じがした。
次に出てきた銀色のメタグロスをメガシンカさせた。

「勢いでいくで!メタグロス、サイコキネシス!ラプラス、ハイドロポンプ!」

レックウザはメガメタグロスにりゅうのはどうを放つと、メタグロスはラプラスのハイドロポンプをサイコキネシスで2つに分けて、両サイドから挟み撃ちにした。
味方の技を活用するとは思わなかったから驚いた。私ならりゅうのはどうを相殺する勢いで攻撃する。

「味方の攻撃をサイコキネシスで操作するなんて…!」

「メタグロス、ハイドロポンプを当てる事を優先させたんやな。んじゃ、そのまま懐に突っ込んでれいとうパンチや!ラプラスはれいとうビームで援護!」

『させぬっ!』

「2匹のひんやりコンボを受けてみ!」

氷タイプの技のコンビネーションでレックウザ身体が凍りつき、呻き声を上げて暴れだした。

「今や!ギカインパクト!!」

メタグロスのギカインパクトをまともに当たったレックウザは地面に突き落とされ、私達のいる祭壇に砂埃が舞った。

「っ!!」

『見事だ!』

起き上がったレックウザは満足げに言うと戦う姿勢を止めてその場で待機した。

「や……ったの……?」

『にょっごーーーッ!』

「何や、もうええんか?」

『其方の実力はわかったから充分だ。巫女、其方も共に戦えばよかったのに何故遠慮をした』

「……(リシアさんの方がレックウザに力を与えてたから…かな?)」

波導でレックウザに伝えると小さく頷いた。近くにいるリシアさんが本当にいいの?という顔をしていた。

「リシアさん、レックウザが見事だと言ってましたよ」

「へえ…そうなんや」

何だか意外という返事をしてラプラスとメタグロスをボールに戻すとヒガナさんがリシアさんに近づいた。

「……おめでとうリシア。……そしてありがとう」

「…どうも」

「歴史が……レックウザが選んだのが私ではなく、君って事実は言葉にできないけど……わかるような気もしてる」

「うちだけやないと思うで」

「何…?」

「レックウザとよう喋っとるしジルチちゃんも選ばれとったんとちゃう?」

リシアさんの言葉に少し驚いてしまった。確信があるようなその目に嘘を言っても見破られそうだ。

「……よくわかりましたね」

「戦っとる時にレックウザがちょくちょくジルチちゃんを見とったからな!」

確かに何度かレックウザと目が合ったけど戦いながらそこまで見てるとは思わなかった。

「1番レックウザに力を与えたのはリシアさんなので、貴女が戦うべきだと思いました。そうしたらレックウザが共に戦えばよかったのにと言われました」

「せやったん!?やったらそうと言ってくれたら一緒に戦えたのにーっ」

「えぇと…すみません…?」

頬を膨らませたリシアさんに猛抗議をされて、私と一緒に戦いたかったんだ…と思うと何だか申し訳なくなった。

「……貴女は新たなる歴史の継承者になった。レックウザが真の姿になる為の最後の鍵を伝えるわ」

「最後の鍵?」

「そんなんあるんや?」

「そう、レックウザのみが扱える技。"ガリョウテンセイ"を―」

ヒガナさんはレックウザの前に祈るように構えると波導が流れて周りに風が吹いた。レックウザはヒガナさんから"ガリョウテンセイ"を継承した。

「……よし。…それじゃ最終伝承を始めるよ。君が手にしたレックウザの力……ポケモン勝負を通じて、その制御を体験させる……。それが私の―私達流星の民が行う最後の伝承……!」

「レックウザと共に戦うんか。よろしく頼むで」

『其方の力、見させてもらおう』

「乗り越えて、私達の紡いできた全てを。…………フゥ……鼓動が……早くなってきて……。…うん……昂って……きた…よ…ッ!ハッ―!!!届けっ!!!」

「乗り越えたるで、うちらの全力でな!!」

伝承者ヒガナさんとホウエンリーグチャンピオンのリシアさんのバトルが始まった。
私は水の民の巫女としてこの戦いを見届ける事にしたけど…1つ気がかりがあった。

「………(リシアさんの波導が…普通の人より少ない…)」

レックウザとの戦いの最中に急に苦しんで倒れそうになった時に、気になって波導を見ると以前会った時より不自然に波導が減っていた。


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