水の都の巫女 | ナノ


12

 鳥ポケモンが羽ばたく音が聞こえて空を見上げるとアーケオスが見えてきた。

「リシアさん!!」

「待たせたな、ジルチちゃん」

「な…、何故チャンピオンがここに…!!」

「ん?レックウザが膨大なエネルギーを抱えている隕石を求めているってジルチちゃんから聞いたから届けに来たんやで。しっかし、まぁ…メガシンカせえへんのは当たり前やろな」

「どういう、事?」

「ヒガナ、あんたはレックウザ降臨の為に何人ものキーストーンを奪った。そして必要数が揃ったからレックウザを降臨させたんやろうけど…そのキーストーンは、想いは1つやったんか?」

「何が言いたいッ!!」

…想い、絆、ヒガナさんが持つキーストーンにそれがあったとしても持ち主不在のキーストーンにはそれが込められてはいないはず。リシアさんが言いたいのがそれだとしたら私もレックウザがメガシンカしないのは納得できる。

「もしかして…リシアさん」

「お?ジルチちゃんはわかったんやな?」

「……推測、ですけどね」

「まぁ合ってると思うで。ヒガナ…そのいくつものキーストーンは、持ち主の想いはヒガナと同じものなんか?」

「…!!」

「父さんが流星の民から伝承を聞いた感じじゃ、全員同じ祈りを込めたそうやん?そんな奪ったキーストーンに同じ想いがあるとは思えへんし、バラバラの気持ちじゃメガシンカはできへんで」

「…うるさいっ!!何を知ったかのような口ぶりで…!!ボーマンダ!かえんほうしゃ!!」

怒ったヒガナさんはボーマンダを出すとその背中に飛び乗って、空中にいるリシアさんとアーケオスにめがけてかえんほうしゃを放った。

「おっと、危ないやろ。アーケオス、返り討ちにするで」

「ヒガナさん!やめてください!!リシアさんも…っ」

2人はそのままレックウザの上で空中戦を始めてしまった。
ふと、視線を感じて少し下を見るとレックウザが何か言いたげな顔をしていた。

「レックウザ?」

『…あの者が言った事は事実だ。我に力があったとしても、流星の民の持つ力に反応するつもりはなかった。1000年前と比べたら心が不安定そのものだ』

「そう、だよね…」

『水の民、其方ならあの者達を止めれるだろう?』

「少しこの辺りが水浸しになってもいい?」

『構わぬ。我の上に居ていいのは我に力を示した者のみ!』

「わかった。水の鎖よ、2人を止めて!!」

剣を抜いてその場で軽く舞うと空の柱の周りにある海が音を立てて柱を作り、いくつもの鎖が2人と2匹を捕まえて祭壇に落とした。

「痛っ!何や、これっ!?」

「ぐぐ…っ!これは水の民の力…っ」

「2人とも、喧嘩はやめてください」

「喧嘩て…ヒガナから先に攻撃してきたんやで?」

「だとしても売られた喧嘩を買っちゃダメです」

「このチャンピオンがメガシンカしないのは私に原因あるって言いがかりを…!!」

「トレーナーとポケモンとの絆を見定める職柄、思った事を言っただけやし!それとダイゴを煽った仕返しや!!」

「…レックウザもリシアさんと同じ事を言ってましたし、事実ですから受け止めてください」

「な…っ!だったらジルチのキーストーンも使えばきっと…!」

「私達、水の民は空の柱に立ち入る事ができるのは救ってくれたレックウザに感謝を込めた舞をする為…儀式には参加しないですよ」

「そんな!」

そういえば私のキーストーンを奪おうとしなかったのは、儀式の時に自ら差し出すと思っていたからかもしれない。
2人の様子を見て、もう大丈夫と判断したから水の鎖を解いた。解放された2人は黙って2匹をボールに戻し始めた。

『よくやった』

「言われた事をやったまでだよ。話が逸れてしまいましたがリシアさん、隕石を届けに来たんですよね?」

「せやった!この隕石やねんけど―」

リシアさんが袋から隕石を取り出すと突然輝きだした。

「何や!?隕石が…前より光っとる…?」

「これは……!?」

リシアさんが持つと隕石は更に輝きを増していく。その隕石に力が満ち溢れているのがよくわかった。

「レックウザ!あんたが求めてるのはこの隕石やな!?」

『如何にも!』

「……!?その隕石は―!?まるで……メガストーン!?」

「投げるからしっかりと受け取りや!」

リシアさんは輝く隕石を投げるとレックウザはその隕石を食べた。

『みなぎるっ……力がみなぎるっ!!!』

「レックウザの力が、みなぎっている…っ!」

「どうやら当たり、みたいやな」

レックウザの体内から眩しい光が溢れ出した。それはメガシンカに似た光だった。

「隕石を食べて、その体内にメガストーンと同じ力を蓄える……。リシアの隕石がレックウザがメガシンカする為の力をみなぎらせた……」

『我に力を与えし達者よ。我にその力を示すがいい』

「……?(与えし者"達"?)」

「―オーラッ!すごいっ!……リシア!レックウザは試そうとしてる……!自らに力を与えし君を……!全力で立ち向かって、そして制するの……!」

「……」

「ホウエンの守護神と謳われるその伝説ポケモンを!今、それを叶えられるのは―リシアしか……いないっ!!」

「マジで?」

「リシアさん、お願いできますか?レックウザが…戦いたいと言ってますので」

「ホンマは隕石渡したらすぐトクサネ戻るつもりやったけど…指名されたなら戦うしかないな!」

リシアさんはボールを構えてレックウザと向き合った。


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