水の都の巫女 | ナノ


08

 ラティアスに乗りながらレッドに連絡を入れると途中でお父さんに変わった。

[継承者はジルチに空の柱に来てほしいと言ったんだね]

「そうだよ。理由は知らないけど…」

[まぁ…想像はつくけど僕ら水の民は空の柱に入れても入口の封印が解けないんだ]

「そうなの?」

[その点、ルネの民は封印は解けるけど空の柱に入れない]

「へえ…」

[でもダイゴ君がその事を知っていてよかったね。下手すれば入口で立ち往生してたよ]

「う、うん…」

[昔から語り継がれた事だからそれぞれの民が何故入れないのか、何故封印を解けないのかわからない。それが当たり前だからかもしれない。だから彼が封印を解く前に入口に触れちゃダメだよ。何が起こるかわからない]

「わかった。お父さん達は今何してるの?」

[遠方から来てくれた仲間にホウエン中の野生ポケモン達に協力を頼めないか聞いてくれないか?と言って今解散したところだ。人が踏み入れなさそうな場所は彼らが守るはずだ]

「ありがとう…っ」

[そろそろレッドに変わるね。はい]

[ジルチ?グリーンが全員到着したって連絡きた。ワタル達はリーグに向かって、他はバラけたみたい]

「到着が早い…よね?」

[ジルチから頼まれるなんて滅多にないから喜んで引き受けてくれたよ]

「チャンピオン就任した時に結構無茶な頼みをしたからこれ以上頼むような事はないって思ってたけどね…」

[落ち着いたらどこかで合流しようって言ってたけどどうする?]

「とりあえず…お父さんがいいなら都に合流する?」

[僕は構わないよ]と遠くからお父さんの声が聞こえた。

[…だってさ。じゃあ僕もいつでも動けるようにするから]

「わかった。レッド、ありがとう」

[うん。じゃあね]

通話が終わってポケナビをなおすとラティアスが私を見ていた。

『レッドと話してる時のジルチって表情が柔らかいね。幸せそう!』

「そ、そうかな…?」

『ジルチから幸せなオーラが出てる!ぼくも幸せ!!』

「何だか恥ずかしい…」

そんな風に言われると恥ずかしいような嬉しいような気がする。レッド達に負担をかけないよう私も頑張らなくちゃと思っていると白い街並み…ルネシティが見えてきた。
リシアさんが言ってた大木の前に祠があって目覚めの祠の近くに降り立つと、ミクリさんが老人と楽しそうに話していた。この大木…見覚えがあると思ったら家族写真に写っていたものだった。

「なんて……グロリアス……なエピソード」

「そうでしょう?むほっほ、そうでしょう?」

「まさかこの大木が……カロスより訪れし巨大な男から贈られたものだったとは……。いやはや御老体、勉強になりました。ありがとうございます」

「むほっほ。そんなやめてくだされ、ミクリ殿。むっほっほほ」

「いやいや、あっはっはっはっは」

その様子を黙って見ている私に気づいたミクリさんは私の方へ向いた。

「…………さて、ようこそルネへ。水の巫女、ジルチ。ダイゴから話は聞いているよ。空の柱に行きたいそうだね。確かに空の柱へ続く洞窟の入口は私達ルネの民……そして1つ、ホウエンの古来より続く民族"流星の民"にしか開けない」

「お父さんも言ってました。僕ら水の民は封印は解けないけど中には入れる、と。空の柱は一体何があるんですか?」

「空の柱はね、ホウエンの守り神とも言われる伝説ポケモン―レックウザを降臨させる為の祭壇なんだ。レックウザを空の柱に呼び寄せる方法は流星の民にしかわからない」

「そうですね…」

「恐らくダイゴから聞いたそのヒガナって娘はレックウザを蘇らせ、何かを成し遂げんとしているのだろう。……とにかく善は急げだ。私は先に向かうよ。準備ができたら君も追いかけて来たまえ。空の柱は131番水道にある小さな島にそびえ建っているからね」

「わかりました」

ミクリさんは131番水道にある空の柱へ向かっていった。ふと、ミクリさん達が話していた大木を見るといろんな色の花が咲いていた。

「……」

『この大木って不思議!生命力が溢れ出てる!』

リオルの言う通り、この大木は生命力が溢れ出ていて神聖な感じがした。そんな輝かしい大木の周りに鋭く赤黒い花がたった一輪だけ咲いていた。他の花は鮮やかに対して何故この花だけ赤黒いのか気になって、近寄ろうと思ったけど今は空の柱へ行かなきゃいけない事を思い出して大木を見上げた。

「…こういうのを守らなきゃね。私達も空の柱へ行こっか」

『うん!』

ラティアスに乗って私は131番水道にある孤島…空の柱を目指した。


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