波導で感じたモノ(リオル)
ジルチとレッドと同じベッドで寝ている時に、夢でジルチが今まで体験した事を見た。それは楽しい事から悲しい事の全てだった。
あまりにも辛い体験をした見た瞬間、ぼくの心が苦しくなって目が覚めた。
『……ッ!!』
隣を見れば心地良さそうに寝ているジルチがいてホッとした。だけどぼくは冷や汗が出て鼓動が速まったままだった。冷蔵庫にあったおいしい水を飲もうかなと思って、2人を起こさないようにソッとベッドから抜け出した。
ぼくの高さじゃドアを静かに開けるのは難しい…椅子を使って開けようかなと思っているといきなりドアが開いてビックリした。
『!!』
「しー…」
ぼくが通れるくらいのすき間を開けると師匠の主、ゲンさんが人差し指を口元に当ててぼくを見ていた。
ぼくは静かに頷いて、開けてくれたすき間を通って部屋を出た。
薄暗い廊下をゲンさんはまっすぐ歩き始めたからぼくはその後ろを追いかけた。リビングに着いて冷蔵庫からぼくが求めていた物を出してくれた。
「リオル、何か感じ取ったのかい?」
『うん…夢でジルチが今まで体験したことを全てが見えたんだ。でも、すごく辛い思いや痛い目に遭ったのを知って、ぼく…心が苦しくなったんだ……』
「そういう事か…彼女は普通の人とは違って波乱万丈な人生を送ってるようだからね。リオルは彼女の事をどう思ってるんだい?」
ゲンさんの青い瞳は何だか不思議。見ていると速まっていた鼓動が落ち着いてきた。
ぼくはおいしい水を一口飲んで答えた。
『大切な人!』
その答えを聞いたゲンさんは微笑んでぼくの頭を撫でてくれた。
「いい答えだ。ジルチ達と共に世界を見て、彼女達の力になってくれないか?レッドもいるけど…彼女は強がりだから彼に弱音を吐かないと思うんだ。リオルはそんな2人をサポートをしてほしい」
『わかった!』
ゲンさんと握手をしてぼくはジルチ達を助けれるようにもっと強くなろうと思った。
『そういえば何でぼくがおいしい水がほしいってわかったの?』
「それは…ルカリオが教えてくれたんだ。リオルが助けを求めてるって」
『ぼくが?』
「波導で伝わってきたんだと思うよ」
『明日、師匠にお礼を言わなきゃ!』
「言うならこっそり、とね?」
『うん!ゲンさんもありがとう!ぼく、もっと頑張るから!』
「ジルチのように無理をしてはいけないよ。適度に息抜きする事も大切だから」
『うん!ぼく、そろそろジルチのいる暖かいベッドに戻るよ!』
「うん。寝不足になったらジルチが心配するからね。部屋まで送るよ」
ぼくはゲンさんと一緒にまた薄暗い廊下を歩いた。ゲンさんも波導が使えるから足元が見えなくても平気なんだ。
出る時と同じくらいのすき間を開けてくれたからこっそりと入った。
「おやすみ、リオル」
『おやすみなさい、ゲンさん』
静かにドアが閉まったのを見て、ぼくは再びこっそりとベッドに潜り込んだ。今度は苦しくなっても逃げたりしないぞと心に決めて、ぼくはまた眠りついた。
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