水の都の巫女 | ナノ


08

 ゲンさんから卵をもらってしばらく経った頃に変化があった。話しかけると卵が揺れたりと反応があって、さらに夢でその卵の中から声が聞こえるようになった。

『―キミは…だぁれ?』

「私はジルチ。君は?」

『まだ、わからない。外のセカイは、どんなセカイなの?』

「広くて…いろんな色や出来事があるかな?」

『そうなんだ!はやく見てみたいなぁ…』

「もうすぐ見れると思うよ。その時は私と一緒にいろんな所に行こうっ」

『うん!楽しみにしてるっ』

何度話しているうちに性別が♂だと思った。知らない事が多いから好奇心旺盛でいろんな事を私に聞いてきた。
そして、ポッポやムックルの鳴き声が聞こえて私は目が覚めた。

「……そろそろ、生まれそうかな?」

卵を撫でてたらレッドが部屋に入ってきた。

「おはよう、ジルチ」

「おはよう」

「最近起きる時間が遅くなってるけど大丈夫?」

「大丈夫だよ?」

「そっか。朝御飯できてるから食べよ?具合が悪かったら言ってね」

「うん、わかった」

夢で卵の中の子と話しているうちに睡眠時間が長くなっているみたい。特に具合が悪くもないし、至って普通だからいつも通り皆と朝食をとった。

「ゲンさん。そろそろ生まれそうな気がします」

「そうなのかい?楽しみだね」

『生まれたらチョコが世界一美味しい物だと教えよう』

「ルカリオ、他の事も教えてあげてよ…」

「じゃあ僕はピカチュウのほっぺが柔らかい事を教えようかな」

「そう言いつつ、バトルの事をこっそり教えるんでしょ?」

「そうだよ」

「全く、レッドは…」

生まれてすぐ、ヨーギラスみたいにスパルタ育成になりそうと思ってたら腕の中にある卵が揺れてヒビが入った。

「生まれる…!」

皆で静かに卵が割れていくのを見守ってると、中から青い手と頭が見えた。

『……?』

「生まれたのはリオルだね」

「リオルってルカリオの進化前のポケモンですよね?」

「そうだよ。おめでとう」

「ありがとうございます!リオル、私だよ、ジルチ!」

頭の上に乗っている殻を取ってあげると赤色の大きな瞳が私を見つめた。

『わかる!わかるよ!!たくさんお話してくれた!』

リオルは嬉しそうに尻尾を振って話しかけてきた。

「うんうん!リオルもテレパシーが使えるんだね!」

「え、そうなの?」

「え?」

レッドの言葉に頭の中がはてなマークでいっぱいになった。

「え、リオルは…ルカリオみたいに話しかけてるけど?」

「私はリオルの言葉はわかる」

「あたしも!」

「…僕にはリオルの鳴き声にしか聞こえないみたい」

「波導が関係してるのかな…?」

「かもしれないね。ルカリオに進化したらテレパシーが使えるようになってレッドと話せると思うよ」

『…ジルチ?』

まさかな出来事に3人であれこれ話していたらリオルに服を引っ張られた。

「あぁ、話し込んでてごめんね?約束通り、外の世界を見に行こっか!」

『うん!』

卵の殻を布に包んでホウエンへ帰るまでの間、ゲンさんの家に保管してもらう事にした。リオルを肩に乗せて、とりあえず鋼鉄島を軽く歩いてからミオに行こうと思った。
レッドと鋼鉄島からミオ行きの船を待ってる時にボールから出たがっていたリーフィアを出した。

「リーフィア、今朝に卵から孵ったリオルだよ」

『へえ!ちっちゃいのに将来有望な感じがするやん!よろしくやで、リオル!』

『よろしく、リーフィア!』

「!?」

今、リーフィアがコガネ弁で喋ってた気がする。気のせいだろうと思っているとリーフィアと目が合った。

『何や、間抜けな顔してんで?』

「リーフィアが…っ、コガネ弁を…!!」

「リーフィアがコガネ弁って…ジルチどうしたの?」

『オレはマサキのとこにおった頃からずっとこうやけど?てか他のヤツらもせやで?』

「じゃああのタックルは…」

『ツッコミや。オレなりの愛情表現やと思って。ほら、船来たで。乗らんとあかんやろ?』

リーフィアはミオ行きの船に向かって歩き出した。リオルがきっかけでテレパシーじゃなくてもポケモンの声がわかるようになったようだ。
そうなると…と思ってレッドの肩にいるピカチュウを見た。

「……」

『ほっぺ触る?』

レッドのピカチュウも例外じゃなかった。そして唐突にほっぺの話になったから遠慮なくピカチュウのほっぺを触った。


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