01
ミナモシティの船着き場までお父さんが見送ってくれた。心なしか都にいた水ポケモンも見送りに来ているような気がする。
「シンオウはホウエンと真逆の気候だから身体には気をつけてね。ラティアスが悪い事をしたら容赦なく殴っていいから」
「殴るってさすがにできないよ…」
「ちょっと兄さん!いくらなんでもそんな事しないよー!」
「ラティアスは初めての遠出だから心配なんだよ。レッド、この子達を頼む」
「任せてください」
「うん、いい返事だ」
お父さんは私とレッドの頭を撫でて微笑んだ。船が出航するアナウンスが流れたから私達は船の中へ入った。
「行ってきまーすっ!!」
お父さんに向かって手を大きく振ると手を振り返してくれた。短い間だったけどお父さんと過ごせて本当によかったと思う。シンオウから帰ったら少しゆっくりと過ごそうかなと考えながら故郷の海を離れていった。
南から北への長距離移動だから船で一泊して、朝にシンオウ地方のミオシティに到着した。シンオウ地方へ着く少し前から肌寒さを感じていたけど、いざ船を降りると本当に寒くなってきた。念の為に持ってきたマフラーを首に巻いてもカッターシャツ1枚じゃ寒かった。
「…シロガネ山ほどの寒さじゃないけどあの時に着てたコート持ってくればよかった」
「僕の貸そうか?」
「それ借りたらレッドがタンクトップ1枚になるし、見てたら寒くなりそうだからいいよ…」
「ジルチー…寒いよーっ!」
マフラーをガシッと掴まれてラティアスを見ると半袖にショートパンツで私より寒そうな格好だった。このままでは2人とも風邪を引きかねない…。
「服屋…っ先に服屋へ行こう!」
「そ、そうだね…」
「こんなに寒いと思わなかったーっ」
ポケセンの近くにあった服屋に行って紺色のワンピースを買った。ラティアスに色違いのワンピースを渡して早速着てもらった。
「わぁあ!温かいっ」
「これで大丈夫だね!」
「ジルチ、このあとどうする?ミオの人に波導使いの人がどこにいるか聞いてみる?」
「んーそうだね。ポケセンに寄ってから聞き回ろっか」
一先ずポケセンで温かい物を飲もうと思って中へ入った。受付の近くで紅茶を飲んでいると金髪の女性が私を見て立ち止まった。
「……もしかして、ジルチちゃん?」
「え…?」
「やっぱりジルチちゃんね!成長してシズクさんに似てきたわね!」
「えっと…どちら様、ですか?お母さんの事を知ってるという事は考古学か何かの研究員さん?」
「あたしはポケモンの神話について調べてるポケモントレーナーのシロナよ。貴女が小さい頃にシズクさんと一緒に発表会に来たの覚えてるかしら?」
「覚えてますよ。知らない人がいっぱいで大変でした…」
考古学の発表会でお母さんと一緒に来ていたけど知らない研究員の人に囲まれて大変だった記憶がある。
「まだ小さかったからそう思うよね。あたしはその時に貴女達と会ってて、シズクさんと神話について語り合った仲なの」
「そうだったんですね!シンオウ地方に伝わる神話について後で調べようと思ってます」
「あら、そうなの?他に用事があるのかしら?」
「波導使いの人を探してて…その人にちょっとした用があるのです」
具体的には言えないけどシンオウ地方の神話について調べてるシロナさんなら何か知ってそうな気がした。
「波導使いなら…鋼鉄島に住んで修行をしている物好きなトレーナーがいるわよ。とても不思議な雰囲気をしてて、ルカリオを連れているからすぐわかると思うわ」
「ありがとうございます!」
「鋼鉄島行きの船は港から出てるからね。神話について調べるならミオの図書館に行くといいわ」
「わかりました!シロナさん、また会いましょ!!」
「ええ、次は神話について語り合いましょ?」
シロナさんと別れて私達は港へ向かうと、すぐに鋼鉄島行きの船が来た。
「鋼鉄島って昔は鉱山として栄えてたんだって」
「へー…そうなんだ?」
レッドがパンフレットを片手に鋼鉄島について教えてくれた。今はポケモン達の住み処でたまに修行に来るトレーナーがいるらしい。
この事を教えてくれたシロナさんに感謝だなーと思ってると、そういえば各地方のチャンピオンリストにシロナさんの名前と写真があったのを思い出した。
「あ、シロナさんってシンオウのチャンピオンだ…全然気づかなかった」
「他の事で頭がいっぱいになってたからじゃない?」
「シロナさんってすっごく綺麗な人だったねーっ」
「髪がサラサラしてて輝いてた…。ちょっと羨ましい」
3人で雑談してしばらくすると鋼鉄島が見えてきた。所々工場や小さなお店が建っているのがわかるけど人があまりいない気がした。
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