19
しばらく雑談をして日が暮れそうになる頃にダイゴさんとミクリさんはルネへ帰った。
『それでは巫女、私達はジョウトへ戻ります』
『ジルチ、いいものを見せてもらった。またスイクンと来る機会があればここでゆっくりと話そうではないか』
「うん、ありがとう。都の建物を綺麗にしなきゃいけないし、しばらくホウエンにいるよ」
『また、いつか』
スイクンは海の上を走っていき、ルギアは海の中へ潜っていった。
「……さて、と服を着替えて寝る場所を確保する為に掃除しなきゃ!」
「街の修復作業が終わるまで神殿で寝ていいよ?僕らもしばらくそこでしか寝る所ないし、日が沈むから作業は明日からだ。それかルネのポケセンで泊まるかい?」
「ううん、都にいるよ。レッド、いいかな?」
「僕はいいよ」
「ありがとう」
私達は神殿に行って、巫女衣装からいつもの服に着替えた。ラティアスが衣装と剣を元の場所へ置きに行った時にメダリオンが飾られている事に気づいた。
「……」
「今まで身につけていたから違和感があるのかい?」
「うん。首元がちょっと寂しいかな」
「じゃあこれをあげるよ。中に空洞が出来てて、笛みたいに吹くと綺麗な音が響くんだ」
お父さんが懐から細長い結晶にメダリオンをつけていた紐を巻いた物を取り出した。
「吹いてごらん?」
吹いてみると凛とした綺麗な音が神殿に響いた。すると、少し離れた場所にいたラティアスがやって来た。
「呼んだ?」
「え?」
「あはは!ラティアスもそう聞こえるよね。僕が試しに小さく吹いたら何だか呼ばれるような…どこか懐かしい感じがしたんだ」
「私には綺麗な音にしか聞こえないけど…?」
「そうなのー?」
「まぁ何かあったら吹いてね。聞こえる範囲だったら僕らがジルチの元に駆けつけれるから」
「わかった!」
笛の紐を首から下げて前のように服の中に入れた。
4人で川の字のように寝ているとラティアスの寝相が悪くて、隣で寝ていた私にころがるをしてきた。
翌朝、皆を出して建物の修復作業を始めた。バクフーンやバンギラスが大きい瓦礫を持ってきて、フシギバナがその瓦礫を積み上げてリザードンとカイリューがその瓦礫と瓦礫の間に粘土を塗っていた。
それぞれ出来る事をやって役割分担をしていると、どこからかニョロボン達が来て瓦礫を持ってきてくれた。
「手伝ってくれるの?」
ニョロボン達は頷くと2組に分かれて道の掃除担当と瓦礫集めを始めた。
「ありがとう。このペースなら都の復興にそんな時間はかからないかなー」
「ジルチ!お父さんが呼んでたよ。神殿の近くにいるって」
「お父さんが?今行く!」
レッドに持っていたバケツを渡して、お父さんの所に行くと巻物や本が山盛り入った箱がたくさんあった。
「お父さん…これは?」
「各建物の中にあった無事そうな書物さ。あっちの建物の掃除が終わったみたいだから、この書物を種類別に分けて本棚や引き出しに入れて欲しいんだ。近くにいたラティアスに頼もうとしたらどっか行かれてね……」
「そうなんだ…読みながらでもいい?」
「ちゃんと終わらせるならいいよ」
「はーい!…よっと」
箱を持ち上げて残りをあとで運ぼうと思っていると私の後を追いかけてきたカイリューが2箱を軽々と持ち上げた。
「ほぉ…このカイリュー、フスベの子?」
「何でわかったの?」
「ワタルのカイリューと同じ雰囲気を感じたからさ。僕も持っていくよ。ふーん…悪くない」
お父さんはカイリューに話しかけて楽しそうに雑談をしているうちに箱を全部運び終わった。
カイリューにお礼を言うとふわふわと飛びながらレッドのポケモン達がいる場所へ戻っていった。
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