水の都の巫女 | ナノ


16

 ラティアスにレッドと旅している事を話すと「お熱いねー!」と茶化された。

「ジルチの話を聞いてたらなんだか羨ましいなぁ。あたし、ホウエンから出た事がないから他の地方がどんな世界なのか知らないの」

「ずっとこの都を守ってくれてたからね」

「うん。…そういえばジルチはこれからどうするの?田舎に帰ってきたような感じだとは思うけど…」

「これから、か……」

一応これからの事は少し考えてはいるけどまだ情報不足で現地に行くか否か悩んでいる。それより右目の事を解決したいのが本音だけど、自分の中にある"エネルギーの流れ"を元に戻す方法がわからなかった。

「ラティアス、自分の中にあるエネルギーの流れってわかる?」

「えー、何それ?血液とかじゃなくて?」

「オーラ的なものらしいよ?」

ラティアスなら知ってそうかなと聞いてみたけど特に収穫がなかった。
しばらく歩いてるとダイゴさん達を見つけた。ダイゴさんが細長い筒を持って2人で何か話し合っていた。

「あ、ラティアスとジルチちゃん。ちょうどよかった」

「どうしました?」

「この筒なんだけど…その剣の鞘なんじゃないかなと思ってミクリと話してたんだ」

ダイゴさんが白くて長い筒を私に見せるとラティアスが大声を出した。

「あーっ!波に流されたと思って諦めてた祭具の鞘だよ!!どこで見つけてくれたの?」

「サフィラスが言っていた戦いの舞台にある柱に引っかかってたよ」

私はダイゴさんから鞘を受け取って剣をしまった。カチリと音がして綺麗に収まったから長い紐を腰に結んだ。

「わぁ…ジルチ、カッコいい」

「何だか照れるよ…。ここが戦いの舞台って言ってたけど誰が戦ってたの?」

「どちらが力がある者かを決める為に巫女候補の人達が力をぶつけ合ってたの」

「へぇ…今で言うポケモンバトルって事かな。そうだ、前から思ってたんだけどボク達とダブルバトルをしないかい?」

「私達とですか?」

「そう。クチバで会った時はいつか戦ってみたいと思っていたけど、トクサネでジルチちゃんの手持ちを見た時は絶対に戦いたいって思った。初めは君のバクフーン、レッド君のリザードンと思ってたけど気が変わったんだ」

「気が変わった?」

バトルと聞いてレッドは目の色を変えた。相手がチャンピオンとなればかなりの実力があるはず、私はそう思った。

「トクサネと孤島で見たライボルト…戦い方といいジルチちゃんの手持ちの中で1番古いメンバーだとわかった。それにジルチちゃんの指示がなくても自分の判断で敵を倒していく姿は逞しかった。是非、ライボルトとリザードンと戦わせてくれないかな?ボクは自慢のメタグロスでいくよ」

「いつの間にか私も参戦する事になっているが…私は美しいパートナーのミロカロスでいこう」

鋼と水タイプか…と思いながらどう戦うか考えているとレッドに肩を叩かれた。すると小声でレッドがどう動くか簡単に言ってくれた。

「何だか意外だね」

「そこを突くんだよ。きっと楽しいよ」

「じゃあそうする!って私、手持ちのベルト…神殿に置きっぱなしだ…!!」

「あたし審判したいから取ってくる!」

「ありがとう!」

ラティアスは元の姿に戻って、物凄い速さで飛んでいった。

「でも2人のカントーの制覇者と戦うなんて滅多にない経験だよね、ミクリ」

「噂に聞く伝説のトレーナーとその彼女、か。また新たな伝説を作りそうだ」

「レッド、有名だね」

「そんな有名になるような事したかな?」

1人でロケット団を壊滅させたり、カントーリーグ最年少でチャンピオンになったという事をしてれば有名になるよと心の中で思った。
4人で話しているとラティアスが私のボールが付いたベルトを持ってきた。

『お待たせ!』

「ありがとう、ラティアス」

「さあ、始めようか!」

「いいですよ!」

舞台に上がってそれぞれの場所に立って向き合った。

「ボク達が」「僕達が」

「「勝つ!!」」

「バトル、開始ーっ!」

ラティアスの開始宣言で4つのボールが高く投げられ、白い閃光とそれぞれのポケモン達の鳴き声が響いた。


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