水の都の巫女 | ナノ


14

 何事かと湖を見るとカイオーガが呻き声を上げて姿を現した。

「カイオーガ…!?」

「そんな、カイオーガは目覚めの祠で鎮めたと聞いたのに!」

『都が復活したのを気づいてやって来たか…っ!』

『皆の仇っ!!』

「え…ラティアス、皆の仇って?」

ラティアスに質問をすると湖から離れていたスイクンが隣にやって来た。

『都に伝わる災い、その正体はカイオーガです。当時の巫女と都の者を波で飲み込んだのは彼です』

「そんな!?」

『彼は遥か昔、宝玉によって真の力を鎮められました。その後、失った力を蓄える為に都へ何度も襲撃しました。当時の巫女や民を蓄えた彼は、次の巫女が現れるか対になる宝玉の力を使って解放されるのを待つ為に自ら封印をして眠っていました』

「じゃあカイオーガは人間に怒っていたから力のある私やランちゃんを襲った訳じゃなくて元々狙われていた…?」

『そうです。カイオーガが復活していたのは存じてましたが…油断してました』

「ジルチ!」

レッドは私の前に立ってカイオーガを睨んだ。
カイオーガは利用した人間達に怒っているだけだと思っていたから和解をしようと考えていた。だけどそれ以前に祖母やこの都の人々の命を奪って、都を崩壊させている…さすがに許せない事だった。

『力ガ 満チテイル。次コソ ソノ身ヲ 寄越セ!!』

カイオーガは水柱を何本も立てて祭壇を襲おうとした。このままでは昔と同じように皆が波に飲み込まれてしまう。
とにかくカイオーガを止めないといけないと思っていると頭に文字が浮かんだ。

「―水の鎖よ、」

杖の先にある水晶が光り輝くと、欠けた部分の先が伸びて剣のようになった。

「悪しき力を封じろ!!」

『ジルチ…その力は!!』

剣になった杖をカイオーガに向けると湖から水で出来た鎖が伸びてカイオーガの身体に絡みついた。鎖がカイオーガの動きを封じると水柱が消えていった。

「止まった…っ」

『ジルチ!水の民の力を使えるようになったんだね!儀式の影響かなー?』

「これが…水の民の力」

ほぼ無意識に使ったからよくわからないけど普段使っている技とは違う感じがした。

『グググ……ッ』

「カイオーガ…身勝手な人達に利用された挙げ句、さらに力を失って怒るのはわかるけど、私や他の人の力と命を奪おうとするのはやめてほしい」

『黙レ…!水ノ民ハ 力ガ アル。ソノ力ヲ 喰ラエバ 我ハ 力ヲ 得ル。誰ニモ 負ケヌ 力ヲ!!』

「力欲しさににここの人達の命を奪って、都を崩壊させた…その罪、償ってもらうよ!!」

剣を上に掲げた時に手首にある鈴が鳴り響いてルギアが羽ばたいた。

『2度もジルチを襲うとはいい度胸だ!!昔、俺の楽しみを奪った怒りを受けるがいい!』

ルギアが空気砲を放つと水の鎖が千切れてカイオーガが海に叩きつけられた。

『グッ…貴様ァ! 』

『改心して大人しく深海に住んでいろ!!』

「カイオーガ、自分の欲の為に動いて返り討ちにあってるなら大人しくする方がいいと思うよ」

『…………』

カイオーガは腹いせに周りの湖を少し凍らせてから湖の底へ姿を消した。


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