水の都の巫女 | ナノ


13

 ラティアスの隣に行くとスイクンが私を見て少し頭を下げた。

『お久しぶりです、巫女。ついに儀式をするのですね』

「うん、やっとここまで来れたから…絶対成功させるよ!」

「スイクン久しぶり!封印した以来だよね?」

『はい。祭壇の方は準備が整いました。巫女、時間がありません。私に乗ってください』

「わかった!」

「あたしは元の姿に戻るね!」

一瞬光るとラティアスは元の姿に戻った。私はスイクンに乗って祭壇へ向かった。
祭壇は所々ヒビが入ったり崩れていたけど他の建物より原型はあった。

「お待たせ!」

「ジルチ!…大丈夫?」

「うん、もう大丈夫!」

「よかった」

レッドは安心したのか私の頭を撫でた。近くいた父さんも元の姿に戻っていて、手には青い水晶…こころのしずくを持っていた。
ふと、視線を感じると思っていたら祭壇の少し離れた所にルギアがいた。

『彼は巫女とはホウエンの海で会ったとお聞きしました』

「うん、ルギアに助けてもらったよ」

スイクンと話しているとミクリさんが目を見開いていた。

「これはまた美しい青だ…。ミナモにいる画家に絵を描いてもらいたい…!!」

「それはちょっと遠慮しますね…」

「…ところでサフィラス、ボクらはどうすればいい?」

『舞台の階段の近くに…広くなってる場所があるだろ?そこで待機しててくれ。その場所は本来、水の民の長が座る所だけど…いないから君達が座ってて』

「わかった」

「おぉ、舞台がよく見える。舞がどのようなものか楽しみだ」

3人は座ると周りを見てから私たちの様子を伺った。

『さて、ジルチ…準備はいいかい?』

「いいよ、お父さん」

私が頷くとお父さんはこころのしずくを光らせた。すると舞台の周りに水が溢れて、レッド達がいる場所の反対側で水の跳ねる音が様々な高さになって響いてきた。

『儀式を―始める!』

お父さんの合図で床が1ヵ所光り出したからその場所に足を運ぶと別の所が光り出した。光る場所に飛びながら踏んで、耳を澄ませると水の音が一定のリズムになっている事に気づいた。その瞬間、頭の中に唄が流れて身体が舞うように動いた。

「―大いなる海よ 我ら水の民 水と共に生きる者なり」

舞えば水が舞い、音が響く。

「聖なる舞と 水の響きを捧げ 都の祝福と繁栄を願う…!!」

私が舞台の真ん中で一回転すると舞台の周りに溢れた水が舞い上がった。

『こころのしずくよ、その力を解き放て!』

『清められた水よ、災いを洗い流しなさい』

こころのしずくの光が都に広がって、スイクンが祭壇の後ろにある湖に立つと少し濁った水が一気に浄化されていった。光と水が弾けると曇っていた空が晴れて、周りがすっきりとした空気になった。何だか身体の底から力が溢れるような感じがした。

『無事に儀式を終えた…ありがとう、ジルチ』

「お父さん、何だか身体の底から力が溢れるような感じがする…!」

『ん?ジルチもかい?』

『都が元に戻った!やった!やった!!』

ラティアスが喜びながら私達の上を飛び回っていると湖から水飛沫が上がった。


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