水の都の巫女 | ナノ


12

 昔にアルフの遺跡で見た映像は滅ぶ少し手前の事だったからここまで建物が崩壊しているとは思わなかった。それに空は薄暗く、街並みといい不気味にも感じた。
後から来たレッドが私を心配して手を握ってくれた。ミクリさんとダイゴさんもこの光景を見て言葉を失っていた。

「これほどとは…」

「言っただろ?滅んでしまって大したものはない、殺風景だって」

「お、お父さん…」

後ろにいたお父さんが空を見てため息をついた。

「さて、ジルチはラティアスと一緒に祭壇の隣にある建物に向かってて。残りは祭壇に散らばっている瓦礫を片づけるのを手伝ってもらおうかな」

「わかった……」

まだこの光景にショックを受けているとラティアスに抱えられて祭壇の隣にある建物の方へ飛んでいった。
空から街並みを見ると瓦礫が散乱していて当時の災いの爪痕が残っていた。
広場らしき場所を通りすぎて神殿のような建物に着くとラティアスは私を降ろしてくれた。

「ありがと、ラティアス」

頭を撫でるとラティアスは嬉しそうに鳴いて身体が光り出した。

「っ!?」

「やぁっとこの姿になれたよ!改めて初めましてだね、兄さんの娘さん!」

そこには赤髪ショートの女の子が立っていた。

「ラティアス…だよね?」

「うん!あたしは都の都合で兄さんみたいに外でテレパシーを使って話したり、人に変身できないの」

「都の都合?」

「都の封印の維持にあたしの力も使ってて、力が不足しているからここを離れると無理なんだよー」

「そうだったんだ…」

「でもね!ジルチが儀式を成功させたら全部解決するの!都中に力が溢れてあたし達は元通りっ」

「何だか緊張してきた……」

覚えたばかりの歌と全く知らない舞をして大丈夫なのか心配になってきた。

「ジルチ、こっちに来て!」

ラティアスの案内で神殿の奥へ行くと綺麗な青色の巫女服と取っ手に七色の長い布がついた短い杖が置いてあった。

「これが儀式の衣装と祭具!着替えるの手伝うから準備しよっ」

「わかった。そういえば…舞を全く教えてもらってないけど大丈夫?」

キャミソールの上から白衣を着て、ラティアスに腰ひもを結んでもらいながら聞いてみた。

「儀式が始まれば音が響いて、床が光るからその光った所を踏めば大丈夫だよ。あとは…ジルチの中にある水の民の本能、かな?」

「本能?」

「聞くより体験した方がわかりやすいよ。…シズク姉さんはね、次の巫女様だったの。水の民の中で飛び抜けて力を持っていたけど…あの時、兄さんと拐われて……」

「……」

「戻って来た時には…その力を失っていたの」

「そんな…っ」

「本当なら儀式をするつもりだったけど、姉さんは私は舞う事が出来ない、都を救えないと嘆いていた…。それであたし達はこころのしずくの力を使う事で都を封印する事にしたの。……昔の事だけどねっ!はい、着替え終わりっと!」

肩をぽんっと叩かれてラティアスに杖とベルトに付けてた鈴を渡された。

「昔の悲しみ、絶望、災いの全てを、水で洗い流そっジルチ!あなたなら、できるから!」

「……うん、やってみせる!私が頑張らなきゃね!!」

「そうだよ!じゃ、祭壇へ行こ!そろそろ片づけが終わってると思うから………あっ」

私は鈴の紐を手首に結んで、ラティアスが神殿から出ようとしたら入口に懐かしいポケモンが立っていた。


prev / next

[ 目次に戻る ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -