水の都の巫女 | ナノ


11

 ラティアスが奥にある傷だらけの石碑の周りを飛んで何度も鳴いた。

「そうだね、時間がもう残されていない」

「お父さん?」

「ジルチ、ミクリから舞の歌を教えてもらったよね?」

「うん」

「これから僕達の故郷、水の都へ行くけど…どうする?儀式でもう1度封印するか解放するか、決めてくれないか?」

「いきなり言われても困るよ!それに時間がないってどういう事?」

「んーじゃあ…言い方を変えるとホウエンで僕らの帰る故郷をいつでも行けるようにするか、しないかだ。時間がないのは見ての通り石碑がダメージを受けすぎて、封印の効果が切れかかっている。下手をすればホウエンに災いが広がって沈みかねないかも」

「!?」

「なんだって!?」

ホウエンが沈むと聞いてダイゴさんとミクリさんは動揺していた。
スイクンから災いが原因で水の都は滅んだと言ってた。その災いがホウエン地方を襲えば…カイオーガの騒動より酷いものになるかもしれない。

「私は……お父さんとお母さんの故郷を元通りにしたいし、スイクンが気に入ってる都で…いつでも行けるように帰れるようにしたい!!儀式を無事に終わらせたら災いが起こらないのでしょ?」

私は正直に言うとお父さんは静かに頷いた。

「本当に…昔から優しい子だ。うん、儀式を無事に終わらせたら元の都になるし、護りも強化されて災いも起こらない。解放するのはいいけれど、以前のように都を表には出さない。その代わりに湖や扉を経由して、出入り出来るようにするから…ルネの湖と道を繋げるつもりだ。でも、ミクリの許可が必要だね」

「私の許可?それにルネの湖と道を繋げると言ったが…何故だい?」

「僕はミクリがルネの代表と思っているし、都と同じ神聖な力が目覚めの祠の地下にあるから安定して繋げる事が出来ると思ったのさ。それに水が綺麗だし、街は静かで美しい…ルネ以外に最適な場所はないよ」

「なるほど…ルネをそこまで高く評価をするならいいだろう」

「ありがとう。……都が元に戻ったら昔みたいに僕らの仲間が飛び回ると思うから…少し賑やかになるかもね」

「私を困らせるような事をしなかったら、多少の事は目を瞑ろう」

「彼らが帰ってきたら注意だけはしておくよ。さて、行こうか…ジルチ、鍵をこの石碑にはめてごらん?」

持っていたメダリオンを石碑にはめると周りに水が噴き出した。

「わぁ…!」

アーチのように水が形を変えると人が通れるくらいの不思議な空間が出来上がった。

「滅んでしまって大したものは何もないけど、僕らの故郷である水の都へ招待しよう」

「ジルチから行きなよ?」

「…うん!!」

空間に触れると水と同じ感触だけど、実際に濡れてはいない。そのまままっすぐ歩いて空間の向こう側、水の都へ向かった。

「さぁ、レッド。ジルチの後を追いなよ。……多分滅んだ都を見てショックを受けているかもしれないから」

「わかりました!」

レッドは躊躇せず空間に入っていった。彼は意外と動じないのかもしれない。

「君らも来るんだろ?期待に応えれるものはないと思うけどね」

「もちろん。幻のような存在だと思っていたからこの目で見れるだけでも充分だよ」

「私は儀式が気になる」

「そうか。まぁ入りなよ、今は殺風景だとは思うけど儀式が始まれば一変するからさ」

「それは楽しみだ。お邪魔するよ」

「石とか…ない?」

「水晶はあったような気がする。君の求めてる物を探したいのなら儀式が終わってからだね」

2人はどことなく楽しみにしてるような顔をして扉を通って行った。

「ラティアス、僕らも行こうか。ジルチが無事に儀式の準備が出来るように手伝ってあげて」

『ひゅああっ』

僕とラティアスが扉を通ると彼らは滅んだ水の都の光景を見て唖然としていた。


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