07
話が長くなりそうな気がしたのかダイゴさんは紅茶を用意してくれた。
「それでジルチちゃん、ボクに聞きたい事ってなんだい?」
「…クチバで話してくれたラティオスの話です。ホウエンにいるラティオスに関する事で何かありませんでしたか?」
「ラティオス……だよね?」
「はい。些細な事でもいいので教えてもらえたら…と」
「……あるには、あった」
「本当ですか!?」
「うん、君は……サフィラスという人物を知っているかい?」
ダイゴさんからお父さんの名前が出て驚いた。その名前を聞いた途端、ミクリさんはティーカップを持とうとした手が止まった。
「……私のお父さん、です」
「まさか彼の言ってた娘が君だったとはね…。名前を聞いた時は気づかなかったけど…ラティオスの話といい、彼の名前を出した時の君の反応でやっとわかったよ」
「私もあの写真で見た可愛らしいお嬢さんが大きく成長してたから気づかなかったよ」
「写真で見たって…お父さんに会ったのですか!?」
「彼に会ったのは結構前の話だよ。その時に彼から君がボクに会いに来たら渡して欲しいと言われた物があるんだ」
ダイゴさんはジャケットのポケットから私が持っているお守りと同じ物を出した。
「それは…!!」
「彼の話じゃこのメダリオンは水の都に繋がる鍵で封印を解く鍵らしいよ。彼から頼まれていたから君にこれを渡すよ」
ダイゴさんからメダリオンを受け取ると首から下げていたお守りが光輝いた。
「水晶が…光ってる……?」
「2枚で1つになるって言ってたから…重ねてみたら?」
紐を外して私が持っているメダリオンの下にもう1枚を重ねると波模様の凹凸部分と噛み合って1枚になった。
「あ…光が収まった……」
「これで1つの鍵になったね。どう使うのかは知らないけど」
「では、私から彼に頼まれた事を君に伝えよう。儀式に使われる舞の歌と言っていた」
「舞の歌…ですか?」
「そうだ。もし覚えれなかったらまた私に聞くといい。では…」
私が頷くとミクリさんは舞の歌を歌い始めた。
「…―大いなる海よ 我ら水の民 水と共に生きる者なり 聖なる舞と 水の響きを捧げ 都の祝福と繁栄を願う」
それはスイクンが昔に話してくれた内容がそのまま歌になったものだった。
「……」
「覚えれそうかい?」
「大丈夫です。昔に聞いた話と似ていたので」
「彼からは舞う人によってリズムや音階が変わるらしい。詳しい事は彼に会えばわかるだろう」
「そうですけど探す手がかりがなくて…」
「君の父さんから何も言われていないのかい?」
「特には言われてないですね…」
3人で何かお父さんの手がかりがないか考えていると、遠くから聞きなれたポケモンの声が聞こえたような気がした。
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